Klavs Weissも、自身のプロジェクトを持つアーティストで、ET4Uから離れた所に、住居兼スタジオ／オフィスを構えており、ヨーロッパのレジデンスにも,過去何回も参加している、大忙しの人だ。周りは、公共交通機関のとても乏しい環境であるのにも関わらず「自動車にかかるお金や税金を払う事を考えると、それだけでアートに関わる時間が減ってしまう。だから、車も今は持たない」と自転車でET4Uとスタジオを片道30分往復して生活している。また、一人でET4Uを運営するため（ゲストのための渡航費）の助成金の申請書の作成はもちろん、プレスリリース、DMのレイアウト、ゲストのアテンドからすべての事を取り仕切っている。初めの頃は助成金がなかなか取れず、不馴れもあってとても大変だったと彼は話してくれた。「そんなに大変なのに、なんでそんな大仕事をするの？」と聞くと、「自分はセンターからとても離れた所に住んでいる。それでも、アートを介して沢山の興味深い人々とコミュニケーションをとりたいし、良い作品を見たい。自分の住んでいる周りの人にも見せたいんだ。」と言った。

その言葉どおり、私の展覧会のオープニングには近所の人たちが20人〜30人ほど子供づれで来てくれていた。小学校の先生や、大工さん、農家の人や、きこりさん（！）など、今まで日本のオープニングでは、お会い出来ない職業の方ばかり。「サイト・サイト・サイト」の岐阜バージョンを小さい部屋で、大きな部屋では「Their site/your sight」の日本のスナップ写真でのインスタレーションを行った。どちらも私の普段の視界をそのまま別の環境にポンとおいてみたいと考えたものだった。一つ一つのスナップ写真を、興味深く眺め角度を変えて楽しんでいる人たちに色んな質問を受けていたら、あっという間に時間が過ぎていった。
展示期間2ヶ月の間の最後の半分を「サイト・サイト・サイト」のデンマークバージョンの上映にしようと相談し、予算からレンタカーを借りてくれて、一緒に撮影ドライブに行った。その帰り、Klavsに、今後の事を聞くと「5年ET4Uを続けて来た。あんまり忙しかったので、来年でいったん活動は休止させようと思うんだ。自分のプロジェクトやレジデンスもあるしね。どちらも、相当なエネルギーがいるんだよね。」とパイプをくゆらした。