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山江真友美インタビュー


《明らむ季を告げ》1800×1200mm(2枚組)、油彩、2010年

これからの少女のゆくえ


丹原
先ほどお話に出ましたが、今年は秀桜基金留学賞を受賞されて、海外に行かれるんですよね。
どちらに行かれるんですか?

山江
希望はベルギーですね。
色々行きたいところはあるんですけど、他の国も。
転々するという手もあるんですけど、一つのところに住んでみたいという気持ちがあったので。


丹原
またどうしてベルギーに?

山江
すごい単純なんですけど、私ファン・アイク(初期フランドル派の画家)が好きなんです。
ベルギーにはファン・アイクの祭壇画があるんです。
祭壇画って日本にはない文化で、それが一番見たかったもので感じたかったものだったので、住むところもベルギーにしようと思ったんです。


丹原
山江さんは、主な展覧会を岡山で開催されていますが、地元ということもあると思いますが海外から帰ってきてもこちらに拠点を置くのでしょうか?

山江
そうですね。
岡山は出身地であり、大学も倉敷だったので自然と発表の機会を頂くことが多かったのはあるんですね。
でもそれ以上に、生まれ育って、今も制作をし続けている場所でもあって、多くの方々と関わった場所なので、他の場所での発表が増えたとしても、この場所できちんと毎回発表していきたいという気持ちがあります。
ただ、岡山を拠点にしてますが、より多くの方に見ていただきたい、感じていただきたいという思いで他府県での発表もしてきたので、岡山を拠点に色々な地域、場所でも発表していきたいですね。


丹原
ではこの海外留学もとてもいい機会になりますね。
ベルギーに行って、また山江さんの中の少し育った少女を描いていくという感じでしょうか?

山江
育っていくというよりは、その子の新たな一面を見つけるという感じですかね。


丹原
ベルギーに滞在する間に、どんなことをしようと思われてますか?

山江
とにかくこの機会にしっかり見るというのは当然なんですけど、できればその同年代の作家と交流して、日本人の作家として向こうに「ああ、そうなんだ」って思わせるような制作をしていきたいですね。
こちらが向こうの作家に、作品や考え方に対して「ああ、そうなんだ」って思うことは当然あると思うんですけど、やっぱり日本人の作家として行くからには、向こうの人にも何か影響を与えて帰ってはきたいですね。


丹原
山江さんの作品の日本人らしさとは?

山江
このぼやーっとした淡さを、外国の方でもエロチックに感じるのかなあとちょっと疑問には思ってますね。
国によりますけど、例えばアメリカ人ってはっきりした花の色を好むらしいんですよ。
日本人の好きな桜のぼやっとした美しさっていうのはあんまりぴんとこないみたいです。
どうしても国によって感性は違うので、どう感じるのかなっていうのはありますね。
できれば万国共通で同じように感じてほしいんですけど。
わかるかこの感じは、わかんないんだろうなって。
わかるようになれよ!という気持ちで行きます。(笑)


丹原
では海外から帰ってきた山江さんの作品からどんな少女の一面が見られるのか、今から楽しみにしています。
本日はありがとうございました。

インタビューを終えて
山江真友美の作品から感じる独特の色っぽさは、描かれている画面だけではなく、観る側の、私たちの記憶や感覚が合わさって初めて生まれるものだった。
甘酸っぱくて、どこかせつない、淡い記憶。
覚えてないだけなのか、はたまた実際の記憶にはないのに懐かしく感じるのか、どちらにしろ彼女の作品を観て生まれるその感覚は、私たち一人ひとりに自分の中の少女を認識させる。
山江が描くたくさんの少女、そしてその少女の一面を観ることで、私たちも自分の中の少女の新たな面を発見することができるだろう。
思い出すたびどこか胸が苦しくなるような、自分の中の少女の記憶と、これからも彼女の作品と一緒に出会っていきたい。
 
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