toppeople[原井輝明インタビュー]
原井輝明インタビュー


《光の粒-プール掃除》6.5×6.5cm, 29.7×21.0cm Oil on canvas、写真コピー 1993

画面の切り取り方


藤田
いま私は、アートの文章の書きかたを教えてるんです。
例えば「展覧会の告知を書きましょう」という回では、受講生には美術館が出している展覧会のプレスリリース(告知用情報)をもとに、100字以内の告知文章としてまとめてもらいます。
そこで、展覧会全体について書く人もいれば、出品される作品のことを書く人もいて、各々の内容のピックアップする部分が違う。
原井さんの画面の切り取り方、ここを描こう、ここからここまでという画面の幅の選び方も、それに似ているのかなと思いました。

原井
そうですね。


藤田
最終日のクロージングパーティでも、「写真の切り取り方みたい」とおっしゃっている写真家さんがいましたね。
確かに画面って、写真みたいな、とか、絵画のような、とかあるんですよね。

原井
文章であろうが、絵画であろうが、写真であろうが、絵日記であろうが、映画であろうが、媒体というのかな、切り取り方というのは、切り取る人の着眼点や趣向でどんどん変わってきますよね。
逆に言うと、ひとりの人がいろんな素材、いろんな媒体で表現しても、やっぱり同じような切り取り方になっていきますし。


藤田
そこで私の講義では「読む人つまりターゲットを意識して、文章を書きましょう」と教えます。
原井さんが絵を描くとき、意識されていることはありますか。

原井
そうですね、意識しているとするなら、西洋絵画として考えられている、構図のような、バランスのような、こうあるべきという表現の王道があるんですね。
でもそれをしてしまうと、ありきたりな絵になってしまって。

藤田
ああ、絵らしい比率とか、間というか、絵画ならではのものはありますよね。

原井
ひとつきっかけがありました。
マティスの作品を見て、考え方が変わってしまったんです。
予備校の先生に怒られるような構図の絵なんですが(笑)、それまで見て知っていた作品とは違う調和とか緊張感とかがあって、自分の中で納得したんです。

藤田
大学入る前なんですね。

原井
そうですね。
大学に入ってから自分で制作をしていくときも、マティスを思い出すことで、作品をつくることができたと思うんですよ。

 
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