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稲垣智子インタビュー


《Mr.B, Ms.N》2010 C-type print

制作する場所へのこだわり


藤田
制作場所は、大阪からフランスのアンギャン・レ・バン市、東京に引っ越してきたり、ドイツ・ハンブルグ、といろいろ移動しましたが、どうですか?

稲垣
どこでもいいですね。
ただ都会が制作に向いている、と思います。

藤田
なぜですか?

稲垣
自分の作品をつくっているポイントは、現代の社会現象が面白いと思っているので、人が多くてそれが見えやすい都会はさまざまなことを教えてくれます。

藤田
都会といっても、いろいろな度合いがありますよね。

稲垣
そうですね、濃縮された感じで社会のおかしさが感じるくらいの都会がいいです。

藤田
ハンブルグはどうでしたか?

稲垣
ハンブルグはそこまで都会ではありませんが、行ってよかったですよ。
ゆったりと考えることができましたから。
海外に住むと日本という国に対しても客観性を持つことができます。
いま東京に戻ってきて1カ月ほどですが、東京は忙しい街ですね。

藤田
東京はどうですか?

稲垣
自分の作品のもと、コンセプトという部分では、東京は合っています。
都市は、離れてから「都市である」ことを感じること、田舎に住んで「都市を分かる」こともあります。
だから、都市以外に住むことも、たまには必要かもしれません。
そういった「主観」と「客観」が混ざり合うことが、必要かもしれません。


藤田
たしかに、美術は世界共通言語ですからね。
2月に私はベルリンに行ったのですが、安い家賃で広いスペースを借りられるといった理由で、日本人含めアーティストがたくさん住んでいました。
アーティストは居心地がいいところで住んで制作することが良いのかもしれないけど、私は「それでいいのかな、愛国心や日本人としてのアイデンティティって何だろう」と考えてしまいました。

稲垣
海外に住むと「日本人であること」を突き付けられて、求められますよ。
だから反対に、海外にいるからこそ、日本を考えて、日本人を感じると思います。


藤田
ハンブルグでもそう感じましたか?

稲垣
感じますよ、見た目から違いますからね(笑)。

 
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