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山本一弥インタビュー
記号的彫刻、
その正体

kazuya yamamoto interview

静かなギャラリー空間の中で、微動だにしない作品。
やわらかなドレープが印象に残る洋服は、
持ち主がいるようでいて顔は見えない。
追いかけても追いかけてもその正体は翻されて、闇の中に隠されてしまう。
まるでなかなか醒めない夢のようだ。

そんなふうに山本一弥の作品は、なぜだかいつも核心がぼんやりとしている。
それは分厚い表皮で隠されているからなのか。
そもそも核などないものを目指しているのか。
何となくじれったい・・・真意や深層を知りたい!
というわけで、いくつかの質問を投げかけることにした。

INTERVIEWER 立石沙織
撮影:柳場大


素材との対峙から生成される形

立石
今回、初めて山本さんの作品を拝見しました。半透明なやさしい色の塊で、洋服をモチーフにした彫刻作品ですね。
なんという素材で作られているのでしょうか?

山本
透明樹脂です。FRPなどとは違って、全部流し込んで作っているので中が空洞ではなく、中身まで全部プラスチックになっています。


立石
ぎっしりしているという感覚ですね。

山本
そう、全部詰まっているので重みがあります。それに、自分で混ぜ込んで好きな色にすることができます。だから半透明にしたりすることもできる。主に注型用(流し込んで形を作る)のプラスチックです。


立石
じゃあもともとその透明樹脂は無色透明ということですか?

山本
そうですね。透明で水に比べてちょっととろみがついているような液体です。それに好きな色を混ぜていって、少しずつ色をつけていきます。


立石
FRPという素材は中が空洞なのですね。

山本
そうですね、FRPはよくディズニーランドとかにあるキャラクターもののオブジェとか、船にも使われています。ガラスが繊維状に布のような状態になっている、ガラスマットという強化繊維を貼りこんでつくるもので、薄くて軽くてとても強いというのが売りの素材です。透明樹脂はそれとは違っていて、重くて分厚くて硬いのだけど少し粘りがあります。


 
   
《ヘッドレス》H140×W56×D8cm / 2009年 / 撮影:柳場大

立石
透明樹脂作品はどのように作られるのでしょうか?

山本
基本的には彫刻の中で割りとオーソドックスに使われる粘土でまずは原型を作ります。それを石膏で型取り、要するに石膏をかけて固まったら粘土をぬいて型を作って、そこに液体の透明樹脂を流し込んで固めるというやり方をしています。


立石
固まるのにどれくらいの時間がかかるのでしょうか?

山本
急激に反応させると煙を噴いたり変色したりするかもしれないので、2日間くらいじっくり時間をかけて固めるのが理想ですね。


立石
それはただ置いておくということですか?

山本
そうです。ただ、気温によっては、・・もう今の時期は2日で固めるのは無理ですね。暖かいと反応が早いので、今だと翌日には固くなってしまいますね。
急激な反応だと、変色が怖いし、ものすごい熱が出て煙が出たり、ヒビが入って割れてしまったりします。変色は特に怖いですね。上から塗装しているわけじゃないので、きれいに固まってくれないと汚くなってしまうから。
 
立石
ムラとかできてしまうこともあるのですか?

山本
ちゃんと色を混ぜていればムラはできません。ムラに見えるような作品もありますが、パールのような粉を混ぜています。


立石
固まると縮みは?

山本
そうですね、固まると縮んでしまうので、1回流し込んで終わりではなくて何回かに分けて流し込みます。最初は体積の6割程度を流し込んで、固める。固まると隙間があくので、また今度は8割ぐらいまで流し込んで固める。最後に満タンを少し超えるぐらいまで、流し込んで固めます。


立石
時間がかかっているのですね・・・!
 
 
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山本一弥(やまもとかずや)

1978   高知県生まれ
2000   武蔵野美術大学造形学部彫刻学科 卒業
2002   武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻彫刻コース 修了

個展・グループ展
2000   [個展]ギャラリー檜
2001   [個展]GALERIE SOL
2002   [個展]ギャラリー檜
2003   [個展]ガレリアキマイラ
2004   [個展]リトルモア・ギャラリー
[個展]Gallery覚
2005   [個展]GALLERY HIRAWATA
[個展]GFAL
2006   [個展]Gallery覚
[個展]ASK? art space kimura (αMプロジェクト2006)
2007   「盆景-my favorite garden-」a piece of space APS
2008   [個展]Gallery HIRAWATA/神奈川
[個展]中京大学アートギャラリーC・スクエア
[個展]名芳洞 blanc

受賞歴
2004   第10回ADSP入選

コミッションワーク
スカパー東京メディアセンター

山本一弥さん 

 



 

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