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深井聡一郎インタビュー


「彫刻」がつくるジオラマの風景


立石
カタチやモチーフは、どのようなものを作品に取り入れているのでしょうか。

深井
基本的には、旅をして見たものとか。写真というよりは、日記です。
日記は旅の時だけつけるのですが、日記を帰ってきたあと、読み返すことで思い出される映像から作品をつくるようにしています。
だからわりとファンタジックなモチーフが入ってきたりするんですけども、それは実際に見たものや感じたものなので、「これは何ですか?」「どこの記憶ですか?」って聞かれたら全部答えることができます。でも聞かれるまではあんまり言わなくていいかな、言う必要はないかなと思っています。


立石
ではほとんどの作品は深井さんの記憶に残った風景なんですね。

深井
僕は「彫刻で風景をつくる」ということをしているんです。
記憶の中に残っている風景というのは、映像的なものだと認識しています。これがもし絵画であれば、1枚の紙上にすべてがおさめることができますが、「じゃあ立体で」となったとき、ジオラマ的に薄いものを配置することで一つの景色を作ることができるんじゃないかと考えています。
映像として残っているものは平面の世界なので、わざと平面的に見せるために作品の幅をなくしているんですけれども、人間の脳みそは、その立体の膨らみとか、それが立体であるということを認識してしまう力もあるんです。
だからモノ自体をレリーフ状にして、モノとモノの間隔で奥行きをつくっています。


《赤い家》 陶 (家)h120×w150×d50cm (木1)h95×w55×d30cm (木2)h75×w45×d25cm (犬)h40×w60×d20cm 2006  川崎市岡本太郎美術館  

立石
平面的な要素と立体的な要素がそこに共存しているのですね。
「レリーフ」は、浮き彫り細工のことですね。硬貨や肖像にも使われていて、どこか記念品というか、歴史に何かを刻むというような印象を受けます。

深井
でもあくまで彫刻なので、レリーフと彫刻の差異を出したいと思っています。僕の作品は視点が一方通行で見る方向が決まっているので、正直裏側をつくる必要はありません。ですがしっかりと裏もつくっています。やっぱり彫刻でありたいっていう意識があるので、彫刻として360°カタチをつくるということが大事なんです。


立石
すべての作品に台座がついています。これにはなにか意図があるのでしょうか。

深井
なぜその台座をつけるかというと、それはわりと僕の遊び感覚によるものかもしれません。
鉛やピューターという、低温で溶ける金属の素材を使ったヨーロッパのおもちゃがあるのを知っていますか?モチーフとしては、騎兵隊や騎兵隊をジオラマで再現するための田舎の風景や動物や森がありますが、それも薄いものが多くて、そのジオラマを立てるために、下に台座がつけてある。その様式を拝借して使っているんです。
だからあの台座があることによって、あのモノたちを好きなように動かせるものとして認識できないかと。ジオラマの遊びのように、場所が変われば置き方も変えてもいいんだっていうことを示したいのです。


立石
でもジオラマにしては大きいですよね……。

深井
そうですね、大きいです。
でもそれは、彫刻としてこれぐらいの大きさでありたいとか、作品としてこの空間でこう見せるときにはこのぐらいの大きさであってほしいみたいな僕の作品に対する希望ですね。彫刻としてこうでありたいっていうサイズは感覚的に決めているんだと思います。
場合によっては、大きくなっても小さくなってもいいと思ってはいます。

 
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