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鉛筆の軌跡を残した描きかた
藤田
写真は小さくて、画面はでかいですよね。
どこからどう描きはじめるんですか?
安冨
実物大になるまで、拡大コピーを繰り返して、ちゃんとトーンを埋めていくために、ブロック積み形式で描いています。
藤田
スタートはどこから始まるんですか?
安冨
まちまちですね。
端からだーっとやるときもありますし、メインモチーフから描き始めるときもあります。
藤田
鉛筆はどのくらいの濃さをつかってるんですか。
安冨
主に使っているのは、4Hから2B。
それ以上だと、グラファイト鉛筆という、平たくいうと鉛筆の芯だけでできたクーピーみたいな画材や、黒色鉛筆をつかってます。
藤田
2Bって意外と鉛筆として使うと濃いけど、そんなに濃くないですよね。
安冨
そうですね。
藤田
逆に薄いほうっていうか、かりかりに見えるのは?
安冨
薄いのは6Hとか9Hとか使います。
藤田
筆圧に任せてるのではなくて?
安冨
そうですね、引っかいているような形になります。
真っ白をあまり残したくないんです。
藤田
つまり全部なにかしら塗ってるんですか?
安冨
よほどのハイライトでない限り、なにかしらのトーンやタッチはどの部分にも入ってます。
藤田
紙の大きさって、どうやって決めてるんですか?
安冨
好ましい大きさでしょうか。
描くに当たっては悩む事柄も多いんですけど、自然とそれをチョイスしていたという事柄も多くて。
大きさとか構図は、割と自然に選べてしまいます。
考えている中でぴったり来たもの、みたいな感じでしょうか。
藤田
だってファイルにある、右ページと左ページのもの、書かれてるサイズが10倍くらいが違いますよ(笑)。
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安冨
単純に縮小するというのもあってもいいのかもしれないですけど、この大きさを一回つくってから、大きいものや小さいものを試したいんです。
藤田
同じ作品をサイズが倍、ではだめなんですよね?
安冨
難しいと思います。
この大きさで一回つくってみないと、と。
藤田
写真を見ながら決めるんですか?
安冨
そうですね。
藤田
紙のサイズもいろいろだし、紙自体もいろいろありますしね。
安冨
紙はそうですね。
特に変色とか酸化してしまうのがこわいので、PHが中性のもの、色が純白のものにこだわっています。
ケント紙って生成りの色だったりするものがあるので、それは避けてシルバーヒルとかKMKといった純白のものを選んでます。
これに出会うまでは、とにかく大きいロールの紙がほしかったので、写真撮影をするときのバック紙等に描いてました。
藤田
描くときって、単調っていうか、違うこと考えながらできてしまう?
安冨
ずーっと、このことばかり考えているわけではないです。
無意識でやったりとか、全く違うこと考えてたりとか。
よく驚かれるのは電話で話しながら描くこととか。
藤田
手を動かすだけだからじゃなくて?
安冨
まったくの色面を塗ってるとき以外でも。
最近電話で話している時、「ひょっとして描いてます?」って言われて、驚かれたんです(笑)。
藤田
しゃっしゃっしゃって、鉛筆が走る音でもしたのかな(笑)。
音楽をかけながら、作業したりとかしますか?
安冨
かけてます。ラジオとか。ラジオが好きなので。
藤田
何が好きですか?
安冨
うちFMが入らないんですよ。だから普通に関西のAM局、ABCとかMBSとかを聞いています。 |
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