toppeople[近森基++久納鏡子インタビュー]
近森基++久納鏡子インタビュー

作品は仕事となる


藤田
会社つくったころも、展示とかなさってるんですよね?

近森
会社を作る数年前、つまり、ハラミュージアムアークの個展や、東京都写真美術館で展示していた頃から、展覧会を見たとかで、パブリックアートや空間デザインとしての制作依頼の話が来るようになってきたんです。


藤田
え?この触ると影が伸びる作品が、パブリックアートとして、ってすごいですね。

久納
そうなんです。
会社を作ってからも展覧会での作品展示と同時に、そうしたパブリックな場所での制作依頼の話は続いて、そのあと2005年には愛知万博があって。


近森
僕たちは4パビリオンくらいの展示物をつくったんですね。
企画をつくる段階から参加して、パビリオンの空間デザインやシステムデザイン、見せる映像コンテンツ、といろいろなことを僕たちが請け負って「仕事」として成立したんですね。


藤田
普通は企画なら企画専門の人もいて、アートディレクターがいて、デザイナーがいて、と分かれているのに、全部できちゃうんですね。

久納
自分たちだけでやると、時間がかかったりして大変なことは、そういうことができる人に任せています。

近森
だんだんと僕たちの作品は、仕事としてやっていけると気づいてきました。
企業の見本市のブースで「分かりやすい会社紹介をする」ということで、協力させてもらったこともあります。

藤田
えー、すごい!そんなことも!!

久納
私たちはどんな問題でも解決することが好きなんです。
自分で問題を見つけて解決することであったり、他の人から出されたお題を解決することであったり、形はいろいろだけど、問題を発見すると一生懸命になってしまうんですね。

藤田
企業がメディアアートを理解してくれる、っていうのがすごいですよね。




企業間の見本市にて、KOBELCOのブース


近森
トヨタのショールームでは、コンセプトカーを置くという展示をしたのですが、企業側もありきたりの見せ方ではなくて、新しい見せ方をしたい、ということを感じましたね。

久納
見る人にもっと踏み込んで見てもらいたい、というときにメディアアートは有効です。。


近森
メディアアートって、一人で制作している人もいるけれど、他人と一緒にやるということが多い分野だと思うんです。
そのためには、与えられた問題に論理や技術で答えなくてはいけない。
同時に、仲間たちに分かってもらうように柔軟性も持ち合わせていなくてはならない。
そういうことが僕たちは楽しいんですよね。

藤田
みんなでやったら時間は掛からないんですか?

近森
みんなでするから時間が掛からないんです。
もちろん〆切があったりすることもあるけど、人数が多いと役割分担して進めるから、早いんですよ。
 
名古屋駅からルーセントタワーまでの通路

 
 

メディアアートは世界を広げる


藤田
お話を聞いてるとお二人は、仕事、企業と何かする、みたいな振り幅もあれば、展覧会というアートの分野で作品を見せる、という振り幅も持ち合わせてますよね。

近森
2001年のハラミュージアムアークの個展のあと、絵本をつくりませんか、という話が来たんです。
それまでも「ページのない絵本をつくろう」というコンセプトで作品をつくっていたんです。
僕たちの作品を見ていた親子ですけど、触ると火(の影)が出た、それを触った女の子が「お母さん早く来て」、と。
お母さんがポットに触ると水(の影)が出て、女の子が「ああよかった」と言っていた。
僕たちの作品でストーリーをつくってた、ということがあって。

久納
私たちがこういう見方、コンセプト、と決めるよりも、鑑賞者の人たちが楽しんでもらえる、作品がメディアそのものになる、ということに気づいたんです。

近森
それから絵本をつくることにしたんです。
白と黒だけで構成した絵本なんですけどね。
この絵本を見た人から、やがて名古屋駅のルーセントタワーに向かう通路での壁画をつくってほしいという依頼もあったんです。

藤田
あと今年、山口芸術情報センターで、珍しいキノコ舞踊団の舞台美術もなさいましたよね。

久納
以前にも、即興のダンスと音楽とインタラクティブな映像でセッションをするということをやったのですが、ダンスや音楽って言葉に依らないから、メディアアートも含めた視覚芸術となじみやすいんですよ。

近森
コンテンポラリーダンスって抽象的で難しく見えるけど、ダンサーの人に話を聞くと、詳細なコンセプトがあるんです。
だから僕たちはイメージの補助線、という役割で関わっていこうとしたんですね。

久納
いくつかやってみて気づいたのは、言葉がつかないジャンルと、言葉のない私たちの映像が結びつくと面白いことが起こるんです。

近森
愛知万博のとき、環境省の展示で「地球にごみをなくそう」というイメージのインタラクティブ作品をつくったんです。
ごみがちらばった地球を、自分の手で触ると片づけられていくという作品で、「地球にごみをなくそう」という言葉で伝えるよりも、感覚的に持って帰ってもらえることは多いかな、と。


久納
言葉を使うからといって、必ずしも人に伝わるものではないんですね。
言葉以外の手段でも人に伝わる/伝えることも多いし、インタラクティブな手段を使うことで、直感的に気づいてもらうことができるんです。


藤田
言葉は難しいですよね、ライターとして私も日々感じます。
ところで、お二人の表現に対して、ギャラリーがついたりしないんですか?

近森
2、3年前から、ギャラリーテオの所属になってます。


久納
現代のアートマーケットの中で、メディアアートがどう見えるのかな、と。
ギャラリーという他人に作品を預けるとなると、コンセプトも明確に伝えなくてはいけないし、売るということも考えなくてはならない。
ギャラリーという他人に作品を預けるとなると、コンセプトも明確に伝えなくてはいけないし、作品を売るということも考えなくてはならない。
知らない世界だから不安ですが、新しい問題を与えられたような気持ちで、答えを見つけるのに必死です。

近森
いまそろそろ新しいことをしたい、と思っています。
僕たちは美術大学でメディアアートについて教えていますが、多くの学生はwebの道に流れてしまうようです。
僕たちが実際メディアアートをやってきて気づいたことは、広く社会とつながることができるということ。
メディアアートは、アートとして単純に「人に気づかせる」という目的を果たすだけでなく、社会とつながるための枠組みとしても機能しています。

久納
いろいろな人が自由になごんだり遊んだり時間を過ごす公園のように、メディアアートはもっとパブリックなものでありたいですよね。
メディアアートに日の目が当たるようになった現在、いろいろな場所で作品を見せることができるようになりました。
作品を通じて、私たちは「何ができるか」と考えているので、これからも期待してください。

藤田
お二人も、メディアアートも、すごい、すごい。
今日はありがとうございました。
 
 
前のページへ 1234  
 



 

topnewsreviewscolumnspeoplespecialarchivewhat's PEELERwritersnewslettermail

Copyright (C) PEELER. All Rights Reserved.