toppeople[西野達インタビュー]
西野達インタビュー


《豆腐仏陀と醤油の後光》 撮影:福岡栄(名古屋市美)

「こうあるべき」その姿を覆すことから始まるもの
INTERVIEWER 友利 香

現在ベルリンを拠点に、世界各国で活躍中の西野達さん。
パブリック空間に思いっきりの「プライベート空間」を提供してくれる彼の作品には、世界のどんな人も不意を突かれてびっくり仰天!
日本でも、水戸芸術館や横浜トリエンナーレ、森美術館などのプロジェクトで、彼の魅力の虜(とりこ)になった方たちも多いはず。
西野さん曰(いわ)く、「俺の創作のコンセプト・キーワードは、“笑い・暴力・セクシー”」
…うーん、こんな面白いことを考え出す脳みそ、思考回路って!一体どんな方でしょう。
あいちトリエンナーレ出品のため西野さん帰郷という朗報に、早速、私は熱烈ラブコール!


その放胆な発想の源は?


友利
初めまして。西野さんのあいちトリエンナーレの作品は好評ですね。
西野さんのお生まれは名古屋なのですか?

西野
そうだよ、名古屋市内です。今はベルリンに住んでるけどね。


友利
西野さんは、空間設計というか建築みたいな作品が多い気がしますが、元々は彫刻?絵画ですか?

西野
大学は武蔵野美術大学で絵画をやっていたよ。小さい頃、絵を描くことが好きで、唯一自分から進んで行きたいと言って始めた習い事が絵画教室だったんだ。ピアノとか習字とか他の習い事は続かなかったけど,アートだけは今も続いているな。


友利
そして大学を出られてすぐに、ドイツの大学に行かれるのですね。

西野
ムサ美を出たころアートに関して袋小路に入っていて制作する気が起きず、結局1年間は遊び回っていただけ。そうこうしているうち、芸術という概念が生まれたヨーロッパで、作品をじかに見ながら振り出しに戻って芸術の歴史のおさらいをしたくなってきたんだ。ヨーロッパの美大に再入学することなんて思ってもみなかったから,無理やりコネを作って最初は寿司屋の皿洗いとしてドイツに渡った。結局は1年半後にミャンスターの美大に入るのだけれどね。
俺はドイツの日本人社会で働いていたのでドイツ語がわからないから,美大では作品で自分を主張するしかなくなる。言葉を覚える時間があったら制作した方が有益だと思ったしね。最初1日16時間は学校のアトリエに籠って制作してたんだけど,結局は学校のアトリエに部屋を建てて美大に住むようになったよ。部屋に帰る時間がもったいなくなったんだ。


友利
こうして、今の「西野さん」があるわけですね。もちろん、西野さんには、元々そういう素地(今の作品のような思考回路)はあったのでしょうけど、それを引き出すドイツの地力ってスゴイですよね。
戸外での制作をさせた事件みたいなもの、日本にいる時の思考回路を逆流させるような事件やことがらはありましたか?
ドイツ、あるいはヨーロンパのどんな気風がそうさせたのですか?

西野
ムサ美では絵を描いていたけど,もう一度学生するんだから違う事をしようと考えたんだ。絵画はそれなりに理解していたしね。
絵は描くけれども、パフォーマンス、彫刻,インスタレーションにも手を付けて行った。新鮮で面白かったよ。その彫刻で当時ケルンの有名なギャラリーで展覧会をしたんだけど,オープニングをのぞいて観客が誰も来ない。来たとしてもアート関係者だけ。そんな狭い世界で作品を見せるのがばかばかしくなって,ギャラリーを出て作品を見せようと思ったんだ。それが翌年の1997年の俺の最初の屋外プロジェクト「obdach」になるわけ
美大のあるミュンスターは「Sculpture Project」という10年に1回の世界的に有名な屋外現代彫刻展が開催される町。ついこの間まで全く気づかなかった俺がどうかしているけれど,開催年ではなくても町の屋外のそこら中に現代彫刻が残っているから,知らないうちにミュンスターという町に影響されたはずだと思う。
屋外での作品のアイデアが浮かんだとしても,規制の厳しい日本だったら実現はまず不可能。偶然ドイツだったけど,現代美術好きなドイツ人は規制に特例を作って作家を支援しようとする。多分それは Sculpture Project や、半世紀以上も続く Documenta といった国際芸術展の影響じゃないかな?子供の時からそういった世界最高レベルの現代アートを見続けているのだから,ドイツ人に影響を与えないはずはない。だから俺はよく言うけど,トリエンナーレやビエンナーレはとにかく続けていって欲しいという事だね。



 
  1234 次のページへ

西野達(Tatzu Nishi)
http://www.tatzunishi.net/

1960 名古屋生まれ
ドイツ・ケルン在住
1989−97 ミュンスター美術アカデミー(ミュンスター、ドイツ)
1981−84 武蔵野美術大学(東京、日本)


