家守綺譚
(新潮文庫) (文庫)
梨木 香歩 (著)
物の怪の本
私は今までの中で出会った本の中で最も心に残っている本「家守綺譚」を挙げます。
時代背景は今から百年ほど前の日本。主人公は日常の中に紛れ込む不可思議な物の怪に出会っていく物語です。
今までに昔話をはじめ、不可思議なモノとの出会いを書いた物語をいくつか読んできました。けれど、私にとってこの本は他の本には無い思い入れがあります。本を読み終えた時に、この物語から生き物の気配を感じたのです。物語の文体が一昔前のような表現なので、普段では得られない錯覚を覚えたからかもしれません。しかし
、読んだ本は他と変わりの無い文庫本であり、中には見慣れた活字が並んでいるだけなのです。文字という限られた表現から、生き物の気配を感じられたこの体験は今でも強く心に残っています。
私は布の上に絵の具を塗り、作品を作っています。時として砂やガラス等の素材を用いることもありますが、無闇に奇を衒うことは無く、制作の根本に大きな違いはありません。この物語から得たような感動を作品に与えることが出来ればと制作を続けています。