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中西信洋インタビュー
塑造の人
Nobuhiro Nakanishi Interview

中西信洋は、同一人物のものとは思えないほどの様々な表現をもつ美術家だ。
パルプを用いた塑造作品から始まり、最近では、鉛筆で線を描く行為のみで壁に作り上げられるドローイング、 時間の経過を撮影した写真の透明なスライドを並べたインスタレーション、そして、その発展形である映像作品などを発表している。
どのような問題意識が、この表現の多様さへと彼を導いたのだろうか。
「変成態―リアルな現代の物質性」展(gallery αM)への出品を準備中の中西に、インタビューをおこなった。

interview藤田千彩&textハガミチコ
《Stripe Drawing - Tokushima sky》 鉛筆、紙, 500 x 2017cm, 2008 現代アートによる徳島再見, 徳島県立近代美術館(2008.2.9-3.23) 撮影/森宮英文


  《Garden of Blank》 紙、 糊、 その他, 700 x 2000 x 500 cm, 2003
Nomart Projects #02_10 中西信洋展 空洞と空白, ノマル・プロジェクトスペース キューブ&ロフト, 大阪(2003.9.6 - 9.26) 撮影/金子治夫

 
  《Hole of Gap》 土, h 25 - 112 cm, 2004 Supplement, ギャラリーそわか, 京都(2004.5.15 - 5.30) 撮影/豊永政史

 
  《Layer Drawing - Cloud / Fog》 透明フィルムにインクジェットプリント, 100 x 100 cm x 100 sheets, 2005 The Exhibition of Artists in Residence Program 2005 / Autumn, transformation / metamorphosis, 国際芸術センター青森(2005.10.29 - 11.20) 撮影/山本糾

 
  《Stripe Drawing - Halation #01 - 21》 鉛筆、ベランアルシュ, 63.8 x 91.4 cm(set of 21 sheets), 2008 中西信洋展 Halation, ノマル・プロジェクトスペース キューブ&ロフト, 大阪(2008.3.22 - 4.19)
「人のようなもの」からの出発

藤田
こんにちは。唐突ですが、中西さんの作品を見ていて思うこと言っていいですか?
私は74年生まれですけど、同じくらいの年の人とかしゃべってると、「ガンダムが」とか「ひょうきん族が」という話が出てきます。
でも中西さんの場合は、もうちょっと違う世界な気がしますが、どうなんですか。

中西
ああ、そういうのはあんまり読んでなかったんです。
こちゃこちゃ工作したり、工事現場に入って這い回って遊んでたりしてました。
あと、ゴッホの農夫のデッサンがすごい印象に残ってたりして。


藤田
じゃあ、そういう所から美術の道に。
最初の東京造形大学ではどういうことをされていたんですか?

中西
東京造形大学の彫刻科はすごくアカデミックな大学なんですけど、1年生から4年生まで塑造ばかりやってました。3年生で「塑造コース」の方に進んだので。


藤田
じゃあずっと塑造をされていたんですね。

中西
でも大学3年生くらいのとき、家でドローイングや小さい人形作りを始めたんですよ。
ドローイングは毎日スケッチブック1冊分描いてましたね、筆ペン使って(笑)。


藤田
何を描いてたんですか?

中西
その時はね、「人のようなもの」を描いてたんです(笑)。
当時僕は大学で塑造をやっていて、人の形ばかり見ているうちに「人の形を見る」ということに興味を持って。
だけど、芯部を作って粘土をつけて内側から作っていくっていう事じゃなくても良いだろうなと思って、ドローイングを始めたんです。
線を描いていて、どこになったら「人の形」って認識できるだろうと思って。


藤田
なるほど。

中西
それがだんだん立体でもできるんじゃないかと思って、紙とか布とかで、ぬいぐるみみたいな人形を作り始めました。自分が着てた服とか古着の布から始めて、「ゴムを使いたい」、「皮を使いたい」っていう風になって。


