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櫻井美幸インタビュー


INTERVIEWER 田中由紀子

昨年10月〜12月のアートドラッグセンター(愛知県犬山市)での展覧会を終えたばかりにもかかわらず、2月には東京のギャラリー本城とギャラリー覚での合同企画展を控え、現在個展に向けて制作中の櫻井美幸さんにお話を伺った。
《落下した人はどうなったか》
2004年 Oil on canvas 318×410mm

「どういう意味なんだろう?」と一歩踏み込んで見てくれるといいなと作品名をつけています




いろいろな人に見てもらって、なにかを感じてもらえたらと思っています



「どういう意味なんだろう?」と一歩踏み込んで見てくれるといいなと作品名をつけています


田中
櫻井さんは一貫して人物を描いていらっしゃいますね。作品を拝見していると、櫻井さんと描かれている対象との間に距離感を感じるのですが…。

櫻井
個展を見に来られた方にも「距離感を感じる」と言われたことがあるのですが、自分では意識したことがなくて、言われて初めて気がつきました。対象に強い思い入れがあるわけではないからかもしれません。でも、その人物を選んで描いているのは、何かしらその人に引っかかるところがあるのだと思います。ちょっとした表情や顔の角度とか。その人物というより、光と陰で顔をどう描くかとか、どういう構図で描くと自分の描きたいものに近づくかを考えながら制作しています。

田中
作品名が短い文章になっていて、絵とは直接結びつかないように感じさせるところも櫻井さんの作品の特徴と思いますが、文章も書かれるんですか?


「AZURE PLAY〜空色遊戯」(エビスアートラボ/名古屋)2004年 展示風景
櫻井
文章は書けませんが、これくらいの短いものならできるかなと。たとえば「物憂げな女」とかだったら、そのまますぎておもしろみがないので、絵とは意図的にちょっとずらして考えています。絵だけでは物足りない気がして、もう少しできるんじゃないかなと。見る人が「どういう意味なんだろう?」と考えることにより、もう一歩踏み込んで作品を見てくれるといいなと思いながら作品名をつけています。

田中
それは成功していると思います。絵に距離感を感じたとしても、作品名を読んで「これってなんだろう?」と考えることにより、見る人は自分の中に作品を落とし込み、絵とテキストの関係性から何かを感じたりできると思います。文章の意味がひとつに限定されないところも、見る人それぞれの捉え方を許容するのではないかと。ところで、作品名は絵を描きながら考えるんですか?
 

櫻井
文章は、絵を描いているときはまったく考えません。すべて描き終わってから考えます。一日考えても思いつかないときもあれば、すぐに決まる場合もあります。

田中
櫻井さんの作品の多くは、明るい部分と暗い部分が強調されていてくっきりした印象を受けるのですが、なかにはぼんやりした雰囲気の違うものもありますね。

櫻井
きっちりした線ばかり描いていると疲れてしまうことがあるので、こちらはちょっとはずしてリラックスして描いています。特に子供を描くときは楽に描けますね。子供が好きで、子供を見ていると気持ちが優しくなるからでしょうか。

田中
ところで昨年、ク・ナウカの舞台公演の印刷物に櫻井さんの作品が使われたそうですね。

櫻井
はい。《落下した人はどうなったのか》(2004年)をチラシのメインビジュアルに使っていただきました。これは演出家の宮城聰さんが新聞に掲載された私の作品をご覧になり、私のホームページを見つけて「次の公演のビジュアルに使いたい」と連絡をくださったのがきっかけです。私自身は演劇のことはあまり知らなくて、ク・ナウカの舞台も今回初めて見たのですが、とてもよかったです。こういう世界があるんだなあと。知らない人が私の作品を見てくれて、そこで何かを感じてくれているということが実感できうれしかったし、私自身の世界も広がりとても新鮮でした。
 

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櫻井美幸(さくらいみゆき)
1973   岐阜県生まれ
名古屋市在住

個展歴
2005   「10TH ANNIVERSARY OF ART DRUG CENTER 2005」(アートドラックセンターキワマリ荘/愛知県犬山市)
「蝸牛コウシンキョク」(名古屋造形大学/愛知県小牧市)
「コトバハ時間ノ壁ニ阻マレテ」(ギャラリー本城/東京銀座)
「miyuki sakurai exhibition」(IB Cube Gallery,Ichinomiya/愛知県一宮市)
2004   「miyuki sakurai exhibition」(IB Cube Gallery, Denmark/ボヴリングビョルグ デンマーク)
「AZURE PLAY〜空色遊戯」(エビスアートラボ/名古屋)
2002   「櫻井 美幸」展(アートドラッグセンターキワマリ荘/愛知県犬山市)
2001   「サカライダー」(アートドラッグセンターキワマリ荘/愛知県犬山市)
2001   「DRIFTER」(アートドラッグセンターキワマリ荘/愛知県犬山市)
2000   「小児麻痺」(アートドラッグセンターキワマリ荘/愛知県犬山市)
1998   「発狂詩人のレクイエム」(マカシラハログナ/名古屋)

グループ展歴
2005   「5月展 preview」(ギャラリー覚/東京銀座)
2004   「アポリアの森・世界の眺め」(名古屋市男女平等参画推進センター/名古屋)
「self reflection」(エビスアートラボ/名古屋)
2002   CHILD FINGERS 「手に入れる」(アートドラッグセンターキワマリ荘/愛知県犬山市)
2001   CHILD FINGERS 「考えろ」 (アートドラッグセンターキワマリ荘/愛知県犬山市)
1999   「歯ブラシ立て」 (マカシラハログナ/名古屋)
 



 

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