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山江真友美インタビュー

 
少女の記憶
山江真友美インタビュー
Mayumi Yamae Interview
今回、私は岡山県にある淳風会健康管理センター内ギャラリーで開催されていた、山江真友美展「総ての記憶」にお邪魔し、アーティスト山江真友美にインタビューをお願いした。
山江は岡山県倉敷市出身であり、岡山を拠点にしながらも様々な地で作品を発表し、どんどんその活動の場を拡げている。
そして今年、第5回秀桜基金留学賞を受賞し、1年間海外へ留学する予定だという。
今回の展覧会「総ての記憶」は、海外に行く前の山江にとって、今までの制作活動のまとめに位置する展示だそうだ。
彼女の代表的な作品に描かれるいちじくのようなものは、丸いフォルムをもち、淡い色合いで女性らしい温かさを感じさせるが、それだけではなく独特な色っぽさがある。
妖艶という言い方もあるが、妖しいというよりもどこか純粋で幼いようなイメージを受け、どちらかというとまだ色っぽいという言い方のほうがしっくりくるだろうか。
美しくもどこかエロスを感じさせる作品がどのように誕生したのか、この不思議な色っぽさはどこから生まれてくるのだろうか、彼女の作品の魅力に迫ってみた。

INTERVIEWER  丹原志乃



少女のエロチックさ、そして背徳感



《かりそめのまこと》1167×!910mm、油彩、2008年


丹原
山江さんと私は実は同じ大学の出身なんですよね。
私のほうが後輩なので、大学に入ったときから山江さんのイメージはいちじくの作品なのですが。
そもそも制作はいつごろから始められたんですか?

山江
本格的にちゃんと油絵、っていうのは完全に大学に入ってからですね。
昔から絵はすごく好きだったんですけど、それこそ小さいときに絵ばっかり描いてて親に怒られるくらい。


高丹原
どんな絵を描かれてたんですか?

山江
小さいときは、ほんとにみんなが描くようなお人形さんみたいな絵を描いてて。
私の親は旅行に行くと絶対美術館か博物館に連れて行くような親だったので、中学生ぐらいになったら結構そういう絵も意識して、見よう見まねで好きに描いてました。
写真とか見て色鉛筆で鳥を描いたりとか。
本当に色んなことして、描きたいものを描くという感じで。
でも本格的に習ったりとかは一回もしたことがなかったんです。
高校の3年生のときに大学受験で自分の方向性を決めなきゃいけないってなったときに、絵しかしたくないという思いがあって、そこで初めて美大に行こうかなと思ったんです。
高3で美大に行きたいって言ったもんだから、先生があわてて「デッサンだけでも」って、それで夏休みにデッサンしに毎日高校に行きました。


丹原
大学に入って、ご自身の中での絵に対する観念みたいなものは変わりましたか?

山江
描きたいものの根本は変わってないんですけど、意識的なものはすごく変わりました。
描きたいものをどう表現したらいいのかっていうのが結局まだ全然わかってなかったんで、大学でそれが学べたかなと思いますね。


丹原
山江さんの描きたいものというのはなんでしょう?

山江
ずっと共通してあるテーマっていうのが、少女、なんです。
この作品たちも花とかいちじくとかを描いてるつもりはなくて、全部少女の姿を別のものに置き換えて描いてるだけなんです。
大学に入ってはじめて描いた油絵も空想の女性でした。
油絵の具を使って好きに何でも描きなさいという授業で。
その後進級してコースに配属になってからも女性ばっかり描いてたんですよ。


丹原
ご自身が女性だということもあるとは思いますが、女性に対する何か想いのようなものがあるんでしょうか?

山江
昔から女性至上主義じゃないですけど、どうしても女性をひいきしてしまう性格で。
別に格段男性より女性が好きというわけでもないんですけど。
女の子ってやっぱり可愛いですよね。
さすが砂糖菓子でできてるというだけあって。
何だかんだ言って、女の子可愛いなって。

丹原
砂糖菓子!(笑)
それは昔からずっとある想いなんですか?

山江
かなりありますね、すごい昔から。
女性ひいきです。


丹原
なるほど、そういうところが作品につながっているんですね。
少女をテーマにと言われましたが、山江さんの作品からは少し性的な感じ、なんというか少しのエロさというものを感じますよね。

山江
はい。


丹原
そういえば今回の展示のオープニングにお邪魔させていただいた時に、お祝いの挨拶をされていた方が「山江さんのエロスへのますますのご発展を願って」みたいなことをいきなり言われてましたよね(笑)
私はちょっとそれにびっくりしちゃったんですけど。

山江
エロスって言うとちょっと語弊があるんですけど。
エロスってもっとこう、生命の根本というかちょっと神がかり的なイメージですけど、私のはそんな「人類の源なんだ!」っていう気持ちじゃなくて、もっとエロチックというか。


丹原
エロチック、可愛らしい言い方ですね。

山江
雑な言い方すると、エロいとか。
もっとやわらかいものですね。
みんなの記憶に語りかけるもの、そんな何億年前の記憶じゃなくて、子供のころの甘酸っぱくて淡い記憶とか。
男の人だったら初恋の思い出とか。
結構美化して残ってるんですよね。
だけど恋愛って必ずちょっとエロチックな部分があって、その相反する部分を表現したいんです。


丹原
山江さんの作品はエロいってだけではなくて、その中に綺麗さが存在していますよね。

山江
そうですね。
エログロに絶対なりたくないんですよ。


丹原
それはどうしてですか?

