toppeople[大崎のぶゆきインタビュー]
大崎のぶゆきインタビュー
water drawing-ファンタム-/2008 インスタレーション 個展"ファンタム"/ギャラリー16

water drawing- ファンタム-(部分)/ 2008 映像12 分(ループ)


あいまいなものはなんだろう、溶けていくってなんだろう

 
Landscape/2004 プラスチックコップ、計量カップ、その他プラスチック製品 リモネン水溶液、蛍光灯、その他 150cm×200cm×200cm インスタレーション
Landscape(部分)/2004 リモネンによって溶けていくプラスチックコップ
 
  on the world / 2008 ワックス、キャンドル芯、その他 48×80×80cm
 
  water drawing(monotype)-Phantom-/2008 紙、水彩絵の具、スパンコール等(モノタイプ/水面を転写)68×51.5cm

藤田
(ファイルめくりながら)これはなんですか?

大崎
プラスティックのコップとかでつくった街の立体作品に、プラスティックを分解するリモネン水溶液を流しこんで、溶かしていく作品です


藤田
これは?

大崎
蝋燭(ろうそく)でできたシャンデリア《on the world》という作品で、火をつけたら全部溶け
ちゃうんです。
「溶ける」ということは、自分が思い込んでいるものが別のものになっていく、自分の認識があいまいになること、だと思うんですね。
溶ける系やその他の色々な作品を同時並行的に作りながら、もともと僕は絵や版画といった平面作品を手がけていたため「溶ける絵を描きたい」と思い始めたんです。

藤田
溶ける絵?よく垂れるような絵とかあるじゃないですか、そういうのですか?

大崎
垂れてもいいんですが、溶けているような絵を描きたいんです。
いまだに素材や技法の実験をして試行錯誤しています。


藤田
画材は?

大崎
油絵具もアクリルもカシューもペンキも、といろいろ試していますが、今のところまだまだです。
ドローイングだと、絵具が乾く前の流動的な状態はいいのですが、絵具が固まってしまうと何か違うんですね。


藤田
たしかに「溶ける」という状態を維持するのは難しいですね。

大崎
マーブリング」ってありますよね。
それで、マーブリングのように水面に絵を描いたら「溶ける」絵になる、その溶けるさまを撮影しようと思いました。
最初に写真の作品をつくったんですが、より感覚的に近い作品をつくりたくて絵を描いて溶けていくようすを撮影した映像になったんです。


藤田
えー、そうやってつくってるんだ!!アニメーションかと思ってた。

大崎
絵の描ける半透明なシート、ティッシュとかオブラートみたいなものに、水性のペンや絵具で絵を描いて、水面に浮かべて、シートが溶けていくのを撮影しています。
コマ撮りではなくて、ただたんたんと撮っているだけなんですよ。


藤田
じゃ、絵が切れていったり、その切れ目から回転したりとか、そういうのって加工してるんですか?

大崎
表面張力で動いたり見えたり、シートが裂けたりしてるだけです。


藤田
ええっ・・・。
それは大崎さんの理想の溶け方なんですか?

大崎
理想の形というのはなく、僕の感覚的な、溶けていくさまに「この感覚がいい」ということを求めています。
マテリアルと表現とコンセプトの合致がないと作品にならないんで。


藤田
描かれている対象が、京都芸術センターで私が見たときは「星座」で、文化庁メディア芸術祭で発表していた作品は「女の子」ですが、意味はあるんですか?

  water drawing(Photo)- ファンタム- / 2008 ラムダプリント、アクリルマウント 90cm×125cm

 
  water drawing(Photo)- ファンタム- / 2008 ラムダプリント、アクリルマウント 90cm×125cm

大崎
「星座」というのは、古代の人が点だけを見てそれをつないで「みずがめざ」とか世界をつくっていたじゃないですか?
その点をつないで形をつくるというあいまいなことが、僕がやりたいあいまいなこととリンクしているなと思って。
「女の子」の作品は、変な話をしてもいいですか?


藤田
ええ、どうぞ。

大崎
アングラ系のネットニュース見てたらハリー・ポッターの子役のスキャンダルがあったんですね。
子役というのは、リアルに成長しているんです。
でも自分の中では子役のままだし、そのまま生きつづけている。
そういった子役たちのイメージを幽霊、ゾンビ、つまり死なない存在は、僕のあいまいな世界と結びつくと思ったので、そういった女の子を描いているんです。


藤田
ああ、なるほど。

大崎
最近は「溶ける」だけだとみんながCGと思うので、物質的な要素も取り込んでいこうと思い、スパンコールやビーズをつかって、沈んだり、拡散していくような作品をつくっています。
あと本当にマーブリングする作品、つまり、水面で溶けている最中に紙を載せて、水面を紙に写し取る作品もつくっています。


藤田
版画に戻ってますね(笑)。

大崎
僕自身、版画をしている/していないに関わらず、本質的に「版画家」だと思いま
す。
そもそも「版画」と一口にいっても、表現としては木版、銅版、石版、シルクといった技法があって、まったく違う素材やつくり方で出来上がっています。
では、おしなべて「版画」といった場合複製できるとか、筆とキャンバスみたいに直接的なものではなく、間接的な行為であることで見えてくる表現といったことが版画の核になる。
そういった思考で考えると「版画」とはいろいろな意味があると思う。
僕にとっての「版画」とは、技法、素材の問題でないです。
版画家が多色の版画をつくるとき、同じイメージで色の違う版をつくって重ねて版画作品をつくりますが、僕も自分のイメージを3版、4版と版のように分解して考えたいんです。
「表現したい事を、どういった方法で表現するかを考える」ことが、そのものが僕にとっての「版画」なのです。
立体や映像やその他のメディアであっても、客観的にとらえて表現することが「版画家」だと思うんですよ。
それを踏まえて、僕が求めているのは作品のイメージ(見ため)ではなくて、作品そのものの存在の在り方です。

 
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