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[谷口顕一郎インタビュー]
谷口顕一郎インタビュー
FAHRSTIEG 4-6 Hamburg,Germany 2005,Stainless steel,28.7x236.6x0.2cm work in cracks, extended state
凹みを変換していく事
木坂
モチーフの「凹み」は、自分で作るんじゃなくて、あくまでも探して見つけるんですよね?
谷口
そうです。
木坂
自分で作ってもダメ?
谷口
うん。スタジオの壁をこわして、のみを打って自分で凹みを作ってみたこともあるけど、それだと違うって気づいた。人間の作れる形って絶対に決まってるような気がする。
木坂
じゃあ、凹みの「採集」は日課みたいな感じ?普段意識しなくても見てる?
谷口
意識しなくても見ているし、常にすごい凹みに出会いたいと思ってる。例えば、毎日ドローイングを描く作家って、自分の探してるものを見つけたかったり確認する為だったりするんだろうけど、ぼくにとって、凹みを探すのはドローイングに近いかもしれない。
凹みにたくさん出会って、「あ、これいいな」「これは彫刻作りたい」とか、選別するのも訓練なのかな。
Brunnenstr.10 Berlin #1 2007, Plastic, 49x96cm work
in cracks, extended state
Hecomi-Brunnenstr.10 Berlin
木坂
形を忠実に再現するのに、石膏で型取りとかしてないんですか?
谷口
してない。流し込んだら、そこに「厚み」がでちゃう。
木坂
立体感出るってこと?何かの痕跡である、ってことが強調されますよね?
谷口
流し込むと立体感も出るし、重々しくなるかもしれない。
木坂
レディメイドとか、外注して出来上がったものも作品と呼べますけど、自分でやることに意味があるっていう事?
谷口
そうですね、見た目にはわからないかも知れないけど。自動的なギザギザと、意図的に切り取ったギザギザは全く違う。作品がぐっと力を持つのかな。
木坂
凹みの形を写し取ると一口に言っても、受動的ではない、と。
谷口
凹みはただのモノの形。僕は、凹んでる部分のシルエットだけトレースする。その段階で、まず凹みを自分なりに消化してる感覚があります。
それで、ボリュームとか深さとか色とか抜きにして、形だけ浮き上がらせた状態にして見てみると、すごく違ったものに見える。
木坂
トレースしてた時とはイメージが違うものになる?
谷口
そう、全然違う。トレースしてる時は自分ではよくわかってない。で、それをプラスチックで作ってもまたちょっと変わる。厚みが出きて固くなって、変わって、変換していく事が楽しい。
木坂
そうか。ワーク・イン・プログレスみたい。
谷口
ドキドキしますね。だから、最初から「この凹みカッコイイ」って思ってトレースして切り抜いたものって形に起こしてみると、意外と「こんなもんかノ」って期待はずれのものある。
逆に、「なんか簡単そう、でもちょっとやってみよう」と思ってトレースしたものが、意外とその凹みに面白さが出てきたりしてわからない。
木坂
多くのアーティストは、まず、自分の中にあるイメージを視覚化して具現化することに注力を傾けますよね?谷口さんはそれとは少し違いますね。
谷口
凹みを「見つける」ことと、「畳む」っていう二段階を踏んでるって言える。凹みっていう既に出来上がった形があって、それと同じ形を作ってるでしょう?それだけで終ったら物足りないんです。
僕はもっと新しい形を見たいし、できればその新しい形に自分が関われればいいなと思ってる。色んな形を見てみたいがために、畳む時に蝶番を使ってるんじゃないかなって思うようになってきた。
蝶番だからすべての角度に動くんですけど、それって一個の彫刻から無限に形が作れるってことで、作品は実験装置でもある。
与えられた形から自分のかたちを作っていく。自分に課題を「これでつくれ」って課してる部分もあるかもしれない。
木坂
なるほど。谷口さんの作品は、凹みを採集した土地の歴史とか社会的背景とか、そういうことは作品にコンテクストとして敢えて付加していないのが、今は逆に新鮮です。
谷口
そういうのを気にした頃もあったんだけど、今は全く興味がない。
だからこそ、凹みをドラマチックに仕立て上げるのではなくって、ただただ凹みを明るく、形のカッコよさを見せたい。僕は根っからの「造形作家」だと思う。
木坂
造形・・・、久しぶりにその言葉の意味を改めて考えました。個展、楽しみにしています。
今日はどうもありがとうございました。
展覧会情報
谷口 顕一郎 Hecomi Study #15
2009年1月9日(金)〜1月23日(金)
AD&A gallery
(大阪市西区)
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インタビュアー、プロフィールや近況など。
木坂 葵(きさか あおい)
1978年生まれ。
神戸大学文学部卒業。
この冬より、
『水都大阪2009』
アート部門キュレーター。
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