まさしく二面性のある絵
TEXT 石山さやか
以前あった池田朗子さんの個展会場(巷房
階段下)の お隣での展示。
もうおなじみの古いビルの階段を下りてゆくと、天井は通常の高さであるもののやはり小さめのスペースの壁両面にぎゅうっとなって大きな絵が掛けられているのが見えてきた。
正面には、対照的に小さな絵が3つ。赤とか使ってあってかわいらしい感じ。
しかし、ギャラリーに近づいても、絵の輪郭がはっきりしてこない…
縦に線が入って、古いテレビの画像みたいというか…
と、のろのろ進みながらある角度まで来たところで、いきなり斜め横の作品の図像がくっきりした輪郭を結んだ。遊具のパンダに乗った女性が現れた。
ああ、これ知っている。
子ども雑誌の付録とかでよくある、角度によって見える絵が変わるやつだ。
ただ、あの付録の定規は縦に刻みの入った透明プラスチックで出来ていた気がするが、目の前のこの作品は、紙をジャバラ状に丹念に折ってつくられている。
あらかじめ縦に細かく分割した二枚の写真を、互い違いに配置して印刷したのち、折り畳むのだろう。
斜め右から見ると、左を向いたパンダの女性が浮き出てくる。
横にスライドして今度は左から眺めると、右を向いた、同じくパンダに乗った別の女性が現れる。
正面から見ると、右向き女性と左向き女性が、ぼやけながらキスをした。面白い。
もう一つの大きい絵は、横長の画面にふたつの滑り台が並んでいる。
左から見ると右の滑り台にだけ人が座っていて、右から見ると、左に人。
この絵の中には二人の人がいるのに、この二人は一緒にいることはないのだ。なんだか不思議だ。
などと言って、大きい画面の横を行ったり来たり戻ったりにやけたりしている自分も、ハタから見たらおおいに面白く不思議だったかも知れない。
作品は絵画ではなく写真を使っているが、色調が柔らかく技法も特殊なため、一見して写真だとはわかりにくい。
そういう点でも二面性のある作品だな、と感じた。
ただ、重要なのはジャンル分けをキッチリさせることよりも、何を表現したいか、どんなものを作りたいかなのだろうけれど。
正面とギャラリー奥に飾られている小さな作品は積み木がモチーフで、こちらはサイズが小さいぶん鑑賞も楽だった。
自分がスライドする度に、積み木が積まれては崩れる。
自分自身もおもちゃで遊んでいるような、うきうきした気分になれる展覧会だった。
著者プロフィールや、近況など。
石山さやか(いしやまさやか)
1981年埼玉県生まれ
2003年創形美術学校卒
現在フリーター。イラストと文章少々書けます。
現代美術はまあまあ好きです。 |
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