top\columns[PEELER'S COLUMN#01/ギャラリーが「映像コンペティション」をする時代]
ギャラリーが「映像コンペティション」をする時代

1.ギャラリーで映像を見ることについての論


2.愛知・江南「+gallery」の場合


3.東京・京橋「art space kimura ASK?」



4.ジャンルと場所について(まとめ)



「ASK?映像祭 のDMチラシ」
[+zoom]


3.東京・京橋「art space kimura ASK?」の場合

東京の京橋と言えば、画廊が多い銀座の隣町、ということもあり、画廊が多い界隈である。そういった中でも、常に新しいアートを紹介しているギャラリーが「art space kimura ASK?」である。7月11日〜8月6日に行われる「ASK?映像祭」を中心に、オーナーの木邑芳幸さんに話を伺う。

ギャラリー設立の目的として、サイトでも紹介されているように、平面や立体だけでなく、映像やメディアアートなど、さまざまな表現を紹介しているart space kimura ASK?。映像作品を取り上げた展示を行うのは、オーナーの木邑さん自身がそういったものが「好き」であるということ、時代の流れとして映像作品が増えてきていること、などの理由が挙げられるだろう。

今回の映像祭について「ギャラリーという立場上、興行収入よりも、ユニークでアート性が高い作品を提示して行きたいという意図があります」と言う木邑さん。特にストーリーよりも、映像そのものの面白さが出るような短編作品に興味がある木邑さんは、普段見ることができない映像作品を集め、映像祭を開くことにした。そして、多くの画廊が「夏季休廊」の札を掲げる時期にも関わらず、美術ファンや、普段美術とは違った場所にいる映像界やアニメーション界の人たちにも、ギャラリーへ足を運んでもらうという意図もある。

今年の「ASK?映像祭」は、週変わりで4つのプログラム行う。1週目は、昨年、プレイベントとして開催したコンペティションで大賞を取った、和田淳の新作「鼻の日」を上映する。2週目のワークショップ「陣内利博プロデュース複眼体験」では、「映像」という言葉を広義に捉え、昆虫のように物が見えるかぶりものをして、“見る”ことを意識させる。3週目は、今年行った映像コンペティションの入賞作品や、あまり見ることが出来ないアート・アニメーションを紹介する。内容は、田名網敬一や鴻池朋子といった美術館で見ることが出来るアート系アニメーション作家から、久里洋二や古川タクといったアニメーション界の作家、そしてマンガ家のしりあがり寿(新作を出す/去年art space kimura ASK?で個展を開催した経緯もあり)まで、美術という枠を越えて、「ギャラリーで見ていいの?」というプログラムである。4週目は、昨年のコンペティションで受賞した3人の新作および旧作を紹介する。

コンペティションに応募してきた作品には、パフォーマンスを撮影したものや、見せ方を意識したインスタレーションの一部として制作されている映像もあったという。確かに美術館で見る映像は、白いスクリーンに座って見る映画館で映像を見るのとは違う。今回「ASK?映像祭」で見ることができる映像は、インスタレーション寄りではなく、白いスクリーンで見る映像寄りだそうだ。

また、ギャラリーの役割として、作品の展示だけでなく、作品を売買するということも含まれる。そういった観点で言えば、映像はまだ家に飾るということも難しいし、エンタテイメントとして流通しているDVDが廉価で販売されていたりする現実を見ると、売買にも課題はある、と木邑さんは語る。しかし「普段見られない作家や作品を探したいし、紹介していきたい」と木邑さんは意気込む。画廊の強みとして、長くやっていき、作家を紹介する中継点としてギャラリーの役割を果たしていきたいそうだ。

「ASK?映像祭」レビューは8/15更新分で掲載予定

 


4.ジャンルと場所について(まとめ)


以前読んだ某写真展のプレスリリースで、「写真は90年代になって、美術の写真と区別がつかなくなり、美術雑誌に写真家の写真が、写真雑誌に美術家の写真が掲載されるようになった」というような文があった。「映画」「映像」「映像インスタレーション」(いずれもアニメーションやCGなど含む)も、その区別はいずれ気にしなくなり、なくなるだろう。そして現代美術を扱うギャラリーは、必然的に映像を制作する作家を扱うようになるはずだ。
今回話を伺った2つのギャラリーは、「コンペティション」という形をとり、映像作品(および作家)を探し出し、展示(上映)した。しかしそれだけでは、ギャラリーの使命は果たされないはずだ。
作品をどう売るのか、インターネットで簡単にダウンロードできてしまう作品の価値、何をもって「美」とするのか、ギャラリーの営業時間と上映時間が合っていない、など多くの課題が映像作品には山積されている。
長い目で、この新しいジャンルの行方、そして2つのギャラリーのコンペティションがどうなっていくのか見ていきたい。

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