会場からの質疑応答
藤田
そんな感じです。ここから、会場から質疑応答の時間です。ここまで5年間を振り返ってみたんですけど、何か質疑応答があれば・・・。マイクを回すんですけど、何かある方いらっしゃいますか?
怪我について
タムラ
つきものです。
(場内笑)
タムラ
ちなみに今年は、ふくらはぎを鉄板でちょっとえぐりました。「あいちトリエンナーレ」の準備をしていて、鉄板を何枚か取り回ししていたときに、眠気まなこでやっていて、その先端がふくらはぎのここに当たって・・・。(と怪我をした箇所を指差す)
横永
わあああ〜。
タムラ
具体的に言うと、この開いた傷口をタオルで巻いてキュって圧迫して。縫うかなって思ったけど、そのまま治ったよね。
藤田
肉が多いからですか・・・?
タムラ
自然治癒力が高いからって気がする(笑)すぐ治りますよ。
作品が回ることについて
来場者
結構、回る作品が多いと思ったんですけど、回るっていうことに何かこだわりっていうか思い入れがあるんですか? |
タムラ
これは多分、動きをブラックボックス的にしないというか、何か隠さないようにすると、たいてい回ってるものが多いんで、回ってるように見えちゃうんですけど。まあせいぜい回ってるものが直線的な動きになったり、音に変わったりするっていうだけで。多分、回るのは、モーターが回ってるからなんです。それを見せちゃってるから、多分パーツが回ってるように見えるんですよ。
例えばドラゴンの作品だったら、棒が横に移動しているだけですけど、上では回ってる。それをオレの場合は隠さないんです。そういう仕組みが見えるようにしているからだと思います。
展示の上で危険だったこと
タムラ
感電は、します。でも100Vなら死にません。溶接機だと、電圧が上がって電流が上がると多分まずいんですけど。電気カーペットとかでピッて来ることあるじゃないですか。あれ、100Vですよ。
藤田
へえ〜。
来場者
今、感電とか怪我とかの話を聞いたんですけど、たくさん展示をやられてて、一番命の危機を感じたりとか・・・。 |
公開インタビューの模様(上段右端が山口達彦氏)
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タムラ
ちょっとゲストをちょっとお呼びしたいと思います。山口さん、お願いします。
(山口達彦氏、ステージへ)
(場内から拍手が起こる)
※山口達彦氏: コンテンポラリーアートを中心としたエキシビションの設営、及び、コンサルティング業務を行う。
タムラ
僕の展示の相方なんですけども、彼が一番死ぬような思いをしてるんで。
(場内爆笑)
山口
そうですね。一番命の危険を感じたと思うのは、設備の整ってないところで展示をすることですね。ものすごく天井が高いのに、低いハシゴしかない、とか。
(場内爆笑)
《スピンクロコダイル》(「ゆらめく日常 アートの交差展 新進アーティストの視点」郡山市立美術館 展示風景)
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タムラ
そうだね。その話で、一番当てはまってたのが、郡山市立美術館での設置のときだったんだよね。すごい細長い脚立の上に、山口君と2人で立って、パーツを上げたじゃない? 上がるか上がらないかって瀬戸際で、初めて変な声が出たんです。「へぁっ」って声が出て・・・。
(場内爆笑)
タムラ
オレは死ぬかと思ったなあ、そのとき。
山口
やっぱり、こういう美術館で仕事をもらう前は、施設が整ってないところでやることが多かったから、そこの名残を引きずっちゃうんですよ、どうしても。設備の整っているところでも、ローリングタワー(注:足場のようなもの)を組むのが面倒くさいから、ただの脚立でできるだろうと思って持ち上げると、変な声が出ちゃうっていうね。
(場内笑)
タムラ
作業した後であったことを知ったんだ、ローリングタワーがあることをね。
(画面が振り子の画面に切り替わる)
タムラ
えーと、山口君が死にそうになったのは、この吹きぬけた空間の振り子の作品を上に設置するときに、すごいことをしたんだよね。
山口
天井が8メートルくらいあるところに、脚立の上に脚立を乗せるっていう・・・。
(会場から驚きの声が多数あがる)
藤田
脚立は何メートルだったんですか?
山口
いや〜、どれくらいだったんだろう・・・。とにかく届かなかったんですよ。
横永
脚立に脚立を乗っけるっていうのは、どんなふうに乗っけたんですか?
山口
上が平らな脚立の上に、脚立を伸ばして乗っけて・・・。
来場者
伸ばして、乗っけるんですか?
(会場内から驚きの声が多数あがる)
山口
角度をちょっと高くしないと届かないんですけどね。
タムラ
で、この作品が次の年に岡本太郎現代芸術賞で展示できた作品で、この手の作品は公立美術館には無理だろうって言われていたところなんですけど、岡本太郎の展示って、どっちかって言うとそういうのを好むところがあって、やってやろうじゃないのって美術館の人も言ってくれて、それでここでできたおかげで、郡山、鶴岡、小山、そしてあいちトリエンナーレまで、現場を説得できたんだよね。
横永
ここは下はコンクリートですけど、川崎は下は木ですよね。
タムラ
うん、木だったね。
横永
で、特に下に板も張ることもなく・・・。
タムラ
なく。多分、後で黒ーく跡は残ってると思うよ。
(会場爆笑)
山口
どの美術館も、展示が終わった後は燻蒸(注:くんじょう、害虫などを駆除すること)する。
タムラ
かなり汚れます。
(場内笑)
失敗だったと思う展示について
来場者
今までに、これは失敗したなあっていう展示とかはあるんでしょうか? |
タムラ
言いたくありません。でも、今まで一番ダメだったのって何だろうなあ。(しばらく熟考)多分、記憶にある中で一番ダメだったのは、第1回の横浜トリエンナーレのときにぶつけた企画で、「横浜イースタン・ラリアート」ってのがあって、脈絡のない2 つの作品をポンと置いて、終わりにしてしまったんですね。それ以来、もうすごくそれ反省して、やめよう、と。《フルスウィンガー》を出したときなんですよね。
藤田
《フルスウィンガー》って何ですか。
タムラ
映像を見てもらったほうが早いんですけど、ピッチングマシンを持ってまして、球を投げる機械があるのに打つ機械がないのはおかしいなっていうことで、打つ機械を作ったんですよね。
バットがずーっと回っていて、ピッチングマシンと、この《フルスウィンガー》を至近距離に置くと、たまに打つんです。
(場内笑)
タムラ
で、《Catch and release》とも結構似てるんですけど、人間がやるべきことを機械がやってるおかしみというか。これを作ったのが、大学の頃なんです。大学のパフォーマンスって授業でこれを作ったんです。
(《フルスウィンガー》の映像上映始まる)
(場内爆笑)
タムラ
ただ置いただけって感じだったんですね。
(場内笑)
藤田
これが恥ずかしかった、と。
タムラ
これ、恥ずかしかった。
(場内より「面白〜い」との声あり)
日本と海外での反応の違い
横永
この5年間で海外で展示されることも多々ありましたけど、見ている人の反応で、日本でやったときと海外での反応とで、違ったこととか特徴とかはありますか?
タムラ
そこまで余裕ないかも。
横永
見ている余裕がない、と。
タムラ
うん、ギリギリまで作業やってたりするから。まあ、向こうのキュレーターの人は、大体いいよって言ってくれるけど、本当にいいと思ってくれてるかどうかは、言葉のニュアンスもわかんないから・・・。リバプールでやったときも、ギリギリまでやってて帰ってきちゃうもんだから、お客さんがどうやって見てるかっていうところまでは見れてないことが多いです。ただ、次に話がないところを見ると・・・。
横永
う〜ん・・・。
タムラ
結果的にね。だからもうちょっと詳しく、どうでもいいならどうでもいいっていうことをよく説明しなきゃいけなかったかな、て気もします。
横永
うーん。なるほどね。まあ笑いとかそういう部分なんかで、何か日本的って言うか、世代的な部分ってあると思うんですけど、そのへんっていうのは、意識されてますか?
タムラ
まあこういう無常とかシニカルな部分っていうのは、日本人が持ってるものかもしれない。向こうの人は、もうちょっとポジティブなものを考えてるだろうし、そんな訳ないだろうって思ってるところはあると思います。それはあるけど、そういうのがある分、反動として、思いきりアナーキーな人もいっぱいいるから、受け入れてもらうとすると、そういう人たちには受け入れられているんだろうとは思う。
横永
じゃあ、もしかすると、そういうとこからまた、新たな展開とかっていうのがあるかもしれないってことですね。
タムラ
まあ、そうですね。
横永
ありがとうございます。
「Liverpool Biennial 2008」展示風景 |
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まとめ
公開インタビューの模様
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藤田
来年(2011年)の予定は・・・。
タムラ
2月に、新宿のBEAMSのB GALLERYで個展があります。3月に、静岡でグループ展があります。あと、決まってないんですけど、もしかすると六本木アートナイトに出すかもしれません(注:その後、東日本大震災の影響で、六本木アートナイトは中止)。あと、5月にTakuro Someya Contemporary Artで個展があります。文字の作品を大々的にやろうと思ってます。あと、8月に秋田県の大館でやるZERO DATEに出すんじゃないかな。
その後は空いてますんで、仕事待ってます。よろしくお願いします。あと、横浜トリエンナーレ出したいなあ。
藤田
わかりました。みなさん、よろしくお願いします。
タムラ
よろしくお願いします。
横永
本日は「PEELER Night in Tokyo」にお越しくださいましてありがとうございました。以上で公開インタビューを終わります。 |