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冨井大裕インタビュー

「○○だけど、○○じゃない」
という作品づくり











 

bricks、2004年、スポンジ、32.5×17×8cm
information
■芸術の山/第0合
発刊準備公開キャンプ「立体編 その1」
2005年9月23日〜10月10日
東京・表参道・ナディッフにて
芸術の山ブログ

■冨井大裕展
キュレーション:天野 一夫(京都造形芸術大学芸術学科教授・美術評論家)
2005年10月1日〜11月12日
大阪・CASにて


藤田
とは言え、「彫刻」というのは「彫る」とか「削る」ということでしょう?
冨井さんの作品を見ていると“冨井さんは彫刻刀を持ってるの?”って、イジワルなツッコミをしたくなったりして。


冨井
逆に、「彫刻」って何ですか?
木を彫ったり、鉄を削ったりすることですか?
確かに行為としては、彫ったり、刻んだりすること=彫刻とイメージしやすいですが、彫ったり、刻んだりすればそれが彫刻だというわけではないでしょう。
まぁ、彫刻刀は持ってますけど。(笑)
彫刻とは「○○だ」と言うことは、いまの僕には無理ですね。
言うことが重要なのかどうかもわからない。
僕の作品に彫刻的な要素を見て貰いたいとも思わないですしね。
それが目的ではないのだから。
むしろ、「作品とは何か」、「作るとは何か」ということを、作品を作ることで考えたいですね。
もの凄く当たり前のことを、僕のできることでやっていきたい。
ただ、そのできることをやっていると、大体、立体作品になるんです。
「できること」が何かは上手く説明できないのですけど、彫刻的な感覚は僕の「できること」の中に入っていると思う。
現在、既製品から立体作品を作っていますが、その既製品に対する見方の中に、僕なりの彫刻感覚みたいなものが混ざっていると思うんです。

藤田
というと?


冨井
いま使っている素材は全部身近なものですが、使い込みすぎてたり、知らないものでは作れなくて、一般的な使い方は知っているけど馴染みのないものを使います。
顔見知り程度の距離で素材と接すると、色々なものが見えてきます。
キャラクターとしての日用品の顔ではない、一つの物体として素材の使い道を考えることができる。
そういう素材との関係の仕方が僕には彫刻的な感覚のように思えます。
その意味では、木や鉄といった、いわゆる彫刻で良く使われる素材も同じなのですが、まだ当分使えそうにはないですね。
しばらくは、鉄といってもクリップとか既製品を使うことになると思います。

藤田
たとえば「それクリップじゃん!」って分かる冨井さんの作品は、「大量のクリップ」はもはやクリップを越えて「作品」になって、私たち観客に異次元への想像をそそる物体に見えて、感性も動かされてしまうのです。


冨井
それは、僕自身がクリップに作品としての可能性を見ていて、実際に作品になったときに、その可能性がクリップを「クリップだけどクリップじゃない」何かに見せているのでしょう。
その何かを何かのままのかたちで引き出せるかどうかが、作品になるかならないかの境目のような気がします。

藤田
そう、そうですね!
その「○○みたいだけど○○じゃない」っていう感覚も「ゆるい」と感じてしまう理由かな?!


冨井
「ゆるい」というのは考えたことがなかったなぁ。

藤田
悪口じゃないんで、誤解しないでくださいね。
私は1974年生まれで、年も冨井さんと同じくらいなので、作品を見ると感覚的に分かる、「ゆるい」と感じてしまうのですが、それをうまく的確なコトバに出来ないんですよ、すみません。
ただ最初に言いましたが、冨井さん(1973年生まれ)や河田政樹(1973年生まれ)、田中功起(1975年生まれ)の3人は同じような感じを受けるのは、時代性が関係してるんですかね?


冨井
時代性ですか?
在学中に、バブルがはじけましたよね?
そういうことって、結構、影響しているかもしれない。

藤田
あはは(笑)、バブルねぇ・・・、確かに作品だけじゃなくて、生き方にも関係してるかも。
ところで、これから展覧会が行われますね。


冨井
大阪の個展の前に、9/24、東京・表参道のナディッフで行われる公開討論会に参加します。
雑誌「芸術の山」 第0号発刊準備キャンプということになっていて、主に立体表現についての内容で一日中討論会(キャンプ)が行われます。
僕以外に3人のアーティストと「芸術の山」編集部の方々が参加します。
立体、彫刻を制作している方は、是非、来て頂きたいと思います。
大阪・CASは、天野一夫さんキュレーションで、大阪で初めての個展です。
新作、旧作合わせて3点ほど出したいと思っています。
旧作は少しサイズを変えて出品する予定です。
最近、彫刻にも意識が向き始めているので、新作と合わせてそういう要素が出せたらいいと思っています。

藤田
発表する作品は、展示する場所を意識してたりするのですか?


冨井
全く意識しないということはないですけど、場所性が作品の中心的要素になることはないですね。
作品の要素の中では、少なくしたいと思います。
現地制作でそこに置きっぱなしなら考えるかもしれないけど、基本として、どこで、だれがみても大丈夫な作品を作りたいと思っています。

藤田
がんばってください!
芸術の秋、ぜひ読者の皆さんも冨井さんの作品をぜひ見に行きましょう!


ゴールドフィンガー、2004年、画鋲、51.5×35.2×0.1cm
<+zoom>

joint(ball)、2005年、ストロー、44×49×51cm
<+zoom>

crane、2004年、折り紙、2.4×3.4×2.2cm
<+zoom>

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