松野真知さん
酪農から「ART」への揺さぶり
友利
松野さん、アイスクリームを食べましょうか。牛乳はにおいといい、味といい、母性を強く喚起させる飲み物です。牛たちの人間への慈愛が体に入っていくというか・・・。松野さんの牛たちへの慈愛が体に入っていくというか・・・。
松野
そうですね、牛乳は血液によってつくられていて白くて、差はありますけど栄養素も母乳(人)と割と近しいものですしね。牛が何をどう感じているのかは解りませが、お腹が空いている時くらいは解りますね。(笑)生き物を相手にどう向き合って来れたかなということはよく考えることですよ。
友利
牛は「松野さん」とか「松野さんのお母さん」とか、人を識別できるのですか?
松野
もちろん解っていますよ。子牛は母が近づくと鳴きますし。牛にもみんな個性があって、隣にいる牛をいじめる牛もいます。牛って、人間とほとんど変わらないですよ。
友利
松野さんが牛の話をされる時って、「牛たちのことが可愛くてしょうがない」っていう表情ですね。
松野
可愛いっていうか・・・。牛は乳や肉の搾取として飼育されていますよね。僕は直接手を下す仕事ですし、でも家族のようにも接して世話をする訳ですが。うーん、口にし難いのですが畏敬と畏怖を合わせたような念、でしょうか。つくるということは自分一人だけのことでは成り立たってはいなくて、色々なこと抱えながら形になっているんですよね。
友利
これから松野さんの作品はどんなになるのでしょうか。
松野
このままの環境にいればそれは何をしてもその暮らしにいつも根が繋がっていますから、そうして生きている自分の血肉となっていることを直接的な行為で探って行きたいですね。
友利
そこです!酪農で汗を流していらっしゃる松野さんだからこそできるアートですね!
松野
小山に囲まれて離れ小島のようなところで仕事をしていて毎年、同じ仕事のようですが状況は不安定に変わっています。すると自分の置かれている場に目が向いてくるんですよね。それは世界と向かい合ってることを肌で感じるし、地続きで外と繋がっていて、時に開かれたものとして共有できるんじゃないかと考えています。だからこそ「ARTと農が繋がること」へ向かったんですね。直ぐ身の周りにそれと等しいことがきっとそのままあるんじゃないか、とも感じています。
友利
お話を聞いていて、今すぐにでも、松野さんの牧場に行きたくなりましたよ。これからも楽しみにしています。ありがとうございました。
※注:千草ホテルがプロデュースする「中庭プロジェクト」では、展覧会の会期中、作品にちなんだ特別メニューが提供され、シェフの腕と感性も楽しめます。今回は、松野さんの牧場で搾乳した牛乳を使ったアイスクリームでした。
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