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冨井大裕インタビュー

彫刻出身だからこそ、
彫刻は意識してしまいます。


PEELER9/1号でレビュー紹介した「字界へ―隘路のかたち」や「美術の星座」に参加された、冨井大裕さん。10月1日から大阪CASではじまる個展を控えた、冨井大裕さんに話を伺った。

INTERVIEWER 藤田千彩
PLACE 東京・池袋西口地下の喫茶店


ミラーマン、2005年、アルミシート、ホッチキス、167×60×50cm

藤田
こんにちは。
いきなりなのですが、1973年生まれの冨井さんの作品は、同じ年生まれの作家の河田政樹、1975年生まれの田中功起と“通じるもの”を私は感じています。


冨井
どういう意味ですか?

藤田
3人とも、ゆるい(笑)。
悪く言っているわけじゃなくて、作品を作るにあたって、過去の作家さんを見ていたら、今まであるものを否定だったり反対だったりして、次の世代が生まれてくると思うんですね。
でも、冨井さんたちの作品はそういうものを気にすることないでしょう?
そういう意味で「ゆるい」って思うんです。
中でも冨井さんは、大学で彫刻を学ばれているのに、彫刻ではないことをされているように見えて、なおかつ、今までの彫刻を否定する仕事をしているわけではないと思えます。


冨井
僕は、立体とよばれてもいいと思っていますが、「彫刻」といわれて、悪い気がしないのも事実です。
いわゆる「彫刻」を作ってるようには自分でも思いませんが、「彫刻」を否定しようとも思わない。

藤田
今も「彫刻」というのは意識されることってあるのですか?


冨井
ありますよ(笑)。
敢えて言えば、「彫刻」という言葉にはまらないようにすることで「自分にとっての彫刻的体験とは何か」を探しているような感じというか・・・。
かといって、別に「彫刻」を作るために作品を作ってるわけではなくて、では、何の為に作っているのかと言われると、困ってしまうのだけれど、やはり、作りたいと思ってしまうわけです。
その時には彫刻を作る意識はないのだけれど、制作の過程の中で、「これって、彫刻かも」と思える時があるんです。
その感覚は、外から見たら、彫刻とは結びつかないものだと思うし、僕も、彫刻との関係を主張しようとは思わないけど、そういう感覚が僕に作品を作らせているようなところはあると思います。

藤田
そういった思いは、学生のときからですか?


冨井
僕が大学で彫刻科に入ったことにも、きっとそれなりの理由があるようには思うし、そのことが制作に全く関係なければ、意識もしないのでしょうけれど、結構、関係してる気がするんですよ。
学生の時は、3年までは「彫刻をつくろう」として真面目にやってました。「彫刻とは何か」とかも考えたけど、結局は、いわゆる彫刻という枠の中から出ずに悩んでるだけで。
先生に褒められたりすると、妙に安心したりして。
結局、大学の彫刻科の中の世界にいるぶんにはそれで良かったんですよ。
ところがある時、「やばい」と思うことがあって・・・。

藤田
「やばい」?(笑)

冨井
作品で対話が出来てない!と思ったんです。
学外で展覧会をした時に、学校の友人や先生の評価する観点と僕を知らないで見に来る人たちの観点が余りに違うことに驚きました。
大学で学んできた「彫刻」以外の視点を持てなくなっていた自分に「やばい」と思いました。

藤田
それが大学4年のときですね。


冨井
はい。だから大学4年の時は卒制まで全然作れませんでした。
学んできた「彫刻」というものを考えから外して作ろうとしても、なかなか外れない。
そのうちに、形や技法はいままで通りでいいやと開き直れるようになって、誰に見せても説明してもわかる基準のようなものが主題というか、構造になっている作品を作ろうと思いました。

卒業制作の展示風景(右から「30」、「フレーム」、「内部」)
<+zoom>
卒業制作(画像/右)は、自分の寸法や、日常の中で何気なくつくっている人や壁との距離を意識した作品です。
その後の制作で「彫刻的な」ボリュームや技法は消えていますが、逆にそうなっていくことで、彫刻への意識は強くなっているような気がします。
最近では、僕が意識してしまう彫刻とはどんなものなのかを知りたくなっています。
言葉では上手く整理できないので、作品にしてみようと思っています。

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冨井大裕(とみい・もとひろ)
1973   新潟県に生まれる
1997   武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒業
1999   武蔵野美術大学大学院造形研究科彫刻コース修了

個展歴
2005   「いつものこと」switch point、東京
2004   「荷物 baggage」switch point、東京
「THE COVER」Za Gallery有明、東京
2003   「世界の真上で」art & river bank 、東京
2002   「隣の夢」なるせ美術座、東京
「周辺と周縁」モリスギャラリー、東京
「早送り、巻戻し、」ZaGallery有明、東京
2001   「ありさま」マキイマサルファインアーツ、東京
「ある」藍画廊、東京
2000   「あけすけ」モリスギャラリー、東京
「モノローグ」松明堂ギャラリー、東京
1999   「煙の点」ギャラリー現、東京
「見えない部屋」ガレリアラセン、東京
「ものかたち」なるせ美術座、東京
1998   「周辺のカタチ」ギャラリー現、東京
冨井大裕さん 

主なグループ展歴
2005   「cat's heaven...!」gallery Archipelago、東京
「美術の星座 2005 Constellation of Art 」ギャラリーくまい、東京
「字界へー隘路のかたちー」長久手町文化の家、愛知
「深川HO-BOアート2」深川資料館通り商店街、東京
2004   「conran show」OKADA STUDIO、愛知
「floating scaleー「スケール」を巡る旅ー」学食2F、愛知
「space」U8 projects、愛知
2003   「栞展」藍画廊、東京
「Jin Session 2003 Vol.4 "off topic"」ギャラリー人、東京
「PC展」ZaGallery有明、東京 ('02)
2002   「GALERIA RASEN session」ガレリアラセン、東京 ('01, '00)
2001   「minimum continuation /継続」exhibit LIVE、東京
2000   「美術の星座 Constellation of Art 1998-1999-2000」なるせ美術座、東京
「机上の空論」ギャラリーマロニエ、京都
1999   「存在の家−見知らぬ私のために−」メタル・アート・ミュージアム、千葉
「ほどけない神経の鍵穴」ギャラリー那由他、横浜 ('98)
1997   「Dramaturgie−すれ違う日常−」キッド・アイラック・アート・ホール、東

 




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