坂井淳二のこれから
藤田
学校で教わったやりかたではないのでしょうか。
坂井
大学での僕は、版を刷ったら、乾いてから次を刷る、と教えています。
僕自身の制作では「インクは乾いてないときに刷る」というのがポリシーです(笑)。
版数がものすごいので、制作に時間が掛かるということもあるし、インクがぬめぬめしているほうがきれいだと思うので、そのぬめぬめした感覚を残したいんです。
藤田
それ、すごいですね。
というのも、プリンターのほうがきれいだし、印刷技術もすごいなかで、版画の役目とか役割、存在意義自体がいまとても揺らいでるんじゃないか、と私は思っていまして。
坂井
だからこそプリンター、刷り師には任せられないんです。
僕はイメージよりも版を重ねていく、という感覚です。
藤田
そのこだわりは必要なのでしょうか。
坂井
もちろん技術の進歩は分かってるけど、インクの質感とか版を重ねていく均質じゃないこととか、僕はそういうことを重要視したい。
藤田
プリンターのメーカーが「均質にインクを盛りますよ」の逆、ですか。
坂井
そう、均質で再現性がいい、テクニックがある、イコール、いい作品、と僕は呼びたくない。
藤田
例えば「名刺を活版で刷ってます」と言われても、「これ1万円のワインです」と言われても、分かる人は分かる、みたい状況が今だと思うんです。
坂井
その話は極端な気がしていますが、どうなるのか僕も気にしています。
藤田
これから坂井さんはどうなっていくのでしょうか。
坂井
版画家、と自称するのは少し抵抗があるのですが、リトグラフは続けて行きます。
まだまだ可能性があると思っていますからね。
藤田
これからも見て行きますし、一緒に考えて行きましょう。
今日はどうもありがとうございました。 |
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