topreviews[瀬戸内国際芸術祭2010/瀬戸内海の7つの島+高松]
瀬戸内国際芸術祭2010


男木島

男木島にはとにかく作品がいっぱいです。
全てを見て回るには、休憩も含めてゆとりを持って行動した方が良さそうです。民家での展示が多いので、島民の方との距離がより近く感じることができます。


ジャウメ・プレンサ《男木島の魂》

男木島港の目の前にあるガラス張りの建物は、ジャウメ・プレンサの《男木島の魂》です。
入り口までに白い道が延びており、その回りは水にかこまれています。
水面にはすでに男木島の小さな虫たちが生息していました。
建物の屋根は複数の言語の文字がつながってできています。
日中は地面にこの文字が影となって映し出されます。
建物の中にいてもクリアな感覚で過ごせます。


大岩オスカール《大岩島》

 
川島猛とドリームフレンズ《思い出玉が集まる家》


中西中井《海と空と石垣の街》

少し歩くと古びた建物を発見。旧公民館だそうです。
入り口の戸をがらりとあけると、そこには白い海が広がっていました。

目の前の壁には島の砂浜が、床には広い海が描かれています。
側面の壁には少し屈折するよう数枚の鏡が貼ってあり、描かれている景色がゆるやかな曲線でループして、まるで本当の島を目にしているようです。
手すりから身を乗り出して見る島は、何だか懐かしくも感じられます。
この作品は1枚の大きな紙に、サインペンで描かれているそうです。

※大岩オスカール作《大岩島》は、会期中である2010年9月26日におきた火災により焼失されました。火元である家のおじいさんは、作品制作中に何度も足を運んでくださった方で、その火災により亡くなられたそうです。この作品をもう2度と見れないのも、島や作品の思い出を持たれているおじいさんのお話を聞けないのも、とても悲しく感じます。

坂道をひたすら登ると、長椅子が置いてある休憩所があります。
そこでは男木島にすむ方々が集まり世間話をしている光景が見られます。
その奥の民家には川島猛とドリームフレンズの《思い出玉が集まる家》がありました。
軽くフワフワとしている球体は、よく見ると写真や新聞紙などで作られています。
題名の通り、島に対するいろいろな人のいろいろな思い出が軽やかにとんだり、または沈んだりしているようです。

また坂道を歩いていくと、民家の石垣に集落のように小さな家が集まっていました。
中西中井の《海と空と石垣の街》です。
小さな家には側面の壁はなく、中には屋根と骨格だけのものに薄いリボンがついているものもあります。
このリボンが、海に向かって吹く風に流れていくのがとてもさわやかで心地よく感じます。


松本秋則《音の風景(瀬戸内編)》

風に吹かれ素敵な気分になっていると、風と一緒に小さな音も流れてきました。
ほんとにかすかだけれど、こちらも心地よい音だったので、音の出所を探すことにしました。
そこで一軒の民家にたどり着き、ようやく作品ということを知りました。
松本秋則の《音の風景(瀬戸内編)》です。
民家に入ると、障子の奥でで涼しげな音が奏でられていました。
じっと座って耳を澄まして聴いていると、夏だというのを忘れそうです。


高橋治希《SEA VINE》


少し歩き、またまた民家へ。
そこでは高橋治希の《SEA VINE》が展示されていました。
陶器の植物たちが、波のように交差しながらいくつも伸びています。
花や葉の一枚一枚には男木島の港や思い出の断片が細かく描かれています。
部屋の奥の窓からは本物の海が見え、なんだか贅沢な気分になります。


北山善夫《誕生-産殿-性-死-墓-男木島伝説》



北山善夫《誕生-産殿-性-死-墓-男木島伝説》

谷口智子《オルガン》

まだまだ民家での展示は続きます。
次は北山善夫の《誕生-産殿-性-死-墓-男木島伝説》です。
入り口をまたぐと正面には赤い布に描かれた大きな顔がお出迎えです。
人間の喜怒哀楽を表現しているのでしょうか、大きさのせいもありますがなんだか生々しいです。
二階に上がると、生の部屋と死の部屋に分かれていて、生の部屋では赤ん坊の姿をした人形が何十体もふとんに寝転んでおり、死の部屋では新聞のお悔やみ欄を無数に切り抜いたものが展示されていました。

坂道を歩いていると野外の数カ所に展示されている作品があります。
まず谷口智子の《オルガン》。
いろんなところにパイプが設置されており、声を出してみたり、耳を澄ませてみたり、のぞいてみたり。
どこかに繋がっていると思うと楽しいです。


谷口智子《オルガン》

眞壁陸二《男木島 路地壁画プロジェクト》


 
谷山恭子《雨の路地》
次に眞壁陸二の《男木島 路地壁画プロジェクト》。
島で見られる緑の色や民家の壁の色など、島の端々ををミックスしたような壁画になっています。

そして谷山恭子の《雨の路地》。
やかんや金だらいなどをつり下げた作品です。
島ではあまり雨が降らないため、人工的に雨を降らせるという作品だそうです。
やかんたちの下には瓦が敷いてあり、水についての言葉が詩のように記されています。


谷山恭子《雨の路地》


 
ジェームス・ダーリング&レスリー・フォーウッド《ウォールワーク5》


西堀隆史《うちわの骨の家》

固まっている作品たちより少し離れたところにあるのはジェームス・ダーリング&レスリー・フォーウッドの《ウォールワーク5》です。
神社へつづく階段にそって木片でできた彫刻がうねりながら登ってきます。
どこまで続くのか追いかけたくなる作品です。
プレオープンでは入り口で作者お二人がおせんべいと日本酒でおもてなしをされてました。

最後にご紹介するのは、西堀隆史の《うちわの骨の家》です。
こちらも民家の中での展示になりますが、家の中の壁面や天井は無数の竹でうちわの骨で覆われています。
うちはは香川の伝統工芸品だそうで、うちわから島の歴史を感じることができます。

夏にはとても涼しそうに感じる室内です。

島民の方と距離が近いからか、作品の数が多いからか、女木島・男木島ではとても濃厚なアート鑑賞になったな感じました。
作品を見て回ることで周囲もより知ることができるので、島と自分の距離がぐんと近づいた気がしました。



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