■ その後 〜9.物語の終わりはいつもはじまり〜
11月26日の展示の後、彼は最後の収穫を始める。それらは巨大な標本展となって12月下旬展示された(図14)。残念ながら、わたしはこの展示を見逃しているので、それを詳しく説明することができない。ただ、それと同時に、彼は新に館内にある美術情報センターの入り口に新たなマスキングプラントを制作する。たった1週間で、彼はそのほとんど人が通らない、美術館の隅に最後の制作をした。後に、センターの職員の方にインタビューする機会があった。彼らはわたしに、既にない作品を見せてくれたのだ。この人通りの少ないこの場所に、あんなに綺麗なものを作ってくれた。そう彼らはいう。もう既にない作品を見せてもらう、そんな経験は初めてのことだった。それは、不思議な体験だった(図15)。
こうして展示は、様々な人をつなげ、巻き込み、そうして、ひとつのクレームも出さずに終わった。作品は、現れ、消えた。それはパフォーマンスでもなく、物としての作品でもなかった。鑑賞者にとっても、あるいは作家にとっても、それは、体験であり、記憶である。
図14.それらは巨大な標本展となって12月下旬展示された
図15.ないはずの場所につれていった。
*印 photo:鶴巻育子
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