toppeople[寺田就子インタビュー]
寺田就子インタビュー


《あの日の風》、2006年
《中空宙ーいつもの中》、2004年
  《中空宙ーここの長さ》、2005年   《空を見下ろす》(部分)、2006年

素材選びは友達探しに似ている

寺田 
子どもの頃から浮かびたいという願望がありました。


藤田 
浮かぶ?飛ぶんじゃなくて?

寺田 
そう、空を飛びたい人はたぶんたくさんいてたと思うけど、私はみんなにばれないよういこっそりと2〜3cm浮かんでいたいと思ってました。ばれないようにかすかに浮いてるのって、かなり緊張感がいるんです。でもそれだけでなく、楽しんで浮いていたい。たぶん作品に関しても同じなんです。


藤田 
それで浮いてるのね!

寺田 
学生の頃は重力が溶け込んだような、浮かんでいるような感じがする作品を目指していました。今はそれに加えて、見たときにこっそりと何かを感じてもらえるようにと心がけています。



 
 
 
《空に思う》、2006年
 
 
《澄んだ にごり》、2006年
 
 
《ふたくちめの雫》、2007年
 
 
《リアルな輝き》、2007年
 
 
《水滴をおよぐーIII》、2007年
藤田 
そっか、それがもしかしたら「計算」してると思っちゃうことなのかもしれない!!さっき透明なものが好きって言ってたけど、素材はどうやって選ぶんですか?

寺田 
私が気に入ったもの、好きなもの、気になったものを選びます。

藤田 
そりゃそうでしょ!とツッコミたくなりますね。

寺田 
そう(笑)、たくさんいてる人たちから、友達になる人を捜すのと似ている気がします。もし人間だったら友達になりたいなあ、きっと友達になってるはず、と思う素材たちを選んでるんです。


藤田 
ほぉ。それでスーパーボールや分度器だけでなく、プレパラートとかの理科の実験道具とかも登場するんですね。大変でしょう、こういうの専門店しかないから。

寺田 
そうですね。素材選びは日々行ってます。基本的にはストック用にインターネットとかホームセンターとかで買うんですけど、たまに作品を作り始めてから探すときもあります。そんなときは、イメージやサイズが決まっているので、ぴったり合うものを探しまくります。


藤田 
聞いていると大変そうですね。

寺田 
分解できるとか、そのときどきで条件も違うので、手に取ってじっくり観察します。世の中たくさんの素材があふれているもので、意外とぴったりのものが見つかるのです。


藤田 
そういえばこの間、地元が同じという造形作家さんにテキストを書いたのですが、その一行目に「作り手にとって素材とは、自分を表現するための最大の化身ではないだろうか」って書いたのを思い出しました。

寺田 
化身というより友達になれるか、ということかな。あと今までの記憶も基準になってるかも!たとえば、透明なガラスやプラスチックを選ぶのは、子どもの頃から不思議だなぁと思いながら覗き込んで育った記憶が残ってるから。チープなものを選ぶのは、自分の回りにはくだらないものばかりしかなかったのに、ほんとに、もしかしたら今以上に、きらきらと輝いた世界が広がってたから。作品に使うことで、懐かしい記憶を伝えたいのではなくて、こんなものでもこんな風に見えるんです!と伝えたいんだと思う。

藤田 
最後になったけど、寺田さんは2つの展覧会を控えてますね。1つめは、11月28日〜12月9日、「small-ness」というタイトルで、京都のむろまちアートコート(池坊短期大学内)。2つめは、12月8日〜13日、「PARTY」というタイトルで、大阪のLADSGALLERY、主催がフィード・ザ・チルドレン日本委員会というところですよね。そんな多忙な年末を送る寺田さんの野望を聞かせてください。

寺田 
よくないことなのだけど、先のことを考えるのがかなり苦手です。しかも野望がありません。


藤田 
ええっ!まあ、分からなくはないけど。

寺田 
というか、ほんとはあるのかもしれないんだけど、はっきりと言葉にできる目標ってどれもちょっと違う気がしてしまう。子どもの頃は、この学校に行きたいとか、分かりやすくて言葉にしやすかったのに。もっと納得いく作品を作れるようになりたいとは思ってます。作品から私が想像できるような作品、ていうのかな。
もっと意地悪そうな作品ていうのかな。野望探ししながらがんばります。


藤田
今日はアトリエまでわざわざ押しかけてごめんなさいでした!でもちょっとは読者に伝わったかな・・・。どうもありがとうございました。
 
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