冨井大裕 個展「空白の作り方」
U8Project
2005年10月20日(木)〜11月3日(木) |
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神は繋ぎ目に宿る。
TEXT 野田利也
冨井が作り出すオブジェは、ごくありふれた既製品によって構築されている。ごくありふれた、と言っても、アルミシートや、ストロー、スポンジや画鋲など、使用頻度からすると決して日常的なものではない。当たり前のようで、当たり前ではない、この微妙な距離が冨井の作品に、オブジェ(アート)と既製品との間の揺らぎを与えていた。私は、それが彼の作品のひとつの重要な特徴だと思っていた。
しかし、今回U8Projectで展示されていた作品に、その揺らぎは見られなかった。
規則的に丸い穴があけられたアルミ板。その穴にはめ込まれたカラフルなスーパーボールを支柱に、アルミ板が何層に重ねられた「ball
sheet ball」。4本のストローを四角くつなぎ合わせ、輪投げのように的棒にそれがいくつも投げ込まれた(?)「四角投げ」。方眼紙の縦線と横線が交わる点を虫ピンで刺すことで壁に出現した「はり付け」。これら3点に先述したような揺らぎはなく、強い強度を持ったオブジェとして私を迎え入れてくれた。
それまでの作品と何が違うか(違わないか)は定かではないが、私は、モノとモノが接合される接点の精度(アルミ板とスーパーボール、4本のストロー、虫ピンと方眼紙)が、上がっているのがひとつの要因ではないかと思う。(余談だが、先日たまたまテレビで目にした黒沢明と北野武の対談で黒沢が、映画で最も重要なのは、シーンとシーン、カットとカット、シークエンスとシークエンスの繋ぎ目だと語っていたの。)また、ランダムでありながらミニマルな要素をオブジェのどこかに取り込むことで、緊張感を持った作品になっている。
それらが置かれた場が緊張感を孕むのは必然か、それとも冨井の手によるものなのか(もちろん後者であると思う。)、観る者にそこを「空間」として強く意識させることに成功している。
ここで感じた「空間」が冨井の言う「空白」なのだと思う。
白い紙の上に小さな点をひとつ描けば、その周辺は全て「空白」となる。点と「空白」相互関係は明確だ。美しい余白を作り出すためには、美しい点を描かなければならない。「空白の作り方」の答えは、いたってシンプルなものに違いない。
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