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池田朗子個展のはなし
第一章
展覧会をはじめよう
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藤田千彩 |
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私・藤田千彩は、普段からあらゆる場所のあらゆる画廊を見て回っているが、そこでいつも疑問が湧いていた。
「誰が見てるの?」「私」
というあほな問答はともかく、画廊のありかたについては10年以上前から問題定義されている話題であるにも関わらず、結局画廊という存在はありつづけている。
ある日、space kobo&tomoの運営をしている、荒谷さんという方と出会った。同じ大学を出ている、同じ学食のカレーラーメンが好き、というただそれだけの偶然なご縁のせいか、「ねえ、展覧会やってみない?」というお話をいただいた。
最初は「地下」で「暗く」て「狭い」というspace kobo&tomoの“場所”を意識した作家(作品)にしようと思った。しかし、結局私は“消しゴムで作った飛行機をバスや電車の窓に張った映像作品を作る”池田朗子を選んだ。
理由は簡単、私がいつも思っている疑問を解決できるのは池田だと思ったからだ。
うちに帰ってから池田に伝えると、彼女は時間がない、と渋った。確かに展覧会開始まであと1ヶ月あるかないか、しかも池田は3月末から1ヶ月ほど展覧会でデンマークへ行ってしまう。peelerの共同運営者・野田利也に伝えたら、世界に発信するwebという形を取ったpeelerなのに、あえて閉鎖的であろう銀座の画廊ですることは面白いかもしれないね、ということだった。「やっぱり池田朗子しかない」と私は思った。
池田の作品は、“あっけらかん”というか“難しいことは言いたくない”という特徴をもっている、と私は思う。彼女の性格もそうなのだが、ヘリクツを言うよりは、誰にでも打ち解け、楽しい時間を共有するコミュニケーションを図るように、「大丈夫、なんとかなるよ」みたいな気持ちにさせてくれる。決して軽いノリではない。加えて、たえず想像と期待がセットになって、前向きな気持ちにさせてくれる。
そういった池田の作品を、あえて「地下」で「暗く」て「狭い」スペースでするということ。地下で“飛行機が飛んでいる作品を見る”という「事象の矛盾」が面白いと思った。誰が行くのか分からない銀座の画廊で、なるべく告知をしないで、ひっそりやるという「社会における美術の存在」を証明したいとも思った。そう、美術なんてなくても生きていける、でもあったら、池田の作品をここで見てくれたら、きっと何か気づいてくれることがあるだろう。そう思って展覧会を開催することにした。
(写真上/サイト・サイト・サイト#00)
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