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國府理インタビュー
(c.) Osamu Kokufu  撮影:表恒匡  


文明を文明で制さざるを得ない私たち。
行き着く文明って、どんななの?

osamu kokufu interview

ミニカーで子どもが楽しそうに遊んでいます。車はいつも子どもの憧れです。
新車に乗ると、裕福感と最新技術の臭いがします。大人も幸せに包まれます。
自動車は、物質・技術・経済といった社会の豊かさを測るひとつの指標のような気がします。
國府理さんの自動車を使った作品は、いったいどういう意味を持つのでしょうか。
6月6日、ア−トコートギャラリー(大阪)の個展会場にて、國府さんにお話を伺うことができました。

INTERVIEWER 友利 香

INTERVIEWER 友利香

スーパーカーブームの時代に育った。

友利
こんにちは。國府さんの作品は、去年、北九州市とウルトラファクトリー(※2)で見ましたけど、
「自動車を解体して作品を作るアーティスト」とご紹介してよろしいでしょうか?

國府
いいですよ。自動車だけでなく、自転車を使った作品なんかも作っています。
基本的に、小さい時から車輪がついた乗り物が好きで、そうした絵をずっと描いていました。
動くもの、走るものを素材やモチーフにした現在の仕事はその延長にありますね。
廃車を解体して作品を作るようになってきたのは、京都市立芸術大学の彫刻専攻に在籍していた頃からです。


友利
モチーフは子供の頃から一貫しているのですね。
國府さんの子どもの頃って、スーパーカーが流行った時代でしたっけ?

國府
はい。小学校の休み時間には、友達に頼まれてスーパーカーのイラストを随分と描きました。
カウンタックとか、ランチアストラトスとかは立体感を表現するが結構難しくて、そこが描けるのは周囲で僕だけでしたから。
図画工作の授業で描く絵にはあまり自信を持っていなかったけれども、自動車のイラストはクラスで大人気でした。

友利
その頃、すでに自転車を組み立てていたという「伝説」を聞いたことがありますが…。

國府
ええ、当時は溶接とかできないから、組み立てていただけですけど。
廃棄してある自転車を拾ってきて分解して、その部品を使っていました。
二輪だと止まった時に倒れてしまうのが嫌で、前輪を横に二つ繋いだ自立する自転車などを作っていました。
小学生か中学生の時だと思いますけど。


友利
モチーフだけでなく、制作自体も連続しているのですね。

國府
大学院の時に野村仁先生に誘われて、「Solar Power Lab」というプロジェクトにドライバーやメカニックとして参加しました。
最終的にはソーラーカーでアメリカ大陸を横断したのですが、僕は最初の段階のコンセプトづくりやデザインにも関わっています。
当時、バイクの改造なんかを日常的にやっていましたので、それで声がかかったみたいです。


※ウルトラファクトリー:京都造形大学内の工房


(c.) Osamu Kokufu
(c.) Osamu Kokufu  撮影:大場美和
友利
国立新美術館の野村仁展に出品されていた車ですよね。

國府
あの形に行き着くまでには、かなりの試行錯誤がありました。
兵庫県三田市の朝日ソーラーカーラリーへの参加から始まって、鈴鹿の8時間耐久レースにも確か四回参加しました。
最初はコンセプトを重視したマシンづくりをしていたのです。
デザインも当時の主流だったゴキブリのような姿が嫌で、ステルス戦闘機をイメージした形にしました。
でも、そうやって周囲の注目を集めておきながら、一回目の鈴鹿では2〜3周でリタイヤになってしまって(笑)。
それで、美術的なコンセプトだけでは済まない、機能として成り立たせないと駄目だと考えるようになりました。


友利
最初から上手くいったわけではないのですね。

國府
始めた頃は空気抵抗とかエネルギー効率とか全然考えていませんでしたから。
そうした経験から、合理的な乗り物としての機能の必要性を痛感しました。
ちょうど自分の作品としても《Electric Tricycle》など機能を持った乗り物を制作していた頃です。
当時の僕は「設計思想」という言葉をよく使っていましたし、そのことは現在でもよく考えています。
目的に応じた設計のための判断軸のような意味ですが。

 
  友利
鈴鹿では、最終的には多数の工業大学チームを抑えて優勝したと聞きましたが?

國府
僕達は美術大学なので、工業大学やプロのチームと同じことをしても勝てないのですよ。
予算的にも技術的にも。
それで、ロータスの自動車を参考にして、角パイプ一本のフレームから派生する、部品数の少ないマシンを制作しました。
サスペンションなども色々と工夫しましたね。
この時すでにアメリカ大陸横断という、もっと長い時間を走行することを考えていたので、その点からも部品交換の簡易化と居住性の向上の必要性はあったわけですが。


友利
國府さんはアメリカ大陸横断にも参加されたのですよね?

國府
実は、西海岸から東海岸に向けて旅する中で「美術作品とは何なのか?」ということをずっと考えていました。
大人数で、トラックで保護しながら、一台のソーラーカーを走らせる。
その状態がすごく脆弱に思えることもあったし、逆に子供を見守る親のような立場で作家は作品に関われると思うこともあった。
この点に関しては現在でも結論のようなものはもっていませんし、現在の自分の仕事に直接的に影響しているかも明確には言えませんが、作家と作品の関係を考える上では貴重な経験になりましたね。
 
 
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國府理(こくふおさむ)
KOKUFUMOBIL

1970   京都生まれ
1994   京都市立芸術大学大学院美術研究科終了(彫刻専攻)
1993〜   ソーラーカーによるアートプロジェクト「Solar Power Lab」に参加
1999   ソーラーカーによるアメリカ大陸横断旅行「HAAS Project」に参加

個展(2005年〜)
2005   「KOKUFUMOBIL」 (アートコートギャラリー/大阪)
2007   「Premonition - KOKUFUMOBIL-國府 理 展」(大阪成蹊大学芸術学部ギャラリー(space B)/大阪)
2008   「國府 理/move to moving」 (松本市美術館・信州大学合同企画)松本市美術館/長野)
「國府 理 展/KOKUFUMOBIL」 (アートスペース虹/京都)'94'06

グループ展(2005年〜)
2005   「art-life vo.4 大巻伸嗣/國府 理 展 『PARADICE TIME』」 (スパイラル/東京)
2006   「取出アートプロジェクト2006−仕掛けられた取出ー」 (旧戸頭終末処理場/取出)
2007   「京都美術工芸新鋭選抜展ー2007新しい波ー」 (京都文化博物館/京都)
「未来の乗り物展」 (ロボットミュージアム/名古屋)
「裏・アートマップ」 (京都芸術センター/京都)
2008   「大阪アートカレイドスコープ2008」 (東横掘緑道/大阪)
「街じゅうアート in 北九州」(北九州市内)
「RICアートカプセル」 (六甲アイランド/神戸)'03~'07
「地力ーARTイマジネーション in KOBE」 (神戸)'06
2009   「エコ&アートーアートを通して地球環境を考えるー近くから遠くへ」(7/4〜9/23 群馬県立館林美術館)
「神戸ビエンナーレ 2009」 (10/3〜11/23 神戸)

國府理さん 

 



 

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