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山本一弥インタビュー
モチーフになるきっかけ

立石
何か資料を見て作っているのですか?

山本
例えばウェディングドレスの《変身》という作品は、ありとあらゆる資料に目を通し、そして自分の中に残ったイメージを抽出して形にしました。なので、どれか具体的なドレスを見て、というわけではないです。ただ、そのやり方だと、必然的な形しか出てこない。だから偶然にできる布のシワなどは入っていなかった。


立石
そういえば、《変身》はマネキンのようでした。
それに、かわいらしいモチーフが多い気がするんですが、モチーフになるきっかけというのは何かあるのでしょうか?

 
  《変身》H190×W210×D220cm / 2006年 / 撮影:柳場大

山本
なんででしょうね。笑 多分ピンと来たというのが一番なんだけど……。
自分の中ではそう突拍子もないというものは少なくて、例えば雛人形とかバンビとかキューピーとか、生活の中でわりとありふれたものというか。ありふれたものって見る機会が多いじゃないですか。そうモノを目にしたときに、ピンときて作るということが多いですね。


立石
では女兄弟のなかで育ったとか?

山本
いません、男3人です。(笑)


立石
ええっ。(笑)

山本
しかも長男。


立石
なのに雛人形ですか。(笑 )

山本
それは田舎だったので。昔の家って大きい7段飾りとかあるじゃないですか。それが祖母のうちにあって。けど、そのときはまあ「あったね。」ぐらいで、注意深く見るようになったのは作り始めてからという感じなのだけど。
 
立石
じゃあここに出てくるものは過去から今まで山本さんが触れてきたものということ?

山本
そうですね。今まで何気なく見てきて蓄積されたイメージの中から掘り起こされたりします。でもまあ今回にかぎって言えば服なので、個人的に特別に接点があったというのではないですけど。誰でも普段から見ているようなものですね。


 
 
《パラノイア》H88×W100×D170cm / 2006年 / 撮影:柳場大

立石
服は服でも今までの作品《変身》などと今回の作品とは何となく違うような印象を受けました。同じような感覚で作っているのですか?

山本
素材が変わったということもあるんですが、今回は前ほど「記号的」という部分にはこだわっていません。さっき言った服のシワのような、偶然性を取り入れたものが作りたくなって。資料も実際の服やモデルの写真を使っていて、できるだけ忠実に形を拾って作っています。
ではありますが、今回の作品も偶然的な動きを取り入れながらもシンメトリーな形にしています。ある部分を鏡に映すと反復されるということがあるじゃないですか。それを彫刻として形をつないでみたという感じです。
  立石
何かを伝えたいと思って作っていないということを聞いたのですが。

山本
作品を思いつくときに、あまり人に説明できるようなコンセプトはないですね。こういう風に説明できるのは、自分はこういうものが好きだというのがある程度やってきてわかってきたからで。なんとなくこんな感じっていう勘じゃないけど……どっかひかれる部分があってやっています。感覚で選ぶことを大事にしているから、それを右に行かせたいのか、左に行かせたいのか、まっすぐ歩かせたいのかというのは実はかなり漠然としている。そういう意味では何か伝えたいというよりは、逆にこう説明付かないものを作りたいっていうほうが大きいですね。


 
《デコレーション》H13×W65×D97cm / 2009年 / 撮影:柳場大

立石
ではコンセプトから作り始めるっていうことは、

山本
ないですね。ルールと言ったら堅苦しいんだけど、ある程度取り決めみたいなものを作っているというのはあります。例えばシンメトリーであることとか、誰でも目にするものであることというように。ほかはあんまり考えない。考えてやってもうまくいかないし、自分がやっていて面白くなかったので。


立石
「あ、つくりたい」とピンときて、作っていくなかで作品の方向性を選択していくと。作品と一緒に山本さんのイメージも成長していくんですね。
 
 
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