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木村太陽インタビュー


Feel Your Gravity 2005

藤田
すごーい。これはどうやって作っていくんですか?目のところだけ切るんですか?

木村
目のあるページの前のページにコンパスの針で押していって、目の形の跡がつくようにして、裏っ返して、切って、って。

藤田
コンパス?裏から切る?えー!すごい作業ですね。終わったあと満足しそうだけど、大変そうですよね。

木村
これはね、やばい。作るの常習性があって、一回作りはじめちゃうと気が済まなくなって、止まらなくなって、夜中とかもごそごそ起きてやってる。この目の人たちに、もっと彫れーて言われる感じ。それが売れるんだわ。作っても作っても売れる。

藤田
ページ数も100もないにしても、結構大変ですよね。奥にいくような感じで彫ってるじゃないですか?

木村
掘り出すのもだけど、脇のところをカーブにしたり、模様が見えたり見えないようにしたりとかの具合のバランスっていうのが大変。あんまり彫りすぎてベターってなってもだめで、結構失敗もでる。


Untitled (map) 2005 p.Mie Morimoto

木村
これはごみ、両面テープで地図を作って、ぼくの部屋の床にペタペタ押し付けると、僕の毛とかついて、それを離れて見るといかにも地図っぽく見えるんです。意外とこれが人気あるんだよね。

藤田
笑えるけど、ちょっと気持ち悪い。へんなフェチでもいるんですかね?毛好きとか。

木村
単純に笑えるからじゃないかな


Untitled (stool for guard) 2007 Mori Art Museum

藤田
これに座ってる監視の人はうれしそうだった。

木村
これは山手線をぶつぶつ言ってるんですよ。


作品を作る意味って?

藤田
木村さんって、作りたい気持ちが大きいのか、見せたい気持ちが大きいのか、どっちですか?

木村
微妙ですよね。
たぶん「作品に存在させたい」んですよ。
2年くらい続けて、金沢21世紀美術館が作品をいっぱい買ってくれて、それがすごいうれしくて、ほんとすごいよかったなって思った。
作品があって、捨てずに残せるっていうのは重要なんです。
残せることができてようやっと、「作品の存在」が確立する。
普通の人は子どもを作るとかに興味がいくけど、僕の場合は作品があるから。


藤田
子孫を残すっていう意味ですか?

木村
というのともちょっと違うんですよね。


藤田
そこにエゴは発生しないんですか?

木村
エゴのカタマリですよ(笑)。
そうじゃないと、作品を作らないですよ。


藤田
誰かのために、人のために、世の中よくするというのでもなくて?

木村
ぼくの仕事が世の中を良くするのか悪くするのかさっぱりわかんない。
ただシャーマンとしての快楽に従って作品作ってるだけだと思う。
欲望に純粋になると、危ないでしょ?
その危ないものを作品とかに封じ込めてるっていう感じかなあ。
作品の中に危ないものを残せればいいんじゃないのかなって。
「残す」って言うこと自体が危ないよね(笑)。


藤田
「残す」、たしかに(笑)。

木村
古代の遺跡とか、そっから発掘されたものとかって、ちょっとゾクゾクさせられる不気味さがあったりするでしょ。
しかもそれが微笑んでいたりすると見る人を小ばかにしているような、、。
「残こる」ってそういう感じじゃないかと思います。
自分でもよくわからないレベルの欲望を作品に閉じ込めるんだけど、同時に、それを客観的にぼーっと眺める視点というか、あきらめを持つ視点を持つこと、それがうまく行く方向かな。
あんまり欲望にまみれてもねえ。


藤田
直球系になっても気持ち悪いだけだし。

木村
結局、なにか欲望を客体化する、存在させるっていう感じ。
しかもそれがずっと残れば、もう言うことなし、っていうことですね。


藤田
それは私が金沢で見た、おじさんおばさんが牛乳箱に超ハマってて笑ってたりした場面ですよ、まさに。
世代とか、男女とか、なにもかにも関係なく超えちゃって「見てる」というのが、意図していることだと思う。

木村
それは根本的な、僕の中では絶対はずせないことですね。
誰でも分かる、絶対誰でも分からなきゃだめだと思うんですよ。
感覚ていうのはそのときの政治性で動いちゃうけど、絶対いつの時代も誰も見てもわかるもの、っていうのを作らないと意味がないと思う。


藤田
そういうフラットな、誤読も含めてだけど、勘違いさせないためのやりかたとか見せ方ってあるんですか?

木村
勘違いしてもいいんですよ。
たとえば作品自体がいたずらのワナ、みんなが転ぶ感じなんですね。
みんなが転んで「痛てーな」ってぶつぶつ文句言うとか、見たときにみんながしゃべり出すんです、しゃべればしゃべるほど面白いと僕は思ってる。
とにかく本質的な、動物として、根本的なものにたどりつければそれができるんですよね。
そうじゃないのっていうのは、よくわかんないけどこれってアート?っていうものになると思うんですよ。
でも、うまくいった作品で難しいって感じるのは、見た人には「ただなんかこれって笑えるね」って軽くみられちゃうことです。壁かじりました、なんて作品はあまりにもシンプルだから「よくやったねー」程度にしか見られかねない。
ただそれだけで終わらないからこそ笑いという生理反応が起こる。
見た人にとっては簡単に見えちゃうけど、本質的なものだから簡単に見えちゃう。
でもそういうものにたどりつけるっていうのは、とても難しいことなんですよねー。

藤田
木村太陽って人を、私は前からすごいいろいろ考えてる人なんだろうな、って思ってたんです。
だから作り方を聞いても、うんそうだろうなって納得します。

木村
うまくいった作品は、乗り入れが複雑にからんでる霞ヶ関駅とか大手町駅とか、そういう感じなんじゃないのかな。
たとえば大手町の駅はひとつだけど、いっぱいからんでるっていうか。


藤田
大手町に行くにはこうやって乗り換えなきゃいけないっていう経路が、人より複雑なんだと思うんですよ。
それを整理整頓してうまく見せるのは・・・。

木村
難しいよね。
ゴルフってやったことないけど、ゴルフって製作過程に近い感じなのかな。
最初は勢いよくがーんって打って、だんだん点に向かって、穴に落ちるためにそーっとやるような。
穴の中に入ったらみんなが「うぉーっ」って言ってくれて、外すと皆が「あー」って。
まあその過程はみんな知らなくていい。ただ見た人が生理的レベルで反応すればそれでいい。


藤田
これからもおなじようなやり方で、同じような人に見せていくような感じですか?

木村
出てくるものっていうのはその都度違うけど、大手町駅的なものを作るっていう作業は一生変わらない。
変わらないであってほしいけど、お金を稼ぐとなるとね。


藤田
いきなり絵を描いたりして?

木村
いやあ別に描いてもいいけどね。
やってみてだめだったらやめるっていう感じかな。
でも絵ってあんまりぴんとこないからやってもだめかもね。
せいぜいドローイングぐらいかも。

藤田
たしかに同じテンションでペインティングって難しいですよね。する意味がないかも。
それなりの見栄えを持たせたりして。
でもやったからって、小銭稼ぎみたいになるのは惜しいですよね。

木村
僕ってへんにマジメくんで、がーって行ってパタッ、ってくたばっちゃう方だから、ある程度いい加減にやらないと。

藤田
任せれるときは任せて、みたいな感じでね。
今日はどうもありがとうございました。
 
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