藤田
へえ。

中西
ぬいぐるみって、必ず表面から作るしかないでしょ。
見たものや感じたものさえ残ればいいので、内側から作る必要は無かったんですよね。
ペラペラの表面だけのものができて、それも彫刻かなと思って。
京都市立芸術大学の大学院の入試では、その膨大なドローイングと、布で使った人形をポートフォリオにザクザク入れて持って行きました。
それで京芸に行くことになって。


藤田
そういえば京都市立芸大では、中原浩大さんが先生をされているんですよね。
中原浩大さんは、今度中西さんも参加されるgallery αMの「変成態―リアルな現代の物質性」展で、トップ・バッターで展覧会を開催されます。

中西
そうなんですよ。
今回の「変成態―リアルな現代の物質性」展でキュレーターの天野一夫さんは、彫刻の「物質の変容」ということをテーマにして、中原浩大さんを最初に持ってきて「中原浩大という人がやってきたことは何だったのか」と問うていると思うんです。 (今回展示されている作品は《ビリジアンアダプタ+コウダイノモルフォII》1989年制作、豊田市美術館所蔵)
絵画の事についてはいろんなところで書かれていますが、彫刻、特にもの派から先についてはあまり見る事がないですよね。
彫刻という言葉自体があまり使われる事がなくなってしまったような。
今回は積極的に彫刻という言葉を使うことで、これまでの彫刻で起こったことと今ある彫刻的なるものとを、一つの線でつなげようとしているんだと思います。
僕は6月からの展覧会に参加します。


藤田
京芸に行く人達にとって中原浩大さんの存在って大きいと思うんですけど、やっぱり中西さんが京芸を選んだのもそうだったんですか?

中西
大学を卒業してからどこに行くか迷ってたとき、とりあえず大学院を調べようと思って。
いろんな大学の先生の名前をメモして、東京都現代美術館の図書館でリーフレットとかをバーっと見たんです。そしたら京芸だけ異常なんですよ(笑)。
なかでも中原さんの作品は「なんだこりゃ?!」って感じで。
その当時はもう展覧会も全然やってなかったし、とりあえずわけ分かんないから「この人と話したい」と思って、それで京芸に行こうと思いましたね。

 
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中西信洋(なかにしのぶひろ)
1976   福岡に生まれる
1999   東京造形大学 造形学部 美術学科 類(彫刻専攻)卒業
2001   京都市立芸術大学 大学院美術研究科 彫刻専攻 修了

主な個展
2003   空洞と空白/ノマルプロジェクトスペース/大阪
2004   supplement/ギャラリーそわか/京都
2005   中西信洋 展 - 満ち溢れているもの - /INAXギャラリー/東京
2006   Saturation/大阪府立現代美術センター/大阪
2007   Halation/ノマルプロジェクトスペース/大阪

主なグループ展
2000   Boomerang Art Project in Kyoto/京都芸術センター/京都
2001   Boomerang Art Project in Bremen /GAK/ドイツ・ブレーメン
神戸アートアニュアル2001 /神戸アートビレッジセンター/兵庫
2002   Drawings 2002 /ギャラリーそわか/京都
2003   ドローイングと・・ /SAIギャラリー/大阪
2005   かわりゆく世界で transformation/metamorphosis/国際芸術センター青森/青森
2006   美術館ワンダーランド 夏の思いで 今を生きる/豊科近代美術館/長野
抽象再訪/京都芸術センター/京都
2007   六本木クロッシング2007:未来への脈動/森美術館/東京
Exhibition as media/神戸アートビレッジセンター/兵庫
2008   徳島再見/徳島県立近代美術館/徳島
VOCA展/上野の森美術館/東京
SENJIRU-INFUSION /Gallery Kasya Hildebrand/チューリッヒ・スイス

コレクション
森美術館

コラボレーション
2007   コムデギャルソンとのコラボレーションにより、映像作品を制作

中西信洋さん 

 



 

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