toppeople[寺島みどりインタビュー]
寺島みどりインタビュー


そしてこの先へ

藤田
今年の京都芸術センターでの展示では会場壁面全部を使った大きな絵も描かれていますね。これはまた違った新しい挑戦だったのですか。

寺島
新しい挑戦というよりは、自分の実力の確認と位置づけています。
確かにここまで大きい規模のペインティングはしたことがなかったので、「新しい事をした」ということになるとは思いますが、私の心構えは、自分の実力を確かめてみたいというものでした。自分でもわからないほどの大きな画面に向かった時、小手先や観念だけではどうしようもない、構成力や技術力、体力、精神力、調整力などがそのまま現れてくると思ったのです。

藤田
結果はどうだったんでしょう。

寺島
技術的な面では問題だらけだったのですが、終わったとき「私は絵を描いて行けるかもしれない」という、これまでになかった自信ができました。今までになかった感覚です。私にとっては揺るぎない感覚です。
それから、私がこのプランに込めたもう一つの大切なことは、絵画ってこんなに面白いんだと伝えることでした。それは自分が絵画からもらった大切なものです。公開制作というかたちは、一人だけで制作するのとはまた違った感触でした。お客さんが出たり入ったり、監視員の人が話しかけてきたり、リピーターさんがずっと通ってくれたり。最初は「できるのかな?」というよう目で見ていた方も、仕上がり前にはお菓子を差し入れして「がんばって!」と言ってくれたり。絵画の力というものを改めて感じました。


《見えていた風景−記憶の森−》公開制作風景 壁の高さが 3.5m、幅は四面あわせて 30m 2010 年京都芸術センター 撮影:表恒匡

藤田
ワークショップもされてますよね。

《奈義町現代美術館でのワークショップ風景》2009年

寺島
きっかけは奈義町現代美術館で「ワークショップをしませんか」という話をいただいてからです。それまでは、ワークショップをすることに興味がなかったんです。自分に必要なことか、とか考えてしまって。でも、奈義町では「やります」と即答しました。何かありそうな気がしたんです。
初めてのワークショップでは「大きい絵を描こう」というテーマで、風景から色や形を見つけてきて、参加者全員で重ねて描いていきました。そうしたら、大人も子供もすごく楽しそうだったんですよ。
わいわい楽しかっただけかもしれないですけど。
そこで「絵画をストレートに楽しむ」ということに気づかされましたね。あと、一人でアトリエで絵を描いていたのでは分からなかったことがいろいろ見えてきたんです。
それからワークショップを積極的に引き受けるようになって、今回の御殿山生涯学習美術センターでのワークショップは、本当にやってよかったものだと感じました。これからも続けていきたいです。

藤田
これからの寺島さんのあるべき姿、とは何でしょうか?

寺島
あるべき姿......。
年齢的に「もう形が固まって来てもいいだろう」と言われることもあるのですが、まだ全然これからだとしか言いようがないです。
さすがに始めの頃のように何もわからないという状態ではないですが、「私はこういうものを描く」というのが見えてきたので、それを続けていくために、やらなくてはいけないことや確かめなくてはならないことがたくさんありますね。

藤田
それはどういうことですか?

寺島
絵を描く技術力、道具の扱い方、絵を見る目も鍛えていかなければならないですね。まだまだ知らないこともいっぱいあります。新しいものだけでなく、これまで見てきたものを新しい目で見ることも大切だと思っています。今まで見えなかったものが見えてくることもあるでしょうし。
作家として発展して、広がっていくべきだと思うんです。
どこかの状態で満足することなく。最終的には制作をずっと続けていく、というのが私のあるべき姿でしょうか。

藤田
私は寺島さんの作品を見て、塗りも色も全部ですけど、女性らしさを感じる、快感なんです。
男の人の意見は分かりませんが、こういう強い意志を持った女性っていいなあって思うんです。


《奥庭|Okuniwa 》160.2x160.2cm | acrylic on canvas


《奥庭− fever−|Okuniwa -fever-》 80.3x80.3cm | acrylic and oil on canvas

寺島
ありがとうございます。そう言っていただくと、自然な表現が出来ているのかなと思えて嬉しいです。
自分が女性だからできることってあるかもしれませんね。あくまでも男性の対局にあるものとしてではなく。戦略的には何も考えていませんけど。


藤田
関西で制作するメリット、デメリットはありますか?

寺島
自分の満足いく仕事をしていれば、自分の求める場所に行けると信じています。私はこれまで、幸いなことに自分が求められる場所ばかりで仕事をさせていただいてきましたし、そういった場所が、東京であっても関西であっても海外であっても、その時の自分に合った場所だと思っています。
関西のメリットといえば、東京よりもスタジオが確保しやすいことは大きなメリットじゃないでしょうか。とても重要なことです。


藤田
今日はいろいろなお話、ありがとうございました。またこれからのご活躍も楽しみにしています!

 
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