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林勇気インタビュー

 
バーチャルとリアリティのあわいに存在する映像世界
Yuki Hayashi Interview
《landscape》(videostill, detail )2009年、ハイビジョンビデオ、プロジェクター、Music by Nakagaito Isao aka omidemaigo ex.SJQ(HEADZ,cubicmusic)

林勇気は、デジタルカメラで撮影した写真を切り貼りし、パソコン上で合成してアニメーションを制作している映像作家である。神戸のギャラリーヤマ キファインアートで個展開催中(2010年11月6日〜12月18日)、そして2011年2月18日からは兵庫県立美術館での個展が控えていると いう多忙な中、インタビューに応じていただいた。これまでの近作から、開催中の個展で発表された新作、そして現在準備中の兵庫県立美術館での個展 について、お話を伺った。

INTERVIEWER  高嶋慈



《garden》(videostill )2008年、ハイビジョンビデオ、プロジェクター、モニター、Music by SPANOVA

現実とつながった映像世界


高嶋
よろしくお願いいたします。
林さんの映像作品は、TVゲームのダンジョンのような画面の中で人や物が動き回るなど、一見CGで制作されたように見えますが、実は全てのパーツは実写した画像から出来ている点が独特で面白いと思います。こうした制作過程や経緯について、まずお聞かせいただけますか。


僕の映像作品は、自分の撮影した写真を基にしたアニメーションです。身近な景色や身の回りの物などをデジタルカメラで撮影し、一コマずつ切り抜いて、パソコン上で緻密に合成することで映像を作っています。


高嶋
完全にバーチャルの世界のようで、実はリアリティの断片が紛れこんでいるという点が面白いですね。


細部をたくさん重ねていくことで、現実とつながった、もう一つの景色が出現するのではと考えています。これはCGではできない経験です。


高嶋
現実とつながっている、いわばパラレルワールドが出現している訳ですね。
林さんの制作技法はデジタルコラージュと呼べると思いますが、作品の制作には膨大な手間と時間がかかっているのではないですか?

《garden》(videostill, detail )2008年、ハイビジョンビデオ、プロジェクター、モニター、Music by SPANOVA


《afterglow》(videostill, detail )2009年、ハイビジョンビデオ、プロジェクター、Music by sora



数分間の作品でも、3〜5ヶ月くらいかかっています。平行して作る場合もありますが。


高嶋
切り抜く写真のモチーフは、どのように選択しているのですか?このモチーフを使いたい、という欲求が出発点にあるのですか?


身の回りにある何気ないものを撮影しています。木々やブロック、空や雲、ペットボトルなどの日用品、家の窓から見える景色などです。画面に登場する小さな人物は、僕自身を撮ったものです。撮影した画像はハードディスクの中にたくさんストックしておき、使えそうなものをピックアップしています。特定のモチーフに思い入れがあるから使っているという訳ではありません。
作品によって、写真の取材先が変わります。作品ごとに使う写真のルールを決めていたりします。例えば、《landscape》では、インターネッ トで「美しい景色」という言葉を20ヶ国語くらいで検索し、ヒットした画像をランダムに使っています。また、他の作品では、ギャラリーからアトリエの道中で撮影した写真も使っています。例えば、この《garden》という作品の背景は白く見えますが、実際はブロックの壁の写真を使っているんですよ。


高嶋
そうなんですか。真っ白なただの背景だと思っていました。確かにそう言われてよく見ると、薄い灰色の点々が見えます。背景まで現実のディテールで出来ているんですね。


また、《afterglow》の場合は、別のルールに基づいて制作しています。写真に写り込んだ、光の粒を丸く切り抜いたり、光が柱になって写っている部分をライン状に切り抜き、動きを付けて仕上げています。こちらの背景は、光の粒を拡大した写真を使っています。

音楽との関係


高嶋
映像内で使われている音楽も、作品世界と合っていて素敵だと思います。作品ごとに色々な方とコラボレーションされていますが、どうやって選んでいるのですか?


