A.春木麻衣子
《either portrait or landscape 1A》2007年
B.中西信洋
《レイヤー・ドローイング/日の出》2007年
C. 長谷川踏太/TOMATO
《 時 分のパターン》2007年
D. 鑑賞者投票システム |
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横山の明るさと打って変わって、黒い壁に囲まれて展示しているのは春木麻衣子の写真。(画像A)
モノクロの世界、ではなく、これはきちんとカラーで撮影され、カラーとしてプリントされ、モノクロに見せている(見えている)。
息をするのも惜しいくらいにひっそりと、しかし凛とした作品である。
春木の部屋を出て、隣には関口敦仁のペインティングが掛かっている。最初はペインターだったが、デジタルに以降し、この展覧会のためにペインティングを出したそうだ。
向かい合ってまた静かな作品が2つ。
さかぎしよしおうは、セラミックを点状にし、時間をかけて蓄積していく立体作品とする。
今回は藍色の作品で、よく見る白い陶のものと違う印象を受けるだろう。
中西信洋は、森美術館のある六本木ヒルズの展望台から、一定の時間間隔で夜明けを撮影し、それらのフィルムを重ねるように見せている。(画像=B)
奥の台にあるのが、35mmポジフィルムのマウントしたものを重ねていたもので、これまで私はこの形状のものしかみたことがなかった。
だから今回の大きなフィルムが、まるで朝焼けの空に舞う鳥の群れのように、広い空間でインスタレーションしているのを見て、改めて「見せ方」ということを意識した。
それを抜けると目に入るのが佐藤雅彦+桐山孝司による、数字ゲームのような作品。
体験型の作品でも大きな規模だと思われ、足し算や掛け算など脳のトレーニングにもなるだろう。
向かい合ってエンライトメントの写真や映像によるインスタレーション。
派手派手しいが、デザイン、アート、写真などの既存のジャンルをクロスする作品としては、本展のコンセプトと一致する。
長谷川踏太/TOMATによる、時計をイメージさせる作品(画像C)は、ある一瞬(例えば16時08分の場合、のような)を、いくつもの時計の針が同じように指している。
時間への思い、と類推していたら、通りすがりの夫婦が「あらきれい」と一言。
内容の追求より、見た目も大切と気づかされた。
そして最後は池水慶一の作品、ドアが置いてある。
これで終わりというドア?次の時代へのドア?ドラえもんに出てくるようなドア?
ちなみに、展示期間の一時期ではあるが、近くにある六本木高校でこのドアのインスタレーションをするそうだ。
前回同様、今回も鑑賞者が投票して賞を与えるという試みがなされる。
タッチパネル式で、チケットの番号と引き換えに投票ができる仕組みだ。(画像D)
以上、駆け足で「六本木クロッシング2007:未来への脈動」を紹介した。
あくまでも紹介に過ぎない。
作品鑑賞で一番大事なのは、実際足を運んで見て、作品と向き合い、作品と対話して、自分なりの意見を持つこと。
よい/わるいだけでなく、面白い、よくわからない、この作品はこうだと思う、という言葉が出てくるだろう。
同時代に生きる作家が生み出した作品だからこそ、理解できるし、意見も持てる。
世代を超えた作家やジャンルをまたがる作品のクロッシングだけでなく、鑑賞者とし
てさまざまな見方、いろいろな思いや考えもクロッシングできる展覧会だと思う。
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