topreviews[街じゅうアート in 北九州2007〜「ものづくり・ものアート」 /福岡]
街じゅうアート in 北九州2007〜「ものづくり・ものアート」


『プロレタリア17號 』 
角孝政 × 岸川商事(株)
リバーウォーク北九州
夏まつりに登場した水玉のお神輿の展示かと思って近づくと、高さ5cm弱の小さな工事人形(工作用玩具)3500体で作られた作品でした(笑)。その土台の鉄パイプやタンクの一部は、「鉄・溶鉱炉」を想わせるようなオレンジ色で塗装されている。
建築的に美しい工場群、この街の繁栄は、こうした見えないところで、しっかり働く労働者たちなのだ。
工事用三角ポールと進入禁止のポールは、作品の一部だと考えたい。このポールは現場の臨場感、緊張感を増長している。彼の父は、新日鉄関連で働いてきたと言う。父への労いと誇りを感じる。作家の胸にあるテーマは「家族」なのかもしれない。

『Cradle』 
武内貴子× シャボン玉石けん(株)・TOTO(株)
眺めの良い5階ラウンジは、高い天井、大きな窓と外の景色・・自然光といった、解放的ではあるが、間延びしてしまいそうな空間である。この場で、武内が選んだ素材は、洗練されたデザインのバスタブと、無添加でおなじみの固形石鹸。いずれも実生活的で自己主張が非常に強い商品である。そこで、ここで使われている布を、あらかじめ蝋に浸し、表面に石鹸を塗ったような質感を持たせている。さらにその一本一本を結わえることで作られた「結び目」が、会場に適度な湿度と重量感を持ちこんでいる。バスタブの強いデザイン性を、「格子の余白」がうまく包み込み、お互いが自立しながらも、ひとつの世界へと作り上げている。
遠方から見ると夢の世界のようだが、実際に中を歩くと、一歩一歩が妙に確かに感じられる。それは、足元にあふれている石鹸による効果かもしれない。現実に起こった、あるいは起きるかもしれない「ことがら」を愛おしむかのように、ひとつひとつ丹念に透明フィルムに包まれている。この虹色の光のスペースは、私たちが見るやわらかい夢の情景であると同時に、こういう場にいたことがあるという現実を含んでいた。

武内はこの二つの企業から「ゆりかご」というキーワードを見つけたと言う。

『VISIONS』
渡部裕二 × リバーウォーク北九州
「閉じこもっていないで、出ておいで」と、声をかけたくなるような甘い顔の少女。
これは、壁に埋め込まれた電照看板の中に、素描を印刷した透明フィルムをずらして貼ったもの。たった2枚なのだが、何重にも重ねているように見える。思い出したり、消えたり・・曖昧だったり、鮮明だったり・・誰にでもある「記憶」、過去の時間を、閉じ込めることに成功している。

この作品は電照看板が”売れるまで”そこに展示されているそうです。(現実的だなー)

北九州空港から見える朝日が昇る風景(30分程)と、関門海峡をわたる船がつくる水しぶきの様子を(3分程)撮影。それらの映像を重ね、時間を立体空間として見せている。一瞬一瞬の透過した時間の姿は、何者にも侵されることのない「時間」の中で営み続ける人間を意識させれくれる。
『Layer Drawing / Layer Tower 』
中西信洋 × リバーウォーク北九州


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