僕自身、音楽のレーベルに関わったり、ライブもやっているので、共演した人を中心に声をかけています。エレクトロニカやテクノが多いですが、それらの持っている匿名性が、初期のTVゲームの俯瞰した視点の世界観に通じているように思います。


高嶋
2009年のARTCOURT Galleryでの展示の際、映像作品の音楽を担当されているナカガイトイサオさんとのライブパフォーマンスを拝見しました。ナカガイトイサオさんのサウンドパフォーマンスに合わせて、林さんはライブで映像を制作されていましたが、パソコン上で作り込む映像とライブとの違いや共通点はありますか?


映像の制作方法じたいは共通しています。ライブの場合は、ビデオカメラを立てて、写真を切り取ったり、映像に重ね合わせていく過程を見せていました。


高嶋
まさに実況中継している感じですね。


ライブでは、制作のプロセスを、より目に見える形で映像化していました。
また、音を聞きながら、その場で映像をどんどん変容させていくので、ライブならではの速度感があると思います。その点もパソコン上で作り込む作品との違いですね。
 
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林勇気(はやしゆうき)
blog : http://yaplog.jp/kanyukuyuki/
site : http://www1.odn.ne.jp/tropfen/kanyukuyuki/

1976   京都生まれ
1997   映像の制作をはじめる
現在は宝塚大学講師

個展
2004   ギャラリー三条(京都)(’05、’06)
2007   gallery neutron(京都)(’08、’09)
2008   ギャラリー揺(京都)
世田谷ものづくり学校 IID gallery(東京)
2009   neutron tokyo(東京)
2010   ギャラリー名芳洞 blanc(愛知)
ギャラリーヤマキファインアート (神戸)

主なグループ展など
2002   「イメージフォーラムフェスティバル」(新宿パークタワー / 東京、横浜美術館 / 神奈川、他)
「バンクーバー国際映画祭」(カナダ)
2003   「STARTART001」(細見美術館 / 京都)
「香港国際映画祭」(香港)
「アジアン・アメリカ国際映画祭」(アメリカ)
「ナッシュビル国際映画祭」(アメリカ)
2004   「アウト ザ ウインドウ」(国際交流基金フォーラム / 東京、Project Space ZIP / 韓国)
「透過する音楽」(京都芸術センター / 京都)
「バルセロナアジア映画祭」(スペイン)
「ニッポン コネクション」(ドイツ・フランクフルト)
2005   「裏・アートマップ」(京都芸術センター / 京都)
「PLOP ASIA TOUR」(Agnes b CINEMA! / 香港、他)
2006   「AMUSE ART JAM」(京都文化博物館 / 京都)
「イメージフォーラムフェスティバル」(新宿パークタワー / 東京、愛知県芸術文化センター / 愛知、他)
「トロント・リール・アジアン国際映画祭」(カナダ)
2007   「トランスメディアーレ」(ドイツ・ベルリン)
「新進アーティストの発見in あいち」(愛知芸術文化センター / 愛知)
「イメージフォーラムフェスティバル」(新宿パークタワー / 東京、北海道立近代美術館 / 北海道、他)
2008   「DIGITAL MEDIA」(スペイン・バレンシア)
「Art Court Frontier 2008 #6」(アートコートギャラリー / 大阪)
2009   「ACG eyes 2 太田三郎を中心に - 日常の、アート -」(アートコートギャラリー / 大阪)
「Re:membering Next of Japan」(Doosan art center, Gallery loop / 韓国)
「Mirage」(同志社大学京田辺キャンパス / 京都)
「migratory - 世界に迷い込む - 」(アートコートギャラリー / 大阪)
「白昼夢 Daydream」(愛知県美術館ギャラリー H, I 室 / 愛知)
「Look Forward ! - artist file for the future -」(世田谷ものづくり学校 IID gallery / 東京)
2010   「イメージフォーラムフェスティバル」(新宿パークタワー / 東京、京
都ドイツ文化センター / 京都、他)
「ふれて / みる」(中京大学 Cスクエア / 愛知)
「富士山展」(neutron tokyo / 東京)
「松代現代美術フェスティバル Asian Art Film Program」(碌山美術館研成ホール、樋口邸 / 長野) 
「わくわくKYOTOプロジェクト」(京都市内)

主な受賞
2002   「イメージフォーラムフェスティバル」 審査員特別賞 受賞
2006   「トロント・リール・アジアン国際映画祭」Wallace Most Innovative Film or Video Production Award 受賞
「AMUSE ART JAM」 準グランプリ 受賞
林勇気さん 
 



 

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