山江
単に嫌いなんです(笑)
私の理由としては、美術って、美しくないとっていう。
美術の美はうつくしいですし。
決してキレイキレイなものだけが美しいんじゃないんですけど。
ましてや私はエロチックなものを表現しているので、ともすればすごい下品になりかねない。
でもそこにはいきたくないんです。
美化された記憶と相反してのエロチックっていうのを表現するには、やっぱりある程度美しくないとダメだと思うので。


丹原
少女の姿をいちじくや花で表現するようになったのはいつからなんでしょうか?
というか、いちじくっぽい女性のシリーズ、という言い方でいいんですかね?

山江
そうですね、いちじくのかたちをかりて描いているシリーズですね。
いちじくっぽい作品を描き始めたのは大学3年生だから2003年からで、2009年から花っぽい作品を描き始めました。


丹原
なぜ少女をいちじくや花で表現しだしたのですか?

山江
最初はデフォルメした女性の体の形を描いてたんですけど、もっと人間の体、女性の体ではないもので、女性的なエロチックをイメージできる作品にできないかなと思ったんです。
女性の体にエロさを感じるのは普通じゃないですか。
そうじゃなくて、例えばいちじくは全然そんなものじゃないですよね、それ見てエロいって感じるためのものじゃない。
だけどそんないちじくを見て「これ、いちじくだよな、でもなんかエロい。そう思っていいのかな」と感じてしまう、背徳感ですね。
少女に感じるエロチックって絶対背徳感があるんですよ。
エロチックに感じてはいけないもので感じてしまう背徳感、そういうものを表現したくて色々探したんです。


丹原
他にはどんなもので試してみたのですか?

山江
結構何でも、そりゃないだろって言うものまで。
ブロッコリーとか、あとは露骨にバナナとかアケビとか。
いろんなものを描いたり、あとはカメラで接写してみたりとか。
接写すると意外と新しい一面が見えたりするんですよ。
その中でいちじくの丸い形とか、外は堅物そうなのに中はこんなにって言うところがしっくりきたのかな。
ブロッコリーがしっくりきてたら「ブロッコリーの山江」って呼ばれてたかも(笑)
危なかったですね。

 
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山江真友美(やまえまゆみ)

1982   岡山県倉敷市に生まれる
2004   倉敷芸術科学大学 芸術学部 卒業
2006   倉敷芸術科学大学 大学院修士課程 芸術研究科 修了
2011   第5回秀桜基金留学賞受賞

個展
2002   第5回 高橋秀教室選抜展「FOR」(森田酒造平翠軒/岡山)
2003   第28回 全国大学版画展(町田市立国際版画美術館/東京)
2004   第6回 広島県・岡山県卒業選抜展「HOPES」(ふくやま美術館/広島)
グループ展「美術夜話」(CELL GALLERY/岡山)
第6回 高橋秀教室選抜展「FOR」(加計美術館/岡山)
グループ展「PRINT×PAINT」(ギャラリーアーティスロング/京都)
2005   大学版画学会West「現代版画の新世代たちin倉敷」(加計美術館/岡山)
学生版画展「松本スタイル」(画廊アートフレンド/長野県)
第7回 高橋秀教室選抜展「FOR」(加計美術館/岡山)
2006   第8回 倉敷芸術科学大学修了制作展(加計美術館/岡山)加計美術館奨励賞受賞
個展「妙」(楽空間 祇をん小西/京都)
2007   個展「暁けてその後覚めるまで(あけてそののちさめるまで)」(淳風会健康管理センター内ギャラリー/岡山)
企画展「JAMIN」(エスプリヌーボーギャラリー/岡山)
個展「百色繚乱(ももいろりょうらん)」(エスプリヌーボーギャラリー/岡山)
2008   個展「唯一人の少女の為に」(村松画廊/東京)
企画展「JAMIN2」(エスプリヌーボーギャラリー/岡山)
アートの今 岡山2008(天神山文化プラザ・高梁市歴史美術館・奈義町現代美術館/岡山)
2009   第2回 I氏賞選考展(天神山文化プラザ/岡山)
個展「明らむ季を告げ」(エスプリヌーボーギャラリー/岡山)
2010   企画グループ展「3オクターブ」(コウイチファインアーツ/大阪)
企画展「JAMIN3」(エスプリヌーボーギャラリー/岡山)
個展「求めること無く只そこで待つ」(エスプリヌーボーギャラリー/岡山)
2011   第4回 I氏賞選考展(天神山文化プラザ/岡山)
個展「総ての記憶」(淳風会健康管理センター内ギャラリー/岡山)
個展「求める手の記憶」(アートライフみつはし/京都)
山江真友美さん 
 



 

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