toppeople[植松琢磨インタビュー]
植松琢麿インタビュー
 

作品のコンセプトと素材


藤田
植松さんの作品って、白いイメージがあるんですけど。

植松
白は、輪郭がぼんやりした思考の色、生命の色で、自身の内面とつながる色です。

藤田
でも、動物の剥(はく)製や、自然といったものが使われてて、どきっとするんですよ。
うまく言えないけど、きれいな動物園にいる気持ちになります。

植松
自分が感じる社会の様相や人工美など不確かなものを、自然の中にあるカタチで捉えたいと思っていて、それは、系統樹で表された進化の図や、当時の世界を表した世界樹など、昔から人間が行ってきた行為だと思っています。

藤田
というと?

植松
例えば、ホタルの乱舞する姿が、ネットを浮遊する人の意識と重なり合った感覚から出来た「フォレスト」の写真作品、結晶のカタチを生命の連鎖や、現代の人の出会いの形に見立てた「crystal」の作品などがあります。

藤田
ネットを浮遊する人の意識とか、確かに現代的ですね、その気付きはすごいかも。

植松
こないだ同窓会で、友達が「無線で電話番号飛ばすわ」っていう会話をしていたんです。
その席にいた5名が同時に、各自の携帯を、一人の携帯に向けたんです。
そこで生まれた携帯の☆のような並びを見て、人のつながりが作る結晶みたい、と思わずそれを携帯で撮影しちゃいました。
そして、へ〜普段そういう感覚でいるんだ〜とつっこまれ、ハッとしてしまいました。

藤田
普段からそうなんですね。

植松
みたいです(笑)。
たぶん僕たちの世代って、ネット社会の前も知ってるし、後も知っている。
バーチャルとリアリティを、わざわざ意識して考えてる世代です。
今はパソコンの前に居ることが多く、そういったことを考えたり、混合したり、という生活をしていて、そんな境界があいまいな状態においての、意識の行方にも興味があります。

藤田
剥製はなぜ使ってるのですか?
リアルすぎて、私としてはそのリアルさに意識や意味がある気がします。

植松
白い動物の造形物と剥製を合わせたシリーズの作品を2003年から制作しています。
「生まれ変わっていく生命」をテーマにしていて、この場合、剥製を「命の入れモノ」という位置づけで、造形物を次代へつながる生命の象徴として用いています。
世界の中で流動している物質としての「命の入れモノ」をくぐり抜け、命が次から次へ、というイメージです。


藤田
なるほど、剥製はどきっとするんですよね。
FRPという無機質なものとの組み合わせのせいか、剥製を見慣れないせいか、私が動物がニガテっていうのもあって、なんでこんなナマモノぽいものを使うんだろうって思ってた。

植松
僕にとっては、自分の手で作った造形物のほうがより有機的に、ナマっぽく思えるのですが(笑)。
動物や昆虫は、僕自身が昔から好きなので、作品に現れるのも自然な流れに感じています。
最初に作った、植物が人のような立体から生えている作品だったり。
2002年に作った《その熊は輪廻を願う》という作品では、熊の口からへその緒が伸びあかちゃんがつながってるんですけど、剥製を使った作品と同じく、「つながり」をテーマに生まれた作品です。
社会、それは美術だけじゃなくて、誰でも思うことだけど、生命との「つながり」、人との「つながり」、社会との「つながり」を表現したいと思ってて。
意識の中で感じるそれらの形は、時代とともに変わってきている気がするんです。
自然や生命の連続性のもとに、境界が薄れた巨大な複雑系を、もう一度再編したいという感覚です。


藤田
その作品形態、つまり立体か写真あるいは平面、という方法に関して、こだわりはあるんですか?

植松
大学時代の授業で、コリングウッドの方法論の授業を受けて、うんうん、と聞いていたのを思い出しました。
方法はあとからです。
立体は、造形屋でのアルバイトで、写真作品は、カメラマンの荷物もちからと、いつも作りたいものが決まってから、学んでいます。

 
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