toppeople[稲垣智子インタビュー]
稲垣智子インタビュー
藤田
それから今年、群馬県立館林美術館はどういう流れでやることになったのですか?


稲垣
現代美術製作所でグループ展に参加をしていた時に、群馬館林美術館の学芸員の松下和美さんと初めてお会いしました。
前から作品に興味を持っていただいていたようで、その後何ヶ月かして今回の「真夏の蜃気楼」展のお誘いがきました。

藤田
すっばらしい!ですね。
いかに学芸員の目に止まるか、ですよね。
今回出される作品はどのようなものですか?


稲垣
私の展示する場所が、半円形で半分がガラス張りで、そこから外のきれいな芝生の公園が臨めるところなんですよ。
美術館の、いわゆる「白い箱」とは全く違う特殊な展示室なので場所を意識した作品になります。
難しい場所ですけれど、私もやりがいがあります。
タイトルは《オアシス》。
映像を用いたインスタレーションになります。
草原に寝そべっている一人の女性がもう一人の自分とキスをするかのように見える映像、大量の砂、幻影としての水、そして緑。
砂は砂漠を意識しているのですが、違うものになると思います。
日本に砂漠はないから。
砂漠には惹き付けられる何かがありますね。
新作です。
ピクニックがてらに是非見にきてください。
新しい自然感が見れますよ。

藤田
自然を意識しているのは、人工的なものや人造的なものを使ってきた稲垣さんには不似合いな感じがしますね。
本当に砂とか水とか緑とか使ってるんですか?


稲垣
館林美術館の前の芝生の公園は自然のものではない整備された公園です。
それでも、芝自体は自然なものですよね。
そんなこと言い出すと日本の山の景観も疑わしいものですし、景観だけではなく、例えば人だってそうです。
整形した人の顔は自然ではないのでしょうか?
他にも今遺伝子組み換えの問題が出ていますが、それでできたものは自然なんでしょうか?
自然はどこまでが自然であるという境界が難しくなっていますよね。そういう意味では今までと同様に素材を扱っています。
社会や文化によって発展した、またはゆがめられた部分に興味がありますね。

藤田
稲垣さんにとって、見てくれる観客の人はどういう意味をもちますか?


稲垣
私の作品は観客を考慮に入れて作っていますから、観客はなくてはならない存在です。
作品を通じてコミュニケーションをしたいし、一緒に成長したい。
観客を意識し過ぎじゃないかなと思ったことがあって、意識しないで作品を作ったことがあります。
お家でひとりインスタレーションしました。
でも、これはこの作品をもとに意味や見せ方を私的なものから公的なものの真ん中に指標を置くように発展していって、水戸芸術館こもれび展に出品したインスタレーション《杜》になりましたけど。

藤田
音楽とぴったり波長の合うウォーキングが「美しい」映像ですね。
でも、目が回るような感覚がするのが、また「美しい」という気持ちを壊していく作品ですよね。


稲垣
あれは私の中では大黒柱ダンスなんですよ。

藤田
きっと多くの美術作家志望の人たちは、稲垣さんのようにどうやったらなれるのかを知りたがっていると思います。


稲垣
私自身は作家であるという意識はイギリスの大学時代に芽生えました。
発表をし始めたたことも理由の一つだと思います。
制作することが大好きで、よいものを作ることに向上心があって、作品に対しての責任と自信があってそして観客に見てもらえることができたら美術作家になるんじゃないかな。

藤田
いま、稲垣さんは大阪にお住まいですが、制作に場所は関係されますか?


稲垣
住んでる環境は作品に影響しますよ。
生活も作品と繋がっていますね。
私が卒業後日本に帰国したのも、自分の基盤が日本にあると思いもっと知りたかったからです。
大阪に住んでるのは実家だからですけど、旅行する度にここは住むのにどうだろうってよく考えます。
まだ住みたいところを見つけてないんですけれど。
最近行った中ではいろいろな意味で広島がよかったです。

藤田
では、女であることは不利に感じたことってありますか?

稲垣
私自身が不利に感じたことはないです。
アーティストにも、妻にも、母にもなりたいって思ったら忙しそうですけど、全部なれるかもしれないという可能性があるってことがすごいと思いますね。
不利とは別かもしれませんが、どこの世界でもセクハラ発言はあるようです。
やめましょう。

藤田
私もセクハラは嫌です。何かあったら手を組んで反抗しましょう!
今日はどうもありがとうございました。
夏休みはぜひ群馬・館林へ足を運んでみてくださね。



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《杜》2003
インスタレーション、家具、ランプ、観葉植物、映像

別の時空間、人が入って進行していく舞台のような空間を創造したい。



健康的な苦労があってもいいので、その分楽しいこともあるような世界にしたいですよね。



文化や社会によって発展した、またはゆがめられた部分に興味がありますね。


 

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