topreviews[街じゅうアート in 北九州2007〜「ものづくり・ものアート」 /福岡]
街じゅうアート in 北九州2007〜「ものづくり・ものアート」


あんたの街ば、ようわかったっちゃ!!
TEXT 友利香

今年で4回目を迎える「街じゅうアート in 北九州2007」

今年のテーマは「ものづくり・ものアート」〜企業からの物資協力は、よくある話。だが、この展覧会はどこか違う。骨太な賑わいを感じる。主催の「NPO法人『創を考える会・北九州」の作家と企業人を巻き込む勢いにも注目できる。
作家は北九州の企業の中から自身で企業を選び出し、協働を交渉することからスタートしたという。
たとえばドラム缶の作品。作家が企業に行き、「このドラム缶に、街の記憶を入れます。」と、プレゼンテーションしたとする・・、企業人は「ハァ・・」と返すしかなかっただろう。最初のうちは。

展覧会のメイン会場は、リバーウォーク北九州、小倉井筒屋、小倉伊勢丹の歩いて回れる小倉駅前の商業施設。他に、レストラン、銀行、店舗など市内10ヶ所の事業所で『牧野伊三夫〜特製コースター』が無料配布され、私はそれを集めたいが故(笑)、八幡方面にまで足を伸ばすことになった。

『木型の家 SUPERO House(犬用住宅)』
藤浩志 × 岡野バルブ製造(株)・(有)井上木型製作所
小倉伊勢丹
伊勢丹の玄関でお客を迎える真っ黒な工業製品と野生の犬。エルメス、ヴィトンに身を包む婦人たちが不気味そうに見入っている。その異質、違和が小気味よい。技術者や職人たちの頭脳と技巧で作られたバルブの原型(「木枠」)は、つややかで、強く誇らしげである。内側を覗くと、激しい水流を感じる。ヤセ犬たちは、自然にあるがままの廃材で作られ、後ろ足で繋がれている(盗難防止と思われるが)。彼らは小屋を与えられても、決して飼い犬にならない。ヤセ犬は、野生の犬のままである。商人が扱う商品・お金や客の流れ、職人が作り出した大工場の水やパイプの流れ、そして、美術家が提示した野性の血の流れ、ここには人による3つの流れがあった。

『いつのいづつや いつ?のいづつや』 
白川直行 × (株)山本工作所
小倉井筒屋
ドラム缶の中を覗くと、水が張られ、古い写真が沈んでいる。水面には木の葉が浮かび、過去を見る今の空と、今の自分が映りこむ。水の量は写真がはっきり見える程度。それほど深くではない。今と過去との間の距離感は、水の深さで変わってくるのだろう。

左)『庭、午後、茶を飲む』
先崎哲進/TETUSIN×(株)井筒屋

右)『TIMES』 
先崎哲進/TETUSIN ×(株)井筒屋・(有)しま/デザイン・コイルセンター国光(株)・永伸産業(株)
1Fカフェのガラス窓は、カッティングシートを貼り付けたもの。店内の人は、この森の景色を借りてお茶を飲む。通行人は店内でお茶を飲む人の姿を借りて成立する森の風景を見る。

一方、デパート8Fの通路の作品は、小倉城を借りた石垣の鉄製フェイク(笑)。これは、鉄板にカッティングシートを貼り、周囲を錆びさせたもの。日本的情緒の動植物が描かれている。街の出発点を鉄産業に基準を置くと、その年月の経過を表すのは「鉄錆」である。また小倉城は、小倉のシンボルだが、再建されたコンクリートの建物。(小倉城もフェイク?)ただ、石垣だけは当時のまま残っている部分が多いとのこと。この石垣の「苔」と、「鉄錆」とを重ねている。

この2点は、別々のタイトルがつけられているが、私は一対の作品として見ている。


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街じゅうアート in 北九州2007〜「ものづくり・ものアート」

ものアート展示
リバーウォーク北九州・小倉井筒屋・小倉伊勢丹

2007年9月1日〜9月24日

協力会場:牧野伊三夫の作品配布
     市内店舗10ヶ所
「街じゅうアートin北九州2007 ものづくり・ものアート」
 NPO法人 創を考える会・北九州
http://www.sohkai.or.jp/info_0707.html
 
著者のプロフィールや、近況など。

友利香(ともとしかおり)

北九州弁と博多弁とは違うのかな。ちょっと方言に興味を持ちました。
芸術の秋〜PEELERライターの中村千恵さんと、ささやかですが「北九州国際ビエンナーレ」のサポーターをしています。
Artonline.jp / Kitakyushu Biennial
http://www.artonline.jp/

それと今、宇部のシャッタープロジェクト『FCA』の応援をしています。
Shutter Painting Project vol.4
http://fca-sp4.blogspot.com/




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