toppeople[安冨洋貴インタビュー]
安冨洋貴インタビュー

《根拠III・それに至る隔たり》Courtesy imura art gallery
「存在」を鉛筆でひっかき残す
Hiroki Yasutomi Interview

一年ぶりに実家のある岡山へ仕事で行った帰り道、新大阪で一人の作家と会う約束をした。
彼の名前は、安冨洋貴。
出かける前に見た奈義町現代美術館から届いていたチラシで、どうしても今、この今、安冨に会って話を聞かなくてはならないと思った。
衝撃は、突然起こるもの。
実物の作品を見て受けた衝撃、どうしても話を聞きたいという衝撃。
安冨の静かな世界から感じ、見えてくる衝撃を、もっと多くの人に知って欲しい。

INTERVIEWER 藤田千彩
《刹那の憧憬》Courtesy imura art gallery
奈義町現代美術館のチラシ
 

うまい、というだけじゃない何か


藤田
ごぶさたしてます。
私は安冨さんの作品を、以前神戸アートビレッジセンターやギャラリー本城で拝見したことがあります。
単純にうまいなあ、と思うよりも、うまい「けどね」、っていう引っかかりがあるんですよね。

安冨
以前のPEELERでもおっしゃってますよね。

藤田
そうでしたっけ(笑)。
鉛筆画なのにとても大きいとか、そういうスケールの問題だけじゃなくて、自分がその場に居合わせたような感覚になるんです。
ずっと鉛筆画で風景を描いているんですか?

安冨
ええ。2001年から鉛筆画を描きはじめました。
最初のころは電話ボックスとか公衆電話とか、誰かとつながっていたいという、そういう思いだったんです。
公共物がいいな、と思って、公衆電話以外にも、公園のベンチとか描いてたんですけど、公共物は「特定の所有者のもの」ということが写り込んでいないので、誰のものでもない。
誰のものでもないならちょっと間借りできる、公共性がある場所なら僕もここにいていい、と安心するんです。


藤田
傘を描いた作品もありますよね。私は神戸で見た傘が、すっごい衝撃だったんですけど。

安冨
同時期に、透明なビニール傘を描き始めるんですけど、そのころ白とか透明な色も、所有者はだれ、といった特徴が移りこんでいない。

ビニール傘は安価で、貧弱な存在ですが、雨という災難から逃れるための最低限のバリアみたいなものとして、頼りたい思いから描き始めました。
雨にぬれること自体は災難なんですけれども、水そのものは生命をイメージできる。
そういうことから傘も、普通の状態だけじゃなくて、ひっくり返された、さかづき状のものも描きはじめました。


藤田
そういうことなんですね。で、12月14日まで開かれている奈義町現代美術館のチラシをみて、変わったのね、と思ったのです。
公衆電話も、傘も、素敵なモチーフなのに、もう描かなくなる?

安冨
全く描かなくなるかというとそこまで言い切れなくて、また戻ってくるかもしれないし、厳密に決めているわけではありませんけど。


藤田
モチーフが変わるっていうのは、どこからどうやって変わるのですか?
ある日ぱしっと変えるのですか?

安冨
わりとそうですね(笑)。
僕の感覚としては、描きたくなる種類が増えていく。
移り変わっていくというよりは、今までのも継続しながら、次のものへ。
次のものが割合として多くなってしまうので、変わったと見られても仕方がないですけど。


藤田
そういうものなんですね、へえ。
 
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安冨洋貴(やすとみひろき)
1978   香川県 生まれ
2004   京都造形芸術大学 大学院修士課程(芸術研究科 芸術表現専攻 洋画内容)修了
現在   京都造形芸術大学 非常勤講師
無所属

個展
2003   「夜まで伸びる道」 滋賀/愛知川駅ギャラリー
2005   「レスポワール展」 東京/銀座スルガ台画廊
2006   「夜想曲」 東京/ギャラリー本城
「夜深景 ‐ヨフカシノカゲ‐」 京都/イムラアートギャラリー
2007   「白い夜」 香川/高松・天満屋
2008   「夜の記憶 ‐響きあう静寂‐」 岡山/奈義町現代美術館
2009年
2月(予定)
  「(タイトル未定)」 東京/ギャラリーテオ


グループ展
2002   「京展2002」 (市長賞) 京都/京都市美術館
2004   「京都造形芸術大学 大学院生展」 (大学院長賞)  京都/京都市美術館
「混沌から躍り出る星たち2004」 東京/スパイラルガーデン
「神戸アートアニュアル 2004 トナリノマド」  兵庫/神戸アートビレッジセンター
2005   「京都府美術工芸新鋭選抜展−2005新しい波−」 京都/京都文化博物館
2006   「損保ジャパン美術財団選抜奨励展」 (秀作賞)  東京/損保ジャパン東郷青児美術館
「韓国国際アートフェア KIAF 2006」 ソウル/COEX(韓国国際展示場)
「Bunkamura Art Show 2006」  東京/東急Bunkamura Gallery
「霜月ノ荘厳」 京都/豪商 稲葉本家
2007   「京都アートギャラリーフェア2007」  京都/みやこメッセ
「Secrets of Silence  八島正明・片山高行・安冨洋貴」 東京/Gallery銀座一丁目
「混沌から躍り出る星たち2007」  (ゲスト出品) 東京/スパイラルガーデン
2008   「CIEG2008・中国国際画廊博覧会」 北京/中国ワールドトレードセンター

作品問い合わせ先
イムラア−トギャラリ−  
〒606-8395 京都市左京区丸太町通川端東入東丸太町31    
TEL:075-761-7372  FAX:075-761-7362
URL: http://imuraart.com/
e-mail: info@imuraart.com
安富洋貴さん 
 



 

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