あらゆる事物がフラットにされた世界―ゴミ・人・夜景・ビル群
《ユートピア》 2005
162.1×130.3cm
oil on canvas
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立石
今津さんの絵には、度々ゴミの山のようなものが表れますよね。
今津
確かに、ゴミを描くのはすごく好きですね!
ゴミって面白くないですか?ゴミって自由なんですよね。色やカタチもさまざまでいろんなものがあって、束縛もない。以前は個々に違う意味と役割があったはずなのに、その意味も役割を失ってフラットになっている。それに、私の場合、人もゴミと同じように無表情で各々の個性はないんですよね。
それは夜景もそう。建物もそうなんですよね。ビルが無機質に立ち並ぶようすとか。個性も意味もなくなって 自由、その状態に惹かれるんですね。
立石
夜景なんて特にそうですよね。光ばかりが目に飛び込んできて、その下の人々の暮らしのようすとかは気にならない。
ゴミについて個性とか、意味とかそういう視点を持ったことがなかったので、新鮮です。
モチーフのすべてがフラットになっている、そこにキャンバスの中の世界全体の大きな空間への意識が強く働いているように感じますね。
絵画の中のメッセージ性
立石
さきほど表現されていた「その奥で起こっているドラマ」や絵の中のメッセージ性という部分はどう意識しているのですか?
今津
実はあまりメッセージなどは意識していません。なぜなら絵画だからです。 言葉が無くても感覚で感じ取れるものだからです。見る人が自由に描かれているモチーフから遡って想像してくれたらいいと思っています。
けれど一方で、実際に起こっている光景を組み合わせていくうちに現代社会の問題や 絵の主題が自然と浮き彫りになっていく感覚はあります。キャンバス上の絵の具に置き換える事でその世界はひとつに完結する。そのために私の絵は、自然に世界の収縮鏡のようなものになっていきます。そこには責任を感じます。
その時描くというリアルな行為を通して「絵に宿るメッセージ性を自分の世界観として引き受ける」という事、それが私の絵画だと思っています。
油絵の具との対話、これから
立石
これからの今津さん自身の絵は、どのように変わっていくだろうと感じていますか?
今津
そうですね、ルールを決めず描きたいです。感覚的に描きたいものを描きたいです。
身近なものからモチーフを選んでいきたいという思いもあります。インターネットの写真は無個性で使いやすいけど、自分の目の前にあるものを描いたらまた違う自分と絵とも距離感がでるかも。あとはしっかり世の中で起こっている事を観察して、いかに自分の絵に取り込むかが大事です。
立石
今回インタビューさせていただいて、一番印象的なのは、今津さんにとって絵の具、それも「油絵の具」というものがとても大事なんだ!ということでした。
今津
そうなんです!最近では油絵の具の油液として定番のリンシードオイルが身体にいいことを知って、飲んだりしてます。もちろん食用のものですが(笑)
それぐらい好きです。
立石
今津さんの油絵の具に対する情熱から生まれる世界に揺るぎない強さを感じます。これからまたどのような世界がキャンバス上に生みおとされていくのか、とても楽しみです。個展前の忙しい時期に、本当にありがとうございました。
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アトリエの様子 |
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