toppeople[竹田尚史インタビュー]
竹田尚史インタビュー
[free fall(部分)]
デジタルプリント
29cm×36cm

なんで僕はここを歩いてるんだろう




嘘の世界でつく嘘



[free fall]
デジタルプリント
29cm×36cm
<+zoom>

[平面角砂糖]
デジタルプリント
29cm×36cm
<+zoom>

[サイレント]
デジタルプリント
29cmx36cm
<+zoom>
嘘の世界でつく嘘

野田
では、一連の写真作品(「free fall」、「平面角砂糖」、「サイレント」など)で表現されている、虚構な世界は竹田さんにとってはダークサイドと言えるものなのですか?


竹田
「嘘の世界でつく嘘」ですかね。
そうですね、確かにダークといえばダークかもしれませんね。ただ私の中にはダークとかライトとかっていうものはなく、ただ「リアル」であるかそうでないかだけが重要になっています。あの一連の写真作品は虚構がコンセプトになってまして、ただ単純に虚構(フィクション)を作りたかったのではなく、虚構に虚構を被せたかったのです。前に話したように私はこの世界を虚構(嘘の世界)だと思っていて、ただそこで終わってしまうとこの世界にいる必要性がなくなってしまので、「嘘の世界でつく嘘」というものが私の行き着いたところです。

野田
「嘘の上塗り」ということばがありま。それが行き着くところはあまり希望的だとは言えませんが、作品の着地点みたいなものは見えていますか?


竹田
それはどんな事かというと、まずこの世界が嘘の世界だとして、その世界で嘘をつくということは二重の嘘になるわけで、大きな矛盾になってしまいます。ただその矛盾は嘘を「リアル」に変える力を持っていると思います。作品を例に取ると「free fall」という作品でスプーンを落下させて写真を撮り浮いているような写真になるよう撮った作品で。ニュートンの発見した重力という「嘘」と浮いているように見せているという「嘘」を二重に重ねているわけです。そうする事で、現実の世界も嘘の世界となってしまうのです。なぜなら落下するという事象自体人間が作り出した概念に過ぎませんから。
私が思うに、一度嘘だと思うとその疑念はどこまで行ってもぬぐえませんから、嘘でいいと思ってしまえばいいわけです。そうすればさらにその先に行くことも出来ますし、今まで人類が進歩してきたようにその先を覗く事ができるかもしれません。

野田
話は変わりますが、今年に入ってから「GHOST」「FRAGMENT」という同世代の作家を集めたグループショーを企画されましたが、その経緯と目的を教えてください。


竹田
ちょうど2004年の夏ぐらいに、今自分の周りにいる人達で展覧会をつくったら面白いものが出来るのではと思ったのが「GHOST」の始まりでした。私自信、作品をつくる事以外にも展覧会を想像するということが好きで、そのときたまたま身近にいた同期の子達が自分のイメージに近い作品を作っていたので、思いたったまま展覧会まで行ってしまいました。「FRAGMENT」のほうは、ギャラリーRAYさんのほうでたまたま一ヶ月くらいの空きが出て使えることになったんです。知り合いからその話が流れてきて、チャンスだと思い、展覧会を企画することになりました。
僕自身セルフプロデュースに興味があるというか、その必要性を痛感していて、作品をつくるだけでなく、今は自分自身で社会に対して積極的に何かを発信していかなくてはいけない時代だと思っていて、だからこの展覧会自体、私の作品だと思っています。

野田
最後に今後の作家としての展望(活動の場やスタンスなど)と、具体的な予定があれば教えてください。


竹田
そうですね。今、2001年からやっているプロジェクト、"temporaryproject room"略して"t.p.r"(仮設のギャラリーを建てそこで自分達の展覧会、企画展をおこなっていくというプロジェクト)を運営していますが、そこでセルフプロデュースによる新しいアートシーンの確立が自分達でどこまでできるのかを模索しています。
今年も新しい仮設ギャラリー"temporary project room 2005(仮)"が、9月中旬にオープンする予定です。私の活動としてはそこでの展覧会の企画と、自身の展覧会をおこなっていきます。
後まだ企画段階なのですが、gohstの続編のようなものを2006年に企画しようと思っています。
これからの展望としては、コンセプトは変わらないのですが、何か新しい表現形態を見つけたいと思いますね。それを含めての企画展によるセルフプロデュースであり、"t.p.r"プロジェクトなのです。



今回のインタビューで、竹田は本当に慎重に言葉を選んで答えてくれた。それは彼自身作品を深く再考察する作業になったであろうし、彼の作品を見る私たちにとっても貴重な手がかりになるに違いない。彼を中心に起こる事象にこれからも注目していきたいと思う。

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