主な個展
2009 「Lugares Comunes Project」 (ボゴタ,コロンビア)
「ばれたらどうする」 ARATANIURANO (東京)
2007 「Studio Exhibition」 広島市現代美術館
「Tatzu Nishi」ブラム&ポー (ロサンジェルス)
「MAM プロジェクト」 森美術館 (東京)
2006 「天上のシェリー」 メゾンエルメス (東京)
2005 「Cabinet 3, キャビネット3」 ゲント市立現代美術館 (ゲント、ベルギー)
2004 「Garage ガレージ」(ケルン、ドイツ)
「heute mir morgen dir 今日は俺、明日はお前」 ルイス・カンパーニャ・ギャラリー(ケルン、ドイツ)
「Cafe Moon Rider カフェ・ムーン・ライダー」 (ダブリン、アイルランド)
2002 「Engel 天使」 リットマン・カルチャープロジェクト (バーゼル、スイス)
2001 「Der Neunsitzer 9人乗り」 ユンゲ・クンスト (ヴォルフスブルク、ドイツ)
「Interventionen 24 干渉24」 シュプレンゲル・ミュージアム (ハノーファー、ドイツ)
2000 アートテーク (ケルン、ドイツ)
1999 Das habe ich gar zu gern 好きで好きでたまらない」 ドルトムント・キュンストラ−ハウス (ドルトムント、ドイツ)
1998 「Mir ist seltsam zumute 妙な気がする」(ブレーメン、ドイツ)
1997 「obdach 宿あり」 (ケルン、ドイツ)
主なグループ展
2010  「La Bienal de Arte Paiz」 (グアテマラシティー、 グアテマラ)
2009  「Twist and Shout」バンコックアート文化センター (バンコック,タイ)
「Kaldor Art Projects」アートギャラリーオブニューサウスウェールズ (シドニー、オーストラリア)
「Estuaire 2009」(ナント/セント-ナザレ、フランス)
2008 「Scape 2008 Christchurch Biennial of Art in Public Space」(クリストチャーチ、ニュージーランド)
2007 「Estuaire 2007」 (ナント/セント-ナザレ、フランス)
「Tatort 犯行現場」 (パダボーン、ドイツ)
「Köln Skulptur 4」  ケルン彫刻庭園 (ドイツ)
「MDE07」 メデジン、コロンビア
2006 「愉しき家」 愛知県美術館 
「Okkupation  占領」 (ベルリン)
2005 「Ecstasy エクスタシー」 ロサンゼルス現代美術館 (ロサンゼルス、アメリカ)
「Projekt Migration 移住計画」 ケルン美術協会 (ケルン、ドイツ)
「Yokohama 2005 : International Triennale of Contemporary Art 横浜トリエンナーレ 2005」 (横浜、日本)
「Skulptur-Biennale Muensterland 2005 ミュンスターラント彫刻ビエンナーレ2005」 (ボルケン、ドイツ)
2004 「1st International Biennial of Contemporary Art of Sevilla 第1回セビリヤ国際現代
美術ビエンナーレ」 (セビリヤ、スペイン)
Blum & Poe ブラム&ポー・ギャラリー (ロサンゼルス、アメリカ)
2003 「At Least Begin to Make an End せめてそろそろ終わりにしよう」 W139 (アムステルダム、オランダ)
2002 「Licht Routen 光の軌跡」 (リューデンシャイト、ドイツ)
「Liverpool Biennial リバプールビエンナーレ」 (リバプール、イギリス)
「Verzauberung durch Irritation 刺激の魔法」(アーレン、ドイツ)
「hell-gruen 明るい緑」(デュッセルドルフ、ドイツ)
「日常茶飯美−Beautiful Life? 」 水戸芸術館 (茨城、日本)
2001 「Uni Kunst Tage 大学美術週間」 (ミュンスター、ドイツ)
「Poëziezomer ポエツィーツォーメ ポエジーの夏」 (ワトー、ベルギー)
「direttissima ディレティシマ 一直線に」(ミュンスター、ドイツ)
2000 「Kunstbaden クンストバーデン(芸術浴)」 (ヴィースバーデン、ドイツ)
「Continental Shift 大陸移動」 ルートヴィヒ・フォーラム (アーヘン、ドイツ)
1999 「b-l-i-k-o-p-e-n-e-r 缶切り」 ドルトレヒト市アートセンター (ドルトレヒト、オランダ)
1998 「Lieblingsort:Köln ケルンのお気に入りの場所」 (ケルン、ドイツ)
 「East International イースト・インターナショナル」 ノーウィッチ・ギャラリー (ノーウィッチ、イギリス)
*展覧会の日本語タイトルは、参考表記としての仮題になります。
西野達さん 
 



 

topnewsreviewscolumnspeoplespecialarchivewhat's PEELERwritersnewslettermail

Copyright (C) PEELER. All Rights Reserved.