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タムラサトルインタビュー


最近の展示から・あいちトリエンナーレ









《伏見のための接点》(「あいちトリエンナーレ2010」展示風景)

藤田
これから、動画で最近の展示を見ていきます。

タムラ
まず、今年やったちょっと大きな展覧会の、あいちトリエンナーレです。長者町という、地下鉄の改札を出たところにある地下街で展示しました。名古屋ですので、中日ドラゴンズにちなんでドラゴンです。


藤田
どんな仕組みなんでしょう。

タムラ
まずこの棒に、100Vの一極が流れてます。で、ドラゴンのミニチュアにもコードがついていて、100Vの一極が流れてます。それが接触すると、それがスイッチになって、後ろのランプがつくんです。ただ、接触が不安定なんで、スパークが起きるわけですね。ま、よくこれトリエンナーレがOK出したな、と。


藤田、横永
(笑)

タムラ
もう感電する可能性しかない。瀬戸内(国際芸術祭)は火災があったにもかかわらず。
(場内爆笑)


横永
でもこれ、ミニチュアの周りはどうなってるんですか。

タムラ
周りは亜鉛メッキ鋼板という鉄板が張ってあるんです。まあそれは火災防止という観点もあるんですが、もう一つの弱点として、ドラゴンが落ちると漏電してしまう。まあ諸刃の剣なわけですね。


横永
危ないですねぇ〜。

タムラ
まあそうならないような仕組みはしてあるんですけど、まあ危ないことには変わりはないですね。


横永
こういう派手に火花が出る作品って結構久しぶりですか?

タムラ
いや、こればっかり。比較的思ってるよりも安全で、事故がなくて、キレイなインスタレーションができるんで、(川崎の岡本太郎美術館でやった)岡本太郎現代芸術賞でうまくいって以来、公立美術館でできるんだ、あそこで許可出るんだったらうちもやる、ということで、川崎、郡山、鶴岡、小山っていう感じで、今のところ無事故でやれています。何かトラブルがあったらもうできないと思うんですけど、今のところはうまくいってます。


横永
傍目で見ていると危ないって思うんですけど、そこはちゃんと考えてあるんですね。

タムラ
まあ危ないのは危ないですよ。ただ、監視の人がいるとか、そういうことをうまくしてもらえれば、まあ大事故につながることはない。


(場内笑)

藤田
ここの展示は、1日500人来たみたいですよ。

タムラ
そうなんです。


(鶴岡アートフォーラム「ぐるぐるボカン」展示の映像に切り替わる)

タムラ
じゃ、鶴岡の展示も見ましょうか。鶴岡アートフォーラムっていいまして、展示施設と、会議場と、あとカフェとかいろんなものが併設されてる文化施設なんですね。で、展示空間自体は25m×25mの2フロア、その他にエクステンションギャラリーっていうギャラリーがありまして展示室外のフロアがあります。


藤田
(旗が)回ってる・・・。

タムラ
大漁旗をつくったんですね。展覧会の安全を祈願して。


藤田
「ぐるぐるボカン」って書いてある。

タムラ
酒田のそういう漁師さんに大漁旗をつくるような業者さんにお願いして作ってもらって。1枚3万円しました。
(場内笑)




《バタバタ音をたてる2枚の布》

藤田
でも、ぐるぐるボカンがぐるぐるするのもおかしいですよね。

タムラ
ぐるぐるボカンだから。で、こうたまに止まって動き出すっていうのを繰り返す。で、どっかのタイミングでお客さんは字を読むことができたと思います。


(映像が《ブロアの上の落下傘》に切り替わる)

タムラ
これは下に送風機がついてまして、その風と落下傘の重さのバランスがちょうど合うと空中に漂うんですね。


藤田
くらげみたい・・・。

タムラ
まあ落下傘はくらげに似てますよね。あと、鶴岡ではくらげはマストアイテムなんです。鶴岡に有名なくらげの水族館があって、地元では有名なところなんです。


(画面が《Catch and Release》に切り替わる)

横永
これは、今回の展示にもある作品ですね。

《ブロアの上の落下傘》


《Catch and Release》





《Double Mountain》


タムラ
今回は、上の会場に合わせて竿を短くしてるんですけど、このときは一番長いもので2mちょっとぐらいの竿でやってます。いずれ、3mとか4mとかの長い海釣り用の竿でやってみたいなっていうのはあるんですよね。


横永
このときには何台並べたんでしたっけ?

タムラ
5台です。


タムラ
前のスイッチにぶつかると、回路が切り替わって、リールのクラッチが切れる動作が入って、後ろ向きに戻っていくんです。


(画面が《Double Mountain》に切り替わる)

横永
これは、比較的前の作品ですね。《Double Mountain》。

タムラ
《Double Mountain》っていうのは、実際に作ったのは2000年になります。高井戸にあるギャラリーアート倉庫っていうすごい大きなスペースで展示したときに、細長い空間に合わせてこの彫刻を作ったんですけれども、山が登山するっていう・・・。


(場内爆笑)

タムラ
山に何が一番登らないかなって考えたんです。基本的に、決めうちをするんですよ。今度は山を使う、と。そう決めたら、山をどう台無しにしていくのかってのを考えるんです。すると、「山に山は登らないんだ・・・」と。

(場内笑)

タムラ
それをいかにキレイにまとめるかっていうのが仕事なんです。


藤田
今のぶつかったのは何ですか?

タムラ
あれはリミットスイッチといって、それ以上行かないようにするためのもので、ぶつかると回路が切り替わる。


藤田
で、上にまた登り直すと。

タムラ
秒速1cmくらいで登って。で、山に対してフラットに並んで座っているような状態が一番ベストポジションなんだ、と自分では思ってるんですけど。これは相当くだらないです、自分で言うのもなんだけど。何か自分が作ったような気がしない。「山、登ってんじゃん・・・」って自分で言ったりして。

(場内笑)

タムラ
このレベルのものをもう1回ぐらい作りたいですよね。


藤田
雰囲気のゆるさは《小山マシーン》と似てますよね。

タムラ
ゆるい感じはね。でもそういう場合って、最初から頭の中にイメージがあって、そのイメージが鮮明であると、だいたいいいんですよね。熊もそうだったよ。


横永
でも、特にこの作品なんかは、すごいスピードがゆっくりですよね。普段はすごーくゆっくりなんだけど、進むときは速くガシャーンと戻るっていう緩急のバランスがあって、見せ方がうまいなと思うんですけど、やっぱそこらへんは計算してるんですか?

タムラ
昔は速ければ速いほどいいと思ってたんだよね。速さが持ってる暴力性とか、そういうものに頼ってたと思うんだけど、そうじゃないものをやってみよう、ゆっくりなものでも何かできるんじゃないか、と思って作ったのがこの作品だったんだよね。で、2000年にこれを作って成功して、それ以来、スピードの持ってる強度に頼らなくてもできるようになったっていうきっかけになりましたね。

(画面が《Standing bears go back》に切り替わる)


「ぐるぐるボカン〜まわる!はしる!つるおかの自然」展示風景(左:《Standing bears go back》)

横永
これを作ったのは何年でしたっけ?

タムラ
作ったのは、実は96年か95年くらいなんだよね。発表したのは98年になります。

横永
ああ、そうなんですか。

タムラ
これは、熊の中についてるプロペラの推進力で後ろ向きに走る作品なんですよ。

横永
あと、他の作品にも共通するところがありますけど、音の緩急っていうか、そういうものが効果的な作品が多いなっていう印象もあるんですけれども。

タムラ
まあ、音は出そうっていうもんじゃなくて、出ちゃうもんだからね。だから、必然性があるから面白いのかもしれない。

(映像が《100の白熱灯のための接点》に切り替わる)


《100の白熱灯のための接点》

タムラ
この作品はですね、床に養生用の鉄板を敷いて、後ろのライトが入道雲の形になってるの。で、鉄の棒が真ん中を動くんですけど、それが一応雷のイメージなんです。で、点滅を繰り返す、と。

横永
接点のシリーズって、最初の頃は、ライトはどうでもよくて、とにかく火花を見せるっていう作品が多かったと思うんですけど、後の方になってくると、火花も見せつつライトをどう見せるかっていう作品も結構増えてきてる印象があるんですけど、そこらへんって何か理由があるんですか?

タムラ
それはやっぱり、やってるうちによく見せたくなるよね。本来はスパークを見せるのが筋だと思うよ。ただ、それがやっぱりバリエーションなんだろうね。でも、それだけ見せれば終わりっていうもんでもないような気もするし、作ってるうちにそう何か・・・。だから僕の場合、最初の一作目が作品で、後は仕事なんだよ、多分。

横永
はあ、そうなんですか。

タムラ
展示の仕事ね。展示の仕事のときに、許せる範囲でバリエーションは作りますよっていう。

横永
まず最初に作品として・・・。

タムラ
そう。プロトタイプがあって、それをどう転がしてくみたいなのは、間違いなくある。
だから、どこか徐々にダメになっていくんだよ、多分。それは自分でもわかるし。で、これ以上やっちゃうとダメだなっていうところまでいったら、まあ完成するんだね。で、そうなったら、やらないようにするか、元に戻るか、っていうのはありますよ。

横永
でも、こういうのをやってるうちに、自分の中で最初の意図からどんどんずれてくってことはない?

タムラ
それは、オファーのときに、こうしてくれ、ああしてくれ、と言われる中で、ヤだなって思うところもあるし、やってみようかって思うところもあるし、それはやっぱり仕事として受けてる部分もあるので、自分の中はいつもせめぎ合いがあるんですけど、やってみたらダメだったなって思うときもあるし、うまくいったなって思うこともあるし、それはしょうがないよね。

(映像が《スピンクロコダイル》の映像に切り替わる)


《スピンクロコダイル》(「ぐるぐるボカン〜まわる!はしる!つるおかの自然」展示風景)

タムラ
緑色のワニの、一番後ろの奥に回ってるやつを大学3年のときに作ったんですけど、もっと高速で回してたの、昔はね。まあ今でも回す気になれば回せるんだけど、それをなぜ面白いのかっていうことに気づくのに6作作っちゃったってこと。ワニっていう意味と、回るっていう意味をいろいろ考えているうちに、そうじゃない面白さ、「何か知んないけど、ワニが回ってるよ・・・」っていう境地までいくのに2年かかったの。

(場内笑)

横永
で、その過程の中で2匹回してみたりとかしたんですね。

タムラ
そうそう。で、最初は緑のワニがゴーっと回って、次は2連作って、10連作って、で、何か最初のと違うなって思うようになって、どうしてだろうなって思ったときに、ワニが何か知んないけど回ってるよっていう有り様に気づいたんです。そこからもうワニは作らなくなったんだけどね。

 
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