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松本力インタビュー


「オワリ山の一日/Sitting in the Sunshine, Don't Know Where I Go.」(2000)
“心の揺り戻し”で
絵は描かれる

Chikara Matsumoto Interview

地方のアートを取り上げるPEELERにとって、東京も一地方にすぎない。
その東京で生まれ、育った松本力は、
ドローイングであったり、ペインティングであったり、アニメーションであったり、
さまざまな形態で表現を行っている。
私はそれを見たくて、感じたくて、
2010年2月28日、松本力の作品を見る+トークをするイベントを開いた。
当日は、松本力の作品には欠かせない音楽、オルガノラウンジのメンバー本多裕史のソロ名義「VOQ」のライブもあった。
今回はそのトークでの公開録音をもとに、再構成したインタビューである。

INTERVIEWER 藤田千彩


父親の気持ちを絵で探す日々


藤田
松本力さん(以下ちからさん)は、ごく自然につくったり表現しているように思えます。
ちからさんにとって「絵を描くこと」や「ものをつくること」とは、どういったことなのでしょうか?

松本
小さいころ、父親が僕に絵本をつくってくれたことがあったんですね。
絵本は、1ページめで終わっていて、その続きはいつか描かれるものだ、と思っていました。
父親にとって、僕は歳を取ってからの子どもでした。
フランクに物を聞けない、ジェネレーションギャップのようなものがあって、父親と僕の関係には少し距離がありました。


藤田
はい。

松本
父親は登山が好きで、山に登ったときに撮ったであろう写真を僕が見たことがありました。
その写真を見ていると、父が絵本の中に描いてくれたイメージが、自分の中にも見つけだせることに気づいたのです。
僕はそれを絵に描いては違う、描いては違う、という作業をやって、父の残したイメージを追随するような行為をしていました。
結果、どれも同質的に、並列するようないろんな絵が生まれていきました。
そしてそういう変化していく絵がアニメーションをつくるきっかけにもなったのです。


藤田
いわゆるアニメーションというのは、絵を動かすために、絵を描いて、その絵を消したりずらして再び絵を描く、という手法をとります。
確かに、ちからさんのアニメーションも、絵を描いて残していくんですけど、それは絵を残すためなのではなくて、同じ視点で前の絵とのつながりを描くために場所を移動する、そしてまた次の動きをつくるために描く、という連続ですね。
お父さまとの関係や気持ちのかかわりは、絵を通じてつながっていたのですね。

松本
現実はちょっとコミュニケーションがうまくいかないのに、父親の話や態度が、その絵によって補われていたところもあって、心の中でひとつの「道」になった。
そういうことが触媒となって、自分にとって父が「初めての大人」、「ひとりの人間」に感じたのは確かです。
先ほどお見せしたのは「オワリ山の一日」という映像です。
オワリ山は父が登っていた八ヶ岳の赤岳がモデルになっているんですよ。


藤田
そうは言っても、お父さまとのちからさんの物語だけじゃない、ですよね?

松本
もちろんです。
山の上に何かがある、その先にまた何かあるということを、父が描いてくれたオバケみたいなのものをきっかけに、自分が何かに向かっていく物語です。
なにかをやるときに、でもその「答えを知っている」という意識で作業をはじめて、それが結局、アニメーションとか絵とか作品をつくろうとしている中にあらわれるのです。


 
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松本力(まつもとちから)

1967年東京生まれ。1991年多摩美術大学美術学部GD専攻卒業。
一コマずつ手描きとビデオによるローテクのアニメーションを制作、絵による映像表現を目指して、国内外の展覧会に参加しています。
演劇やダンス、エレクトロニカバンド「オルガノラウンジ」などの音楽との共同制作やライブなどの活動や、手製映像装置「絵巻物マシーン」シリーズを使用したワークショップを学校や病院、商店街、美術館等の公共施設で行っています。
絵を描くこと、アニメーションを手段に、人間の内側と外側をつなぐような想像の世界を紡いでいきたいと思います。


展覧会歴
2009   『激情心靈Mind as Passion』Take Ninagawa、台北市立美術館、台湾
『PROZOR JAPANSKOG VIEDA』Galerija DUPLEX/10m2、サラエヴォ、ボスニア・ヘルツェゴビナ
『Coastal Currents 2009 Hastings Festival of Contemporary Arts』Lorna's home gallery space、ヘイスティングス
『ART IN THE OFFICE 2009』特定非営利法人アーツイニシアティブトウキョウ、マネックスグループ株式会社、丸ノ内
2008   『KITA!!-Japanese Artists Meet Indonesia』国際交流基金、インドネシア
『Commercial an Art! Ocean Fresh』birdo flugas、Helen Pitt Gallery、バンクーバー
『IASmedia Screening 2008』MIACA、IASmedia、Insa Art Space、Filmforum、ソウル
『日・ブルガリア映像アートフェスタ』在ブルガリア大使館、国立美術アカデミーギャラリー アカデミア、ソフィア

仕事歴
2010   豊島区立豊成小学校『みらいから、かえってこよう!』ワークショップ、学校内展示
千代田区立九段生涯学習館『動く絵巻物』ワークショップ、展示
2009   トーキョーワンダーサイト、世界銀行東京開発ラーニングセンター『はんぶんはんぶん Pakondal アーティストとカンボジアのこどもたちとの出会い』ワークショップ(永岡大輔)
2008   フジテレビ『BABY SMAP』ブリッジ映像制作
東京都現代美術館『アニメ・ザ・キッド』ワークショップ
2007   ミクニヤナイハラプロジェクトVol.3(Nibroll)『青ノ鳥』劇中映像制作
高台寺『高台寺ライトアッププロジェクト』映像制作(AD.東泉一郎/三洋電機)
司株式会社『KOENJI HIGH』ライブハウス階段室のアートワーク(LD.高永祥)
よこはま動物園ズーラシア『どうぶつえんのくりすます』舞台美術、映像制作
2001   NHK教育『美と出会う』タイトル映像制作
松本力さん 
 



 

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