toppeople[國府理インタビュー]
國府理インタビュー
 
「KOKUFUMOBIL」と名づけられた乗り物たち

友利
今回の展覧会では、過去の作品の映像も展示されていますね。
自動車がエンジンではなく帆で、大真面目に走っていて…、なんだかおかしくて…
笑ってしまいました。申し訳ない。。。

國府
《Natural Powered Vehicle》ですね。
これは、最初からロードムービーを作りたくて構想した作品です。
本当は、映像にちょっとしたトリックもあるのですが。
帆はハンドル操作で方向を変えられるようにしているけれども、実際に風受けすることはなかなか難しいですから。
もちろん、車検も通らないし。(笑)


友利
映像の最後で、風力発電所にたどり着くのが象徴的だと思いました。

國府
ラストシーンは、実は、肯定的な意味を持たせているわけではないのです。
化石燃料を使わないで、二酸化炭素を排出しないで旅を続けてきたけれども、やはり自動車は完全にはクリーンになれない気がして。
 
  それで、風車の真下まで行くのではなく、遠くから眺める場所で旅を終わらせました。
風力発電とは一体にはなれないというエンディングです。

左)《Mental Powered Vehicle》の映像を見る  右)《Power Assist Helmet》の映像を見る
撮影:大場美和  

友利
もうひとつ気になったのが、赤い冷蔵庫の自動車です。
こちらは実際に走るものではないですよね。

國府
《自動車冷蔵庫/Car Freezer》は、睡眠したままの時間移動というか、時間を一時停止できるのではないか、と思ったのがきっかけです。
当時、僕の乗っていた自動車が壊れてしまって、最初は電気自動車みたいに改造したらいいかな、とか考えていたのです。
そこからイメージが膨らんで、自動車が人間の体を保存する冷凍睡眠カプセルのように見えてきて、自分をどこか未来に連れて行く時間旅行の装置として捉えるようになりました。
仮死状態の肉体を冷凍保存する技術なども調べたりしたんですよ(笑)。
壊れてしまった自動車はそのまま過去に残り、座席に座っている乗り手だけが未来に進んでしまったようなイメージでしょうか。


友利
タイムトラベルって、昔からの人類の夢ですよね。
でも、國府さんの映像を見ていると、未来を手にできるとしても、それが人間にとって幸せかどうかは考えさせられますね。
未来に行く技術を持つことは、人間にとって幸せなのかというような…。

國府
テクノロジーと人間の関係は難しい問題ですね。
機械文明の発達を求めていながらも同時に疑問も感じています。
逆に、エコロジーのこととか考えながらも、作業効率からすれば木を切り倒してコンクリートを打ってしまったほうが楽だと思うこともありますし。
でも結局のところ、自分の作品に関しては地道な手仕事で進めていて、その手の延長としての道具づくりや工夫に凝ってしまうことが多いです。


友利
アーティストの場合、「頭」というよりも「手」で思考する部分がありますものね。

國府
僕は京都市内で生まれ育ったのですが、京都には歴史的に上(北)と下(南)とでヒエラルキーが成立している意識があるような気がします。
「ものづくり」のような形而下的なことは下に押し込められているというような。
昨年、北九州市の「街じゅうアートin北九州」に参加して現地制作を行う機会がありました。
元々、地道な手仕事は好きだったのですが、京都とは全く違う工業都市の成り立ちや考え方を体験できたことで、制作に関して自分の中で少し変化した部分もあると思います。
 
 
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