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大畑周平インタビュー


ペノーネでボディブロー

大畑
デザインは好きだったけど、仕事にするには向いてないというか、やはり自分がデザインすることよりも、作り手によって出来上がるものの違いを見出したり、そういう所に興味があったんです。
そこから形について学びたいと思って、彫刻科に入りました。


藤田
実際行かれてどうでした?

大畑
僕が行った東京造形大学は、
入学すると先ず自分が作る道具をゼロから作ったり、大きな石を二人で半分にして、石を削って正六面体を作るという課題があったり・・・。
そうやってクラスの仲間たちと打ち解けていくのだけど、かなり特殊な世界だったんです。


藤田
そりゃすごい!石って、削り間違えると小さくなりそう。
そういう課題をこなして・・・まだ火を食べるとこまでたどりつく過程が見えません(笑)。

大畑
僕は課題をこなしていくうちに、例えば人体像を造るという授業で、「なんで人は人を造るんだろう」という疑問と同時に、形を作る素材そのものに興味が生まれました。
粘土なんかだと、形を作る前に芯棒を用意しないといけないとか物理的な制約があったり、表面についての作業でも、硬い状態のものや柔らかい状態のもので作る形が気になって。
板で叩いたり、ひっかいて削れた形が生まれたり。
どれも、その形が発する「言葉」が違うんです。
「言葉」、つまり発見や形を作るプロセスそのものが、当時の僕にとって重要だったんです。
僕は美大に入っていてにも関わらず、美術に対する興味もなく、まして彫刻家になろうとも思っていませんでした。
でも大学三年の夏にジョゼッペ・ペノーネという作家の作品を豊田市美術館で見て、表現する事は何かのイメージに向かって形を作るだけではなくって、物事のプロセスそのものも表現になることを知り、自分も何か出来るんじゃないかと思い始めました。


藤田
ペノーネというと、アルテ・ポーヴェラの作家ですね。

 
 

大畑
はい。ペノーネの作品は、派手さはないので見たときより、後から、ボディブローを受けたように響いてきました。
ふとした時に、作品の事を思い出したりして、考えたりするうちに、どんどん自分の中で彼の作品の存在が大きくなっていったんです。

へその穴が開いた壺?

藤田
素材との関わりを求めて、まずはどういう作品を作ったのですか?

大畑
焼き物です。


藤田
え?

大畑
自分の体の表面の型をとって、その素材を元にして壺をつくったんです。へそ部分に穴を開けた壺です。


藤田
へそがあるんですか!!

大畑
トラウマなのか、たとえ殺されるときでもへそは守りたいという願望があって(笑)。
首から下、股から上の身体部分、大事なアソコ部分もちゃんとありますよ。


藤田
そんなに人間の表面積ってあるんですね。

大畑
そうですね。この壺が「身体的なものとモノとの関係」を気にした、最初の作品になります。
ちなみに女性のものも制作しました。


藤田
その壺の作品は、「身体とモノとの関係」としては分かりやすいですね。



それから火を使うようになった

   
 
大畑
それから例えば携帯電話をけん玉に見立てた《strap》とか、手相を矯正するための指輪《ruka》とか、身体とモノをつなぐような作品を模索していました。
あるとき、何かを変化させるモチーフとして、「火を使うこと」を思いつきました。

藤田
火が好きだったんですか?

大畑
もちろん火そのものの魅力ってあるから、好きですよ(笑)、それに火は、創造的であり、破壊的でもあるじゃないですか。
ポンポン船という昔ながらのおもちゃの船を使った《Like a bugle》という作品で、はじめて火を使いました。彫刻は動かないものが多いですが、火を載せることで、動く彫刻になったんですね。


藤田
ほお。ドイツで発表されているお香で作られたお金の作品《coin》も、火を使いますよね。

大畑
そうですね。お香は燃やすと灰という形でそのまま残ります。それがおもしろくて。
形や素材の意味、目に見えることの不思議さを探りたくて作りました。
チョコレートの作品は、食べることについて扱っていて、料理するときには、食材を加熱するために火がガンバってくれます。
でもいざ食べる時には何事も無かったかのように料理だけがポンと出てきたりするじゃないですか?
火そのものをもちろん僕たちは食べることは出来ないけれど、火の痕跡を食べてるというような不思議さを感じませんか。
そういうモノとの関係性を作品にしています。


藤田
ああ、確かに。火がボーボーしてて、その熱で温かくなったものを食べてるんですよね。
面白いパフォーマンスですね。

大畑
かといって、僕はパフォーマンス作家ではありません。




   
 
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