ハガ
女性作家にも注目が集まった時代ですね、どんな作家さんがいましたか?
篠原
今はキャンバスに糸を縫い込む作家さんもいるけど、もっとダイナミックに地面に糸を縫い込んだ人とかいましたね。大塚由美子さんといって、土とか鉄板とか、アスファルト、コンクリート、ガラス……そんなものを全部毛糸で縫い合わせているような作品。ちょっと不幸な事情があって表向き活動できなくなったんだけど、本当に惜しい作家さんで。
ハガ
「超少女身辺宇宙*1」の中で取り上げていらっしゃる作家さんですね。
篠原
そうですね。僕の「超少女身辺宇宙」の中で取り上げた作家は、本当に型破りな女性作家が多かったですよ。熊谷優子さんとか、今は写真作家になっている寺田真由美さん、田仲容子さんも非常に面白い作家だったんだけど、中南米に旅行に行ったときに事故で亡くなったり*2。何故か不幸なことになっちゃった人も多いんですよ。
ハガ
えぇー、そうなんですか……。
篠原
最近、80年代はファッションの世界でもモードになりつつあるらしいですね。
ちょっと前から現代アートの世界でも80年代っぽい作品が増えているんで、びっくりしてます。でも今の人たちが、当時僕が取り上げた作家なんか全然知らずにわいわい騒いでるのは、ちょっと不満でもあります。もうちょっとコンテクストを踏まえてほしいですね。関西が中心地だったら、もっと大きく80年代のこういう人たちは取り上げられていたでしょうけど。よく「日本のアートには流れがない」って言うけど、それは自分たちの、語り部の責任なんですよ。要するに不勉強なだけ(笑)。それを、あたかも客観的にそういうもんだって決めつけること自体が、ちょっとおかしな話だと思います。
*1篠原資明「超少女身辺宇宙」(『トランスアート装置』思潮社, 1991年所収。『美術手帖』1986年8月号初出。)
*2田仲容子の遺作は、嶽本野ばらの小説『カルプス・アルピス』のモチーフとなっている。
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