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東亭順インタビュー



最近の制作について









藤田
マスキングテープ、ですか。
色がはみ出ないように画面に貼るテープ、ですよね。
私、これ、すごい調べましたことがあります。
どういうふうにつかうのでしょうか。

東亭
キャンバスの布目に水性ニスをたらし込む前に、かなり細かい図形までマスキングテープで形をつくって塗ります。
"地"である画面に、マスキングをする必要のない箇所まできれいにちぎり絵のように貼ると、完璧な"図"になる表情がおもしろかったんです。
当たり前の事なんですが、"図"と"地"は同時に見れない、"図"を見たら、"地"を"図"としては見ることはできません。


藤田
本来はキャンバスの延長、"地"の一部としてつかうべきマスキングテープであって、絵具のように"図"をつくるものではありませんからね。

東亭
去年東京であった展覧会では、そんなふうにマスキングテープを使用して出来上がった「平面」作品と、その対面の壁にはその「平面」の地部分を鏡状にマスキングテープでトレースして「別の平面」作品を制作しました。
粗い仕上げの壁に、うまい具合にマスキングテープが貼れた事もあって、金色に光る宝探しの地図のようになりました。
3Mという企業にマスキングテープを提供してもらったのですが、さすが3M、でした。


藤田
今回おじゃましている「西宮船坂ビエンナーレ」での展示も、壁や蛍光灯をマスキングテープで覆っていますよね。
実際どのくらいのマスキングテープをつかっているのでしょうか。

東亭
こちらも3Mに提供いただいたものをつかっていて、「幅5センチ50メートル」のものと「幅2センチ50メートル」のものを、今回は合計30本ほどつかいました。


藤田
1500メートルくらいですか(笑)、結構な量ですね、重いんですね。
実際に見ると、地図の等高線ではないですが、平面といえども画面が盛り上がっていましたよ。

東亭
確かに奇妙な視覚効果はあったはずです。
この西宮船坂ビエンナーレで発表した作品タイトルは《半分になった教室での実験》。
僕が展示している教室は、廃校になる間際、1年生が2名になったために、教室の真ん中に壁を立てて半分になり、通常の教室より小さいサイズでした。
ここで何をしようか考えたとき、まず、学校の基本である掃除、しかもワックスがけまでの大掃除をしました。
そのあと、船坂近隣を散策したところ、「蓬莱峡」「座頭谷」というスポットを発見し、2時間くらいかけて散策しました。
カタログのテキストに書いたのですが、この土地は谷の流れが枯れたように見える場所も実は岩の陰になっているだけだったり、風雨によってつくられている奇形/奇妙な岩山の風景が見られます。
僕にはとても強い存在感があるものが多い場所に感じられましたが、ここで視覚能力を失った座頭さんが迷って亡くなったという話もあって、視覚だけに頼るような、つまり見て分かるような作品ではなく、違和感を感じるような空間づくりを目指しました。
そして「上書き」をすることが僕のペインティングなので、空間にすでにあるモノにマスキングで上書きする感じで制作したのです。


藤田
ワックスも、床に「上書き」という行為ですか。

東亭
そういった意味だけではなく、他の教室と比べたとき、あまりのツヤに圧倒的な違和感を生んでいたはずです。
そこで見る人に躊躇(ちゅうちょ)が生まれ、入るか否か「判断」することになります。
そういう判断や小さな覚悟が、作品を鑑賞する上で必要なのではないかな、と常々思っていたので、僕は「実験」というタイトルをつけて、いろいろ試したわけです。



今後の理想と希望

藤田
日本に住んでいると、日本国内の美術館やギャラリーのどこそこで展示したとか、ナントカっていうギャラリーの所属になった、という日本での活動だけが評価軸になっていって、海外での活動や評価は聞こえてこなくなります。
グローバル化社会としても、そもそも美術は国境は関係ないものであるということからも、日本でどうの、なんてダサいですよね。
東亭さんは実際、これからどういう考えで、作家活動を続けていくのでしょうか。






東亭
なんとなくやっていく、ですかね。
もちろんより多くの人に見てもらいたいとは思いますが。


藤田
本当はもっと野望とかあるんでしょう?

東亭
そうですね、いろんな国に次のステップとして展開していきたいですね。


藤田
来年には日本で展覧会もあります。

東亭
はい、東京・六本木にある国立新美術館で1月23日〜4月1日に開かれる「アーティスト・ファイル2013−現代の作家たち」展に出品します。


藤田
久しぶりの日本で、しかも大きな美術館の空間で、東亭さんの作品を見ることができるのですね。
とても楽しみです。
今日はどうもありがとうございました。

 
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