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+VIDEO AWARDS 2005
また、みたい。
TEXT 林緑子

 学生・新卒を対象とし、地域・国籍を問わず広くアートな映像作品を募ったこのコンペティションは、3人のアーティストが運営するギャラリー「+gallery」の主催です。映像作家を目指す人への手助けとして、新人を発掘し連携のある他地域へも紹介していきたいと今年から始まったこの試みは、できれば今後も続けて行きたいとのこと。今回は、本拠地である愛知県・江南市にあるスペースでの上映展示に合わせて大阪の特定非営利活動法人キャズ(CAS)でも上映が行われます。
 人脈や母体を持ち作家・スペース共にある程度活動暦を持つメンバーが主催している点と、今回の上映終了後も機会があれば他所への作品紹介を考えているそうなので、これからがんばっていこうとしている人にとっての励みや糧になる企画に感じました。こういった活動は時間をかけてこそ実っていくと思うので末永く続いて定着してほしいです。

岩田 友絵 Tomoe Iwata
「つづき つづく」


ビンからこぼれた赤いジャムに群がる蝶たち。ふと、蓋が閉まり捕まってしまう一匹。これから始まることの序章が描かれたという印象。バリエーションがあると良いな。虫の動作も人間並みに個体性がありおもしろいので、現実の蝶はどのような日常の動作を持っているのか観察・研究して描くと、さりげない話がもっと生きてくるのではと感じた。

勝島 真悟 Shingo Katsushima
「throwing1」
(上)

様々な物を放り投げる映像を、落下曲線のカーヴを中心に上下逆さまで映す。

「throwing2」(下)

放り投げられ落下した様々な物を逆再生で映す。

一つ一つ違う物の同じような動作が繰り返される気持ち良さが、リズムを持ってさらに追求されていくと良いかなと感じた。
 
河村 るみ Rumi Kawamura
「Territory」


とある団地、無人の部屋にたくさんの飴が並べられていくストップモーションアニメを随所に使った実写。かつて生活した家を去る時、そこに残る自分の影のようなものを表現している印象。ひたすら飴を並べていく作業はスポーツ自主練のように身体的な根気を感じた。手作業の跡の残り具合や建物・部屋の人くさい感じが好ましいです。静かで単調なシーンごとの並べ方や映す時間にもう一工夫あると良いなぁ。情緒を伝えるのに必要な時間は、観客がもとめるより長くなってしまう傾向があると思うのです。
塩田 悠地 Yuji Shiota
「終の世界」
(上)

一人の男が地面に棒を突き立てることにより始まる、バベルの塔みたいな構築物からのダイビングと海、鯨の体内への旅。何を伝えたいのかが見えにくい。絵の強さがおもしろいので、細かい動きをもっと観たいと感じた。

「Root」(下)

建物や電車の車両、駅ホームなど街を構成する様々なものをどんどん通過し、少しずつ変化を与えてゆく茎のようなもの。おもしろい。動きと音の持つリズムの心地よさを感じました。
 
高橋 慶 Kei Takahashi
「こどものたび」


産まれる前の人間とも呼べない虫のような子供たちの住む世界とそこから選ばれこの世へ排出される一人を描く。得体の知れない気持ち悪さがよく出ている。今回の中では構成もよくできていて観やすい。
内藤 祐子 Yuko Naito
「imagination」


浜辺で風船を持つ少女を撮影し、一瞬を切り取った画像を繋げたポエティックな作品。
曖昧模糊とした印象。写真として瑞々しさのある画に感じました。
西 文香 Fumika Nishi
「まばたき」


少女の時は短く、だからこそそこに留まりたいと願う心を描いた印象。主演女性の生々しさや音楽・言葉により聖的なものを描いていても俗っぽく感じる点がおもしろかった。

生真面目に、こつこつと作業されている印象で好感を持ちました。洒脱な作品はあまりなかったかな。それぞれの特性が感じられたので、これからどんなものを制作されてゆくのか楽しみです。

+VIDEO AWARDS 2005

+gallery
上映期間:7月2日(土)〜31日(日)の金土日
上映場所:+gallery(愛知県江南市布袋町南236)
審査員:石井晴雄、吉岡俊直、高橋伸行、富永佳秀、平松伸之
主催:+gallery(高橋伸行、富永佳秀、平松伸之)

参照
PEELER'S COLUMN#01/ギャラリーが「映像コンペティション」をする時代

著者プロフィールや、近況など。

林緑子(はやしみどりこ)

派遣社員として日々、テントウムシの飼育をしております。
フリーペーパーARTRAVELの編集スタッフ。
アニメーションの小さな上映会「animation tapes」をやっております。



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