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山江真友美インタビュー


いちじくから花へ


丹原
ずっと描かれていたいちじくっぽい作品のシリーズから、2009年には花っぽい作品のシリーズへとシフトされていますが、いちじくのシリーズは完結してしまったんですか?

山江
終わってはないですね。
いつでも帰るつもりで、まだまだいちじくを描き続けられると思っているので。
飽きたりとか、やり終わったとか、そんなことは思ってないし、花にシフトしたときも別にいちじくが限界だと思ってシフトしたわけではないんです。
いちじくと花では、その子のどこを表現してあげようかなと思う気持ちが違うのかな。


丹原
どことは?

山江
いちじくを描いていたときは、肌の柔らかさとか肉質的な部分にすごく意識がいってたと思うんですけど、花になってからは真っ白いヴェールとかをイメージした白を上にすることで、エロチックな部分はもちろんですが、儚さや純白潔癖的な部分が出てきてると思います。
ほとんど無意識だったとは思うんですけど。
もちろん今まで通り肌の質感はあるんですけど、どちらかというとそちらにイメージが向いてるのかなという気がします。


丹原
ではいちじくから花になり、女性のとらえかたにもっと潔癖さとか崇高的な部分が出てきたということですかね?

山江
新しく出てきたのではなく、その花を描いているときは、今度はこの子のそういう部分を出してあげようという気持ちなんです。
こういう部分もあるよねっていう。


丹原
ずっと女性を思って描かれていますが、花っぽい作品、例えば《たぐる》や《明らむ季を告げ》なんかは私はパッと見で、男性を意識してしまったんですが。
男性器のイメージですね。

《たぐる》530×455mm、油彩、2011年


山江
そうですね。
結局、女性のエロチックさを表現するのに、男性って不可欠なんだと思うんです。
だからそこに男性をイメージするものがあっても不自然じゃないかなと。
記憶を美化してしまう部分と、その割にエロチックな部分が排除できないという部分という、相反する部分を描いてます。
あと綺麗な部分ばっかりで構成してしまうと、綺麗なものと感じづらいというか。
きたないものがないと。
きたないものというか、一般的に言う背徳的な穢れた部分と思われる部分、そういうのがないと綺麗さが際立たない。


丹原
きたないもの(笑)
花にシフトするとき、花を描き始めたときは、ご自身の中のイメージで「あ、この子のこういう部分は花だな」と感じで浮かんできたんですか?

山江
そうではないです。
以前、京都で個人の所有物の展示、こじんまりした個人の家みたいなところでやっていた展示を偶然観たことがあって。
その中に、濃いブルーの地に白で何かスケッチしてある作品があったんですよ。
別になんてことはない絵で、その絵に感動したわけでもないんだけど、そこで「あっ」と思ったんです。
そこに白のヴェールのイメージを感じたんですよね。


丹原
その絵は女性をイメージしたものというわけではなかったんですか?

山江
全然なかったです。
多分ご本人もそんなイメージで描かれたわけではないと思いますし。
でもそれを見て、白いヴェールのイメージを、そういう女性がまとう白っていうのを表現できないかなと思ったんです。
そのあとに花のモチーフを思いついたんです。
いちじくは体の丸みとか素肌のイメージだったんですけど、そこに白いヴェールや白いドレスのように一枚重ねるようなイメージを表現できるんじゃないのかなと。
花ってちょっとベタなので避けてたんですけど、私なりの描き方で表現できるかなと思って制作し始めたんです。


丹原
そうなんですね。

山江
見る人にしてみたらそんなに違いないというかもしれませんが、いちじくと花はテーマは一緒ですが描き方が違うし、私の中ではすごく雰囲気の違う作品なんです。
今回の展覧会は海外に行く前の総まとめの気持ちで、いちじくの作品と花の作品を一緒に展示していますが、これまでいちじくと花が一緒に並んだことってなかったんですよ。


丹原
今までずっと別々に展示してたんですか?

山江
はい、別々でやってきたので、花の作品にシフトしてからは花のイメージの展覧会しかしてなかったんです。
今回一堂に並べてみて、いちじくの作品のころの肌の柔らかさを表現したのが、やっぱりよかったんだなと自分でも思うし、花は花でいちじくとは違う表現ができてると思うので、その両方の良いところを認めてあげて、これからもっと進化していきたいなと。
別にモチーフを新しくするとかではないですが、今回の展示は新しい表現につなげたいなと感じるいい機会になりましたね。

 
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