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稲垣智子インタビュー


《Sakura (Cherry Blossoms)》 2009 Video

5年間という時のあいだで

Tomoko Inagaki Interview

PEELERは記録をする媒体である。
とするならば、アーティストの定点観測をしていきたいと考えている。
5年前、メールで活動について話を聞いた稲垣智子に、
直接会ってインタビューを行った。
この5年間という時のあいだで、作品、制作場所も含めた、
稲垣の活動を振り返っていきたい。

INTERVIEWER 藤田千彩


この5年を振り返ってみる


藤田
こんにちは。
5年前、2005年にインタビューさせてもらったときは、群馬県立館林美術館でのグループ展がはじまる直前でした。
あれから5年、まずはどういう展覧会で発表したか、振り返りながら教えていただけますか?

稲垣
はい。
館林のあと、個展では、ニューヨークのPHギャラリー、金沢のG-WING'Sギャラリー、大阪のTHE THIRD GALLERY AYA、ドーンセンター、3カ月アーティスト・イン・レジデンスに行っていたフランスと、その帰国展を大阪府立現代美術センターでしました。
グループ展では、CASOで新しい試みだった植松琢麿さんとのコラボレーション(後に記載「稲を植える人」の前身)、海外に呼ばれるグループ展ではインスタレーションではなく映像作品を発表することも多くなりました。
昨年はクンストハウス・ハンブルグでの展示のあと、ハンブルグに1年間、アーティスト・イン・レジデンスに行っていました。
期間中にベルリンのアートメディア祭であるトランスメディアーレで作品を見せることができ、アーティスト・イン・レジデンスの成果発表はクンストファイン・ハーブルガー・バーンホフ、帰国展を大阪のTHE THIRD GALLERY AYA(リンク=大阪のTHE THIRD GALLERY AYA)でしました。
今年はこれから、インパクトというオランダの映画祭に出る予定です。


藤田
アーティスト・イン・レジデンスというのは、アーティストが制作のために滞在すること・場を指します。
記録者として私もPEELERをつかって、いくつかレビューを書いています。2006年金沢での「稲垣智子展:赤い部屋の森の夜」、2007年大阪ドーンセンター「第1回ウィメンズ・アーティスト展覧事業『稲垣智子展 波』」、同じく2007年大阪府立現代美術センター「稲垣智子『嘔吐』」、ハンブルグの帰国展である大阪のTHE THIRD GALLERY AYAでの展示
これまで私が見てきた感想ですが、稲垣さんの作品がだんだん映像をつかう率が高くなってきてる気がしますね。

稲垣
そうですね。
もちろん作品をつくるにあたって、映像はずっとつかっている手法です。
以前は、もっとパフォーマンス的な映像が多かったのですが、だんだんと、身体的な要素を残しつつ、映像自体が「話す」「語る」ようになってきたと思います。


《Oasis》2005 群馬県立館林美術館「夏の蜃気楼」展でのインスタレーション

藤田
インスタレーションの「見せ方」も変わって来た気がします。
館林で見せた作品のように「物がただ置かれている」というインスタレーションから、ドーンセンターでの「空間を見せる」ものになってきた、という変化をしていますよね。
つまり稲垣さんにとって、展覧会は「この場所で展覧会をしてください」なのか、「前から温めていたアイデアがあって、その場所で見せよう」なのですか。

稲垣
どちらもですね。
私は作品のアイデアを、ずいぶんと前から考えているんですね。
例えば昨年クンストハウス・ハンブルグや今年トランスメディアーレで発表した《桜》という作品(参考/上記掲載画像《Sakura (Cherry Blossoms)》)は、2004年に、茨城県にあるARCUS(現アーカススタジオ)でアーティスト・イン・レジデンスしていたときにオリジナル(原型)をつくっていました。
それが長い時間を経て、昨年クンストハウス・ハンブルグで見せているわけですから、アイデアを温めて、完璧な作品として出るのには、時間が掛かるということです。


藤田
ARCUSでつくられたオリジナルと、《桜》は違うのですか?

稲垣
オリジナルは、自分がたたかれているシーンを映像に撮っています。
私にとっては、完成した作品ではなく「スケッチ」です。
ドイツで展示するということとか、クンストハウス・ハンブルグというスペース、その展覧会のコンセプトを与えられますよね。
それで作品をつくるというときに、この「スケッチ」をもとに、展覧会のコンセプト、そして現在の社会の状況等を考慮して《桜》という作品をつくろう、と実を結んでいくのです。


藤田
他の作品も、ですか?

稲垣
そうですね、いろいろな場合があります。
社会やいろんなことが変わって行く、現実が変わると自分自身も私の考え方も変化していきます。
そのときに思ったことをためておいて、ある考えが熟成し、時代と合致したと感じたときに作品にするようなかんじです。


藤田
日々スケッチや人に見せられないものはためていて、ずいぶんとたまっている中から、作品にするのでしょうか?
それとも、突然の思いつきもあるのですか?

稲垣
そのとき思いついた、ということもありますね。
ただ昔からためていることも多いので、そこから拾うことも多いです。


藤田
いくら社会が変化していったとしても、そこには共通のテーマがあるんでしょうか。

稲垣
そう思ってますが、私たちの身体や脳は数ヶ月ですっかり変わってしまうものだそうですから信じているほど確実ではないかもしれませんが。


藤田
あらら、全然別人になってるわけじゃないから(笑)。
私はこれまで見たすべての稲垣さんの作品は、きれいだけど毒がある、というテーマがあると思っていますよ。
場所についてはどうですか?
ドーンセンターにしろ、金沢にしろ、場所という宿題を与えられたら、すぐ答えが出せるものですか?

稲垣
スペースの問題は大丈夫ですよ。
 
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稲垣智子(いながきともこ)
http://tomokoinagaki.com/

1975   大阪府生まれ
2001   英国ミドルセックス大学美術学部卒
2005年5月までの経歴については、前回インタビューをご覧ください。
こちら

個展
2005   '赤い部屋の森の夜' G-Wings Gallery 金沢
2006   '私の本当の名前' サードギャラリーアヤ 大阪
2007   'Outo' Centre des Art in Enghien les Bains フランス
'Wave' ドーンセンター 大阪
'嘔吐' 大阪府立現代美術センター 大阪
2010   ‘Pearls’ サードギャラリーアヤ 大阪

グループ展
2005   '夏の蜃気楼' 群馬県立館林美術館 群馬
2007   ' I meet...' CASO 大阪
2008   'Bains Numeriques #3' Centre des Arts Enghien les Bains, フランス'Nuitnumeric #6' Centre culturel Saint-Expery, フランス
'Talk & Exhibition 2008- Video Art Activities', Ox Warehause, マカオ
2009   ‘Twinnism’ Kunsthaus, ハンブルグ/ AD&A Gallery 大阪
2010   ‘Tomoko Inagaki and Svenja Maass’, Kunstverein Harburger Bahnhof, ハンブルグ

その他活動
2006   イメージフォーラム 入選
2006   映像 Jean Gordan Dance Performance 'FluXS'
第17回芸術家交流事業ART-EX派遣作家、フランスプログラム
2009   ‘Kunstler zu Gast in Harburg’  (アーティストインレジデンス), ハンブルグ
2010   ‘Transmediale’, The House of World Cultures, ベルリン
稲垣智子さん 
 



 

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