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神戸智行インタビュー

身近にあるものを描く
ということ

神戸智行インタビュー

Tomoyuki Kambe Interview
佐藤美術館「神戸智行展 イノセント・ワールド」展示風景



佐藤美術館「神戸智行展 イノセント・ワールド」チラシ

美術(作品)に何を求めるか、は人によってさまざまであろう。
しかし、美術(作品)の魅力は何か、と聞かれたら、
多くの人が「美しさ」や「きれいさ」を挙げるにちがいない。
たったいまの現代美術は、
おもしろいと思わせる作品、難しい作品、売るための作品、など、
鑑賞者の感情・関心・目的はさまざまである。
だからこそ、私は改めて美術(作品)の魅力を問いたい。
神戸智行が描く「日本画」は「きれい」と思うし、
何をもって「日本画」と呼ぶのか「難しい」とも思う。

なお、このインタビューは、
2011年11月15日〜12月18日に東京の佐藤美術館で開かれた個展で、
一イベントとして、11月23日に公開で行われたものである

INTERVIEWER  藤田千彩


日本画へのきっかけ


藤田
こんにちは。
今日は神戸智行さんの個展におじゃまして、公開でお話を伺いたいと思います。

神戸
こんにちは、神戸智行です。
今日はよろしくお願い致します。


藤田
実は私、神戸さんの作品を見たのはわりと最近なんです。
2009年に岐阜県美術館で行われた「ARTのメリーゴーランド展」で、初めて作品を見ました。
ショウケースにくっつくように「わぁ、色がとてもきれい」と思って、東京から岐阜まで2回も見に行ったほど、とても気に行ってしまいました。

神戸
岐阜は僕が生まれ、育った場所です。
絵を始めたのは高校のときで、美術科がある学校へ行っていました。
高校に入って、1年生のときに日本画、油絵、デザイン、彫刻を一通りやって、全部の素材に触ったときに、僕にとって日本画がしっくり来ました。
もちろん岐阜という土地柄上、日本画の作品を見る機会もたくさんありました。


藤田
たとえば誰もが美術の授業で水彩を教わったり、私は油絵をしていたこともありますが、日本画は画材が多いですよね。

神戸
日本画の画材は、岩絵具といって鉱物を細かく砕いてできた顔料だったり、金箔や銀箔といった箔(はく)などをつかうのですが、その素材自体のもつ美しさやその多くを自然からつくられたものというところに魅せられ、それをつかって表現したいと思った記憶があります。
岩絵具は、原料となる岩石の種類だけではなく、粒子の大きさによっても色が違います。
油絵具、アクリル絵具や水彩絵具などとは違って、チューブからパレットに移して混ぜて使うのではなく、絵具を溶く段階でのひと手間を掛けることや画面に重ねていくことで、自分の納得のいく色ができていきます。
研究と経験の積み重ねがとても大事ですが、その発色の美しさは材料が多様なだけにうまく使えば、とても多彩な色が出せます。


藤田
そう、だから神戸さんの作品は「きれいな色」なんですよね。


佐藤美術館「神戸智行展 イノセント・ワールド」展示風景


日本画のつくりかた


藤田
日本画は色がきれいですが、つかう画材も多いし、つくりかたも複雑そうに見えて、おおざっぱな私には向いてないんですね(笑)。
一枚の紙から絵ができあがるまで、日本画ができるまでのプロセスを教えてください。

神戸
紙は一般的に、雲肌麻紙(くもはだまし)などの和紙をつかいます。
ほかにも、絹や板などを支持体(絵を描く画面のこと)として使うこともあります。
「裏打ち(うらうち)」といって、楮(こうぞ)などからできた裏打ち紙にのりをつけて、それを本紙に貼って丈夫な支持体をつくります。
パネルにも脂(やに)が出てしまうので、下張り(したばり)、中張り(なかばり)というのをして、裏打ちをした和紙を貼って描いていきます。
そこから作家さんによってやりかたは違うので、正しいルールはないのですが、自分たちが写生をしたものから、小下図(こしたず)という下図を描いて、そこから実際の大きさの大下図(おおしたず)をつくります。
大下図と本紙との間に念紙(ねんし)という写し紙を置いて、下図を本紙に写し描きをしたら、墨で線を引く骨描き(こつがき)をして、そこから彩色(さいしき)をする、というのが一般的だと思います。


藤田
ありがとうございます。
その「彩色をする」、つまり色を塗るときに箔をつかっているんですよね。

神戸
箔は、竹でできたピンセットのようなものでつまんで扱うような、とても薄くて、軽いものです。
直接手で触れないので、うまく貼ることも大変です。
あかしと呼ぶのですが、油やろうを塗った紙に箔を移して、箔を本紙に貼っていきます。


藤田
神戸さんは金箔、銀箔だけではなく、カラフルな箔をつかってるんですよね。
こないだ高崎市タワー美術館での展示で見て、そんなカラフルな箔があることを、私は初めて知りました。
箔を貼ったあとに絵具で色を塗って行くのですか?

神戸
はい、そうなんです。
ただ、箔は金属物質なので、つるつるしているし、うまく絵具も乗りません。
どうさ(にじみを止めるもの)をしたりとか、僕の場合は、箔の上に薄い和紙を貼って絵具を塗って・・・を繰り返していくので、箔の上に薄い和紙の膜が貼ることによって、絵具の定着も良くなります。

藤田
手がべとべとしているときはだめですね。

神戸
そうですね…(笑)。

 

 
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神戸智行(かんべともゆき)

1975   岐阜県生まれ
1999   多摩美術大学美術学部日本画専攻卒業

展覧会歴
2000   佐藤国際文化育英財団第9回奨学生美術展(佐藤美術館)
同'06 招待出品、'07 特別展示
2001   多摩美術大学大学院日本画専攻修了 同大、日本画研究室助手となる(〜'08)
2003   個展(ギャラリー青羅 銀座)
2004   日本画展─20世紀から21世紀へ─(野木町文化会館 栃木)
2005   個展(ギャラリー広田美術 銀座) 同'06',07,'11
川本喜八郎新作映画「死者の書」イメージ担当
2006   個展〜イノセントワールド〜(洋協アートホール/ギャラリー広田美術 銀座)
第12回ミニアチュールとガラス絵展(森田画廊 銀座) 同'07',08,'10,'11
2007   美術館で夏休みを過ごそう!〜現代日本画ワンダーランド〜(高崎市タワー美術館群馬)
2008   第14回尖展−招待作家出品−(京都市美術館)
文化庁在外研修員として、アメリカ、ボストンに滞在(2008年9月〜2009年8月)
2009   話題のアーティストを紹介する─ クロスアート2 The 7 Top runners ─Art のメリーゴーランド展(岐阜県美術館)
2010   「日本画」の現在 現代作家9人の競演(青梅市立美術館 青梅市)
「日本屏風展」(クラーク日本美術・文化研究センター アメリカ、ハンフォード)
個展 アートフェア東京(ギャラリー広田美術ブース 東京国際フォーラム)
いのちのかがやき−花鳥画の今−(茨城県天心記念五浦美術館)
Le Japon Vintage et Contemporain(Galerie Vanessa Rau フランス)
個展(光芳堂 岐阜県)
DOMANI 明日展 2010(国立新美術館 六本木)
2011   トップランナー 日本画の若き力(高崎市タワー美術館 群馬県)
今後の展示予定
太宰府天満宮アートプログラム vol.7 神戸智行展「イノセントワールド」
(第一期 2011.12.25〜2012.3.11 第二期 2012.3.14〜5.13)
神戸智行さん 
 